夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

月見酒(仮題) 寺崎廣業筆 明治30年(1897年)頃

2022-05-18 00:01:00 | 掛け軸
寺崎廣業の作品は厳選して蒐集した方がいいでしょう。非常の多作で山水画などの席画程度の晩年の作は蒐集から除外した方がいいというのが当方の見解です。そのような状況で本日紹介する作品は明治30年頃に著名となる時期の描かれた作品です。



月見酒(仮題) 寺崎廣業筆 明治30年(1897年)頃
絹本水墨淡彩軸装 軸先骨 合箱塗二重箱  
全体サイズ:横643*縦2150 画サイズ:横497*縦1215

 

寺崎廣業の作品中において本作品に押印されている印章が用いられている作品は非常に少ない。白文朱方印の「藤廣業印」、朱文白方印「字徳卿号宗山」の印章です。

 

この印章は「悉達多語天使」(日本絵画協会第1回共進会銅賞 天心に認められるきっかけとなった作品)にも押印されています。この作品は1896年(明治29年)の作であり、同時期の作品と推定されます。

参考作品 東京芸術大大学所蔵(日本絵画協会第1回共進会銅賞)
悉達多語天使
明治29年作 絹本 作品サイズ:横836*縦1588



天心に認められるきっかけとなった作品で、題名の「悉達多」は釈迦の出家以前の浄飯王の太子の時の名のようです。出家する契機となる重要な場面である「四門出遊」の最終場面を近代的な解釈で描いた作品とされ、問答したと伝わる修行僧の姿を、光背を背負い、足元を描かなかった天の使いしており、画題の考証については厳しい批判もなされた作品ですが、筆遣いの巧みさが光る1点として現在は大いに評価されています。



寺崎廣業は努力の画家で、家老の家柄に生まれながら、放浪しながら絵を身に付けています。



本作品におても寺崎廣業が名を成しはじめた頃の力量がうかがえるいい作品だと思っています。



人物表現もしっかりしています。



共箱ではありませんが、表具の誂えもいいようです。



このような出来栄えの良い作品は寺崎廣業の作品としてお勧めですね。



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