本ブログでは他にも幾つかの古伊万里の揃いや陽刻の作品を紹介していますが、最近になって2種の陽刻の作品と2種の5客揃いの作品を普段使いのために入手しましたので紹介します。
いずれも江戸後期と推定していますが、確証はありません。普段使いにと考えて5客揃いも購入しています。縁に欠けが少しあるので廉価にて購入できました。
古伊万里 五客揃
染付陽刻竹下賢人 見込南蛮人洋犬図紅縁輪花五寸膾皿
江戸後期(享保~宝暦年間 1716年~1764年)
縁欠補修跡有 誂箱
口径157*高台外径*高さ46
古伊万里の皿ほど普段使っているその人の趣味のレベルが解る器はないようです。
伊万里には色絵から白磁・青磁まで幅広く種類があり、ゲテモノから高尚な作行きのものまで多種多様です。
使う器ひとつにもその人の趣向が出るものです。
治期の印判手のものでもその人の趣向、知識の深さが解ってしまいます。ある意味で茶席での茶碗のようにその人の趣向の尺度まで解るような気がします。
よってとても怖いものですね。ところで本器は写真では分かりにくいのですが、竹林に二人の賢者が陽刻で表されています。
口縁には縁紅と言って、縁に茶色い色がついており、鉄釉が塗ってあるのですが、 当初は上等な物の証ですが、時代が下がると多くの器に用いられています。
江戸後期になると、庶民にも陶磁器の器を使うようになり、このような小型の小鉢のような形や、いわゆる蕎麦猪口のような形が多く作られるようになって、たくさん国内に流通するようになりました。
箱を誂えて保管していますが、箱の保護紙のデザインは「鳥獣戯画」です。銀座の鳩居堂にてデザインされた和紙が売っています。
次も五客揃いの同時期の作品と思われます。もしかすると少し時代の下がった平戸焼の可能性もありますね。
古伊万里 五客揃
龍・朱雀・唐草文染付 輪花八寸皿
江戸後期(享保~宝暦年間 1716年~1764年)?
縁欠補修跡有 誂箱
口径246*高台外径*高さ35
染付が丁寧に描かれています。
唐草文と龍と朱雀(鳳凰)の文が円形に描かれています。
この手と似たような10客揃いの古伊万里の作品がなんでも鑑定にも出品されていました。そちらの作品はこの作品より丁寧に作られています。
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参考作品 なんでも鑑定団出品作(2022年9月20日放送)
古伊万里の向付 10客
評価金額:100万円
評:江戸時代の伊万里焼に間違いない。18世紀になるとこのような小型の小鉢のような形や、いわゆる蕎麦猪口のような形が多く作られるようになって、たくさん国内に流通するようになる。「宝尽し」と言って色々なタイプの宝物が描かれているが、こんなに丁寧に宝が描かれているのはめったにない。外側に描かれている花唐草。牡丹の花だが、その周りに唐草、葉が翻るような描き方をしている。伊万里焼の中では前期にあたる古いタイプのもの。縁紅と言って、縁に茶色い色がついている。鉄釉が塗ってある。これも上等な物の証。10枚揃っているのが良い。
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いくらなんでも100万円は高すぎると思いませんか?
本作品は口径が八寸もありますので、中皿となります。
口縁は輪花になっています。
口縁には唐草文様となり、裏面も丁寧に絵付けされています。染付において輪郭のある絵付けは丁寧な作と評価されます。
蛸唐草なども輪郭の有無で評価が一桁違います。
高台内の銘は「吉」。
こちらの箱の保護紙はお香に用いられる紋様です。これも色違いで数種類が銀座の鳩居堂にて販売されています。
最後は瓢箪型の皿です。
古伊万里色絵 陽刻纏枝花文的抜風景図瓢箪型皿
江戸後期(享保~宝暦年間 1716年~1764年) 縁欠補修跡有 合箱
横幅156*縦145*高さ26
陽刻されている色絵の皿です。
色絵九谷のような出来栄えですが、当然、古九谷色絵より時代が下がる作品で時代があっても江戸後期の古伊万里かな?
外側の絵付けも丁寧です。
瓢箪型の形をうまく生かした絵付けになっています。
こちらは揃いではないのが残念ですが、もともとあったと思われる揃いである作品はこのような出来の良い作品では皆無に近いようです。
10客や5客で売るより個々で売った方が買い手がついたのでしょう。
西洋料理には単色の白磁の器が似合うのでしょうが、日本料理にはこのような器の方が料理が映えるのでしょうね。
古伊万里といってもいろんな種類の作品があります。筋の良い作品を蒐集するように心がけたいと思っています。