図書館から借りた本。
昨年7月に54人待ちで予約した本が、10ヶ月経って、やっと自分に番が回ってきた。
図書館からの予約入荷のメールを受け、日曜日の昼、ラグビーの練習後、からまつグランドから自転車を飛ばして借りてきた。
自分の後ろには、まだ22人も待っているという。
それなら早く読まないと、とさっそく夜ベッドに入って読み始めると止まらない。
気がつけば、あっという間に夜中1時すぎになっていた。
眠らないと、と無理やり読むのを止めて、翌日、仕事から帰ってきて再び読み始めると、そこから一気に読了。
最近読んだ小説の中では抜群に良かった。
主人公の二人、暁海と病に侵された櫂とが地元の花火大会を一緒に見る感動のエンディングは、描写が切なく美しすぎて泣ける。
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反射的に見上げた対岸の夜空に光が瞬いた。
思わず櫂の手を強くにぎりしめた。
応えるように、ほんの少し櫂がにぎり返してくる。
揺れながら地上から放たれて、ふいに姿を消したあと、遥か上空で花開く。
次々と打ち上がり、途切れ目なく重なり合う光と光。瞬きをするほんのわずかな間、とてつもない熱量で闇をなぎ払い、力尽き、尾を引いて海へとおちていく幾千の星たち。
綺麗だね。
櫂の手をにぎりしめる。
櫂はもうにぎり返してこない。
煌めきながら散っていく、あの星たちの中にいるのだろう。
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タイトルはここからか。
自分の人生を生きる大切さ、本当の幸せとはなにか、人が生きる意味とはなにか。
根源的な問いを読み手に投げかけてくる作品だ。
繊細な心理描写が巧みで、登場人物の心の機微、わずかな表情の変化さえも、まるでその場にいるかのように読者に安々と想像させてしまう。
劇的なストーリー展開は、作者の高い洞察力とその確かな筆力によって支えられている。
本屋大賞受賞も納得の一冊。
流浪の月も読んでみたい。
間違いなくオススメの一冊。
日曜日に借りて火曜日の朝には返す。
ときどき返却を忘れて延滞してしまうことがないわけではないぞんざいな自分ではあるが、人気本だけは最短で返却するよう心掛けているのは、図書館ヘビーユーザーとしての、せめてもの償いであり、ささやかな矜持なのである。