当方にて大日本魚類画集(大野麥風画)の全72種の作品を蒐集する理由は、後摺や復刻された作品がないことからです。浮世絵や近代版画の価値判断においては後刷や復刻版の判断が必要で、それは非常に難しく素人にはまったく手の出ない領域です。
その点で大日本魚類画集は摺りの回数が多く、人気のわりにコストがかかる点から後刷や復刻版が皆無といえるため、その判断は省くことが可能なようです。好きな作品という以外にそのことからも当方の蒐集対象となっています。少しずつ蒐集し現在は下記のように各々額装されて陽の当たらないところに温湿度管理して保管しています。
本日紹介するのは下記の作品です。
大日本魚類画集 NO90 ヤマメ 大野麥風画
紙本淡彩額装 版画 第3集 1940年7月第11回
画サイズ:縦280*横400
大日本魚類画集が発行された数が300部(第4集から第6集)から500部(第1集から第3集)と限定されており、状態のよい作品を揃えるのは思ったよりもたやすくありません。しかも戦前から戦中にかけての発刊なのでかなり焼失した可能性もあります。
東京ステーションギャラリーで近年展覧会が催されたこともあり、ある程度知名度も高まり、並行して人気も出て入手できる値段も5万円から8万円程度はかかるようです。
発行時のタトウや説明書まで揃った作品はますます入手困難のようです。
遺っている作品も日焼けなどの状態の良くないものも数多くあり、状態の良い作品も限られてきているようです。
第4集以降の戦時中に発刊された作品は発行数も少なく、保管状態も良くないものが多いようです。
本日の作品は12種ずつ6回に分けて発刊されたうちの第3回目の作品のひとつです。下記の写真は図集の作品です。
彫師や摺師も決して一定ではないようですが、本作品は図集の作品と同じようです。
蒐集した数が増えると同じ額装店で額装していると額やマットの選択肢が限られてきます。
現在は2店の額装店で額装していますが、今回はサイズの合う額をインターネットオークションで探して選びました。額は作品共々で数千円で落札し、額のみ残して作品は破棄します。その額と既存のマットに作品廻りの新規のマットと見切縁を調達して額装しました。版画ですのでシンプルな額を選んでいます。
同時に下記の作品も入手しています。
大日本魚類画集 NO75 ホウボウ 大野麥風画
紙本淡彩額装 版画 第1集1939年6月第10回
画サイズ:縦288*横408
実はこの作品は以前に紹介していますが、その作品に大野麥風の落款や印章はあるものの、摺師や彫師の銘はありませんでした。
おそらく前回に投稿したその作品は試し刷りの作品であったものと推察されます。
この2作品を並べて比較すると違いが解ります。上が摺師や彫師の銘がないもの、下が摺師や彫師の銘がある作品です。やはり上の作品より下の作品の出来が良いようですね。
両作品共に同じサイズの色違いのマットを誂えて、同じ額内に保管しておいています。
このホウボウの作品は市場に以外と数多く出回っています。500部と部数も多い時期の発刊なので、初期の頃の作品は意外に入手しやすく、一般に大日本魚類図集では発刊部数の少ない後期の作品ほど入手が難しいようです。
この大日本魚類画集の高度な摺は日本の版画で最高峰でしょう。
その素晴らしさは作品を直にみないと解らないと思います。
図集では摺のすばらしさが解らないと図集の購入をやめた人も多いという記事もあります。
たしかにこの作品の摺を観ると在来の浮世絵版画や後世の川瀬巴水、吉田博らの作品とは出来に雲泥の差があります。
当方はまだ72種の半分にも満たない蒐集ですが、地道にじっくりと愉しみながら蒐集しています。
前述のように絵に似合う額などを探すなどの誂えが愉しみのひとつになっています。
ただし額の絵の収まる部分のサイズがインターネットオークションではよくわかりにくいので、額をインターネットオークションで探すのは意外にひと苦労です
私東京でテレビ番組の制作を行っているものです。
今回番組の企画の中でヤマメのご紹介を致します。
その際にこちらのブログにございます大日本魚類画集のヤマメの画の画像を使用させていただくことは可能でございましょうか?
忙しいところ大変申し訳ございませんが
ご連絡いただけますと幸いです。
何卒宜しくお願い致します。