温泉クンの旅日記

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空の奥 ④

2006-05-07 | 旅行記
 4章 三陸


 飛ばしたおかげで、浄土が浜に六時前に到着し観光することができた。雨も宮古
は降っていない。



 極楽浄土のようであるところから名づけられたというが、ひと気がまったく無い
浄土が浜に独りたたずむと、京都の大きな寺の庭にいるような錯覚を覚えた。
なにかしら場違いな想いがする。わたしは地獄でも温泉があるほうが、極楽で
いい。入り江に静かに打ち寄せる海水は透明清澄である。奇岩に囲われた浜には
梅雨びたしの陰気な気配が満ちていた。自分の気持ちが映っているのかもしれな
い。
 青空であればまた、ぜんぜん感じが違うのだろう。

 浄土が浜から逃げ出して道の駅田老でビーフカレーの夕食をとり、七時に「グリ
ーンピア田老」にチェックイン。海が一望できるはずが霧に隠れてまったく見えな
かった。朝食つきで一泊六千円なら安い。見た目には豪華なホテルである。敷地も
とにかく広い。
 浴衣に着替えいそいそと温泉へ向かったが、光明石温泉でがっかりした。温泉
ありの記号があったので宿をとったのである。天然温泉がないホテルがよくつかう
反則技のようなものだ。館内の赤提灯で軽くチユーハイを三杯ほど呑んで部屋に
帰り、また呑みなおす。

 雨そして濃霧のなかを、朝八時出発。途中の道の駅でヨーグルトと龍泉洞の水を
購入した。昨日、グリンピアの赤提灯で聞いたとおり、三十分ほどで龍泉洞に着い
た。

 龍泉洞は鍾乳洞で、湧き出る清水が地底湖を形成している。さきほど道の駅で買
い求めたように、この清水はミネラルウォーターとして売られている。水に興味が
あるので、千円の料金を払い入ってみた。洞の径は冷え冷えとして、うす暗く、
濡れて滑りやすい。頭を岩にぶつけそうになる。早朝なのでわたしの周りにほかの
客がいない。はるか前方の暗がりでひと声がしている。 

 地底湖には、いくつか深いものがあって、入り口から数えて三番目の地底湖が
深さ九十八メートルもあり、透明度が高いので高所恐怖症のわたしは覗き込むだけ
でも恐ろしい。吸い込まれそうになって慌てる。落ちたら心臓麻痺で終わりだろ
う。新聞にでる自殺のベタ記事が目に浮かぶ。この先に未公開だが四番目の地底湖
は、深さ百二十メートルあるという。おー、やだ。
 足元の看板に「停電が万一発生しても慌てないでください。数十秒以内に自家発
電で復旧します」てな文句を読んだら、もういけない。閉所恐怖症でもあるのだ。
あわてて飛び出してきて、もうひとつの新洞も観覧できたのだがやめた。都合、
二十分ほどの探検であった。
 
 龍泉洞から久慈に向かう。山越えである。車とあまりすれ違わない。

 途中に「新山根温泉べっぴんの湯」というのがあったのではいってみた。硫黄
冷鉱泉とのことだがまったく匂いがしない。宿泊は安そうだ。岩手県も太平洋側に
はほんとに温泉がない。
 久慈をすぎたところから、突然といった感じで霧にぱっくりと呑み込まれる。
前方の車のテールランプを追う。

 気温十六度で寒く、小雨もやまない。


  →空の奥⑤に続く
  →空の奥③はこちら

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