贋作が多く、意外に佳作の作品の少ない平福百穂の作品ですが、今回は筋の良さそうな作品が入手できましたので紹介します。ただし、シミが多い・・・。
秋嶺 平福百穂筆 昭和7年(1932年)頃 その103
紙本水墨淡彩 絹装軸 軸先象牙 共箱二重箱
全体サイズ:横628*2305 画サイズ:横419*縦1234
「ニシムラ画廊」にて改装したと思われますが、「ニシムラ画廊」の詳細は不明です。なおしみ抜きにて改装が必要と思われます。
作品上部にシミが多く発生しています。
掛軸にはシミ発生が大敵です。押し入れや箪笥の奥に掛軸を収納しっぱなしは禁物。
掛軸でなくても日本画は湿気の管理できる場所に保管しておく必要があります。
エアコンの除湿、サーキュレーターによる換気が必須ですが、乾燥のし過ぎもよくありません。
晩年の平福百穂の作に相違ない作風です。
もともとあった共箱に誂えた箱にして改装しています。二重箱には内箱に引手が付いています。これは上等な誂えにしかありません。
箱書、作品中の印章、落款に違和感はありません。共箱の印章は「白田舎云々」ですが、大正8年9月に平福百穂は世田谷の三宿九十一番地に画塾を建てましたが、その名が「白田舎」です。当時の地図を見ると一帯には何もない、まさにそこは白田、痩せた畑だ、ここに画塾を建てた名の由来でしょうか?
距離を置いて鑑賞するにはシミは気になりませんが、この程度のシミが染み抜き改装する目安でしょうか。
本ブログを投稿するタイミングに合わせたかのように改装が出来上がりました。
表具師さんとの打ち合わせで下記の内容とお値段にて改装しています。
*2023年3月に新たな改装完了
現在の表具布を使って締直し+水洗い 35,000円
薬品を使っての洗いは不可です。(墨が落ちる可能性がある)
二重箱+多当紙 2,1尺 15,000円
合計 約5万円です。
シミはすっかりきれいになりました。
贋作が多い平福百穂ゆえ、これぞと思った作品は誂えもしっかりしておきます。
本作品は平福百穂の昭和初めの晩年の佳作といえるでしょう。これからはきちんと管理された場所に保管されることになります。