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染付の極めつけ、垂涎の的となっている作品のひとつは「古渡りの”祥瑞焼”」とされていますが、これは入手は至難のことなので、通常はその写しということになりますね。本日紹介する作品はそのような作品のひとつです。
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祥瑞手 染付胴〆変形茶碗 五良太甫呉祥瑞造銘
口径101*高台径*高さ71 誂箱入
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一般的に日本で言われる”祥瑞焼”の染付器は、明末期景徳鎮造の日本へ輸出品だと言われています。小さな茶道具が多く、最上手の呉須と精良な作り、捻り文様は明後期景徳鎮の青花文様が日本風に変貌しています。
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「五良太甫呉祥瑞造」の染付銘があることから、日本では”祥瑞焼”と呼ばれました。これらの品は中国にはほとんど所蔵されていないことも特徴です。江戸中後期の伊万里窯に於いて祥瑞焼写しの大量生産が行われています。市場に流通されている古い”祥瑞焼”はほとんどそれです。本作品もその部類かもしれません。残念ながら古渡りの”祥瑞焼”は収まるべきところに収まっているとされています。
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説によると明正?六年(1511年),日本の陶芸家とされる伊藤工郎大夫(伊藤五良大甫)は、日本使者とともに中国に渡り、製磁の就学のため景徳鎮へ入り、呉祥瑞へ改名しました。十年後日本へ帰り、日本肥前的伊万里に於いて窯を開き,伊万里窯と興しています。この窯は日本陶瓷史上的重要な磁器窯であり、彼の染付技術が伊万里染付器の形成に大いに貢献したとされます。
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その作品には、“呉祥瑞”或“五郎大夫呉祥瑞”の落款があるという説です。この説では、祥瑞焼は日本の伊万里にて製作されたものということになります。その理由は分かりやすいです。つまり、中国には祥瑞焼についてなにも分からない、なにも残っていないから、おそらく日本人が景徳鎮で勉強した技術で、自国に於いて作ったものであろうと・・・。
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しかし、この説によれば、五良大甫は伊万里へ戻った時期は約1521年になります。日本は室町時代の後期にあります。日本はまた磁器を作っていませんので、この説には矛盾する点があるようです。おそらく当初は中国で焼成された作品が日本にだけに輸出され、茶人に重宝され祥瑞焼と称したようです。その後、伊万里で生産された模倣品が横行したと推察されます。
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明後期中国製祥瑞風焼物は基本的に官窯手を志向して作った高級品ですから、同時期の官窯手として評価されます。模倣品とはいえ、江戸中期日本製祥瑞焼は同時期最高水準の工芸と材料の物、つまり献上手と同じ評価が妥当を思われます。
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染付で青の色が薄いと下手ものとされるのが一般的ですね。
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祥瑞手は文様な趣のあることも条件なようです。
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本作品はよく出来ていて、普段使うには十分に楽しめますが、古さという点では今ひとつです。
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銘の書体はうまく似せています。
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これくらいは似せて欲しいが・・・。
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口縁の錆釉(鉄釉)がちょっと多すぎた・・・???
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本ブログで紹介されている下記の作品は筋が良さそう・・・。
他の所蔵作品
染付香合 五良太甫呉祥瑞造銘
幅44*奥行44*高さ27 箱入
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これくらいの古さが伴った趣が欲しいものですね。