
面白そうな作品がインターネットオークションに出品されていたので、好奇心から入手してみました。数万円での落札なのであくまでも参考作品と思ってください。

早春 傳横山大観筆(真作なら大正末~昭和初期の作) その6
絹本水墨軸装 軸先象牙 共箱二重箱(小村大雲?識箱)
全体サイズ:縦2190*横600 画サイズ:縦1238*横408
*染み抜き・改装の必要有


状態は良くないですが、水墨の絵の出来は一流・・。

汚れを除くと思わず「うまいな〜」というのが素直な感想です。

横山大観は自分の作品の贋作を床の間に飾り、観ながら「こいつは俺より上手い!」と感嘆したとか・・・。

己の器量をわきまえずこのような大家の作品に挑戦するのはどうかと思いますが、このような試みを嘲笑うと意外に真作にはたどり着かないのかもしれません。自分のお金を使って失敗し、後悔して学習することことほど貴重な経験はないもののようです。

蒐集のご愛嬌を思ってご覧ください。

箱裏には
「微霜籬□憂々 聴小禽之来 早春幽霖之情 可掬也 大雲子題 押印」とありますが、意味の詳細は不明です。
「垣根に僅かな霜のある状況に小鳥が来て鳴いている 早春の長雨?の情、掬うべきなり」・・・???
さて「大雲子」とは小村大雲のこと??


それなりの方が所蔵していたようですが、詳細は不明です。

箱裏の書体・印章、作品中の書体・印章には違和感はなく、資料らとも一致します。なお落款の書体は「行書体落款」に分類されるもので、大正末期から昭和初期にかけてのものです。


そういえばこの作品と同題で画風、構図が似ている作品があることを思い出しました。
参考作品 公益財団法人徳川ミュージアム所蔵
早春 横山大観筆
1924年(大正13年) 絹本著色 画サイズ:縦672×横877

小鳥や葉の描き方など同じものです。本作品は真偽はともかく非常に参考となる作品です。
*小禽(小鳥)を描いたこの手の横山大観の作品には模作がかなりあるので要注意です。ただし多くの贋作は彩色が見られます。墨だけで描き切るのには相当のが鍛錬が要るのでしょう。

試しにはといつもの表具師の方に汚れの除去を依頼していますが、だいぶ苦労しているようです。完全には落ちないがなんとか鑑賞には耐えうるようになったとか・・・。

改装が完了したのでブログの最初からリメイク・・・。

思いのほかきれいにならないのは、霜を表現するためにもともと金泥のような着色がされていたのかもしれません。

下記の事項が表具師さんとの打ち合わせです。
改装(締直し)+染み抜き 50,000円
題字カバー+多当紙 3,500円
*汚れの原因が不明で、水洗いでは汚れが落ちないと思います。薬品を使って染抜きをしますが、どの程度落ちるかはやって見ないと分かりません。
途中経過:軸装ですが染み抜きが大変で今月中かかり、染み抜きは完ぺきではありませんが何とか見られるようになっています。


ここまでしか汚れのようなものは落ちなかったようです。

それでも見事な筆さばきの作品ですね。

真贋はともかく箱書きも作行きも楽しめそう・・・。

表具も浮いていたのでそれなりに費用を費やした甲斐はあったと思います。

まともでは入手できない大家の作品らしきもの・・。