
ありそうでないのが「ガリポット」という器です。本日紹介する作品で本ブログでは2作品目の紹介となります。

蘭方医が液体の薬を入れ用途に使われ、陶器の薬壷としてとらえられています。
染付色絵柘榴花鳥文 ガリポット薬瓶 その2
口周り金繕い有 合箱
口径*胴径164*高台径*高さ254

製作年代は不詳とされていますが、主に輸出用として伊万里で作られていたと思われます。

「ガリポット」の名の由来はガレー船(Galley)にちなんでおり、ヨーロッパに輸出していたことから「galley+pot」→「gallipot」と呼ばれるようになったとされているようです。

主にオランダ東インド会社によって輸出入されていたと推定され、オランダ東インド会社は1799年に解散しいてるので、ガリポットはそれ以前の作と推定されます。輸出用であったことと製作期間が限定されることから作品数が少ないと思われます。

オランダ東インド会社で有名なのは「VOC」のマークのある作品ですが、こちらも日本では稀有な作品であり、その多くは日本への里帰りの作品のようです。本作品もまた日本への里帰りの作品の可能性があります。

このような大型の徳利の形をした輸出された伊万里や波佐見の磁器は「蘭瓶」と総括しています。多くは簡素な染付白磁を用いた徳利型の容器で、専ら輸出用に作られた酒瓶がメインでした。

それは「染付コンプラ瓶」とも称され、その名の由来はポルトガル語で仲買人を意味する「コンプラドール」(comprador)に由来します。

中には酒や醤油を詰め込み、東インド会社を経由して遠くまで運ばれました。当初は輸入品の容器として持ち込まれたガラス瓶にこれらを詰め替えていたいましたが、輸出頼みのガラス瓶だと不足したために陶磁器の瓶に置き換えられたとされます。

このコンプラ瓶の意匠は至って単純で、ずっしりした印象のフォルムで、口の栓の覆いを紐で縛るために口の部分に輪が二つ嵌ったようなくびれがあるのも特徴です。ガラス瓶と違って見えない中身を示すためにオランダ語で「日本の醤油」(JAPANSCHZOYA)、「日本の酒」(JAPANSCHZAKY)と書かれています。

横文字の字体がデザイン化されている磁器は他に類をみないことからコンプラ瓶には多くの愛好者がいます。

これに比してガリポットは横文字はないものの、製作期間が短く、数が少ないことから希少価値があります。また多くが白磁の無地、染付の作品ですが、本作品のように色絵の作品は稀有とされています。

口の部分は薬瓶のため特殊な金具であったという資料もあります。

本作品は大阪方面からの入手ですが、本作品と同一作品かは不詳ですが、「青森中泊博物館の平成13年度夏の企画展作品のひとつ―素朴と絢爛の意匠美―古伊万里名品抄 出品目録 NO34「色絵椿鳥文瓶」(個人蔵)と同一作品(下記写真左)かもしれません。
また染付としては「染付牡丹 ガリポット」(下記写真右)があります。


ガリポットの作品の代表格は「染付牡丹紋ガリポット 栗田美術館蔵」(下記写真左)でしょうが、この作品は高さ485mmの特大サイズです。
白磁では「白磁ガリポット 日本 江戸時代前期」(下記写真右)があります。


ともかく日本での残存数の少ない作品群です。当方のブログで最初に紹介されているのは下記の作品です。
染付蝶文 ガリポット薬瓶 その1
合箱
口径32*胴径165*高台径108*高さ255

こちらは蝶の染付が粋ですね。後絵かもしれませんが、ともかく無愛想なフォルムに面白い絵付け・・・。

日本の陶磁器の範囲は非常に広範囲であることをあらためて実感させてくれる作品のひとつです。

なかなかこれ以上増えることはありますまい・・・??