夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

紅葉半使(呉器)茶碗

2024-02-05 00:01:00 | 陶磁器
先日のなんでも鑑定団に出品されていた御本手の立鶴の茶碗(2024年1月16日放送)。



評価金額は350万円だそうで・・・。
その評は「江戸時代後期、19世紀に作られた新御本。江戸時代の御本立鶴茶碗に忠実に作ってあるが、割高台が鋭い箆目でその一部にL字形の切れ込みを作り、新御本であるという証明を後世に残している。腰から口に垂直に立ち上がって、口作りにやや歪みを与えてある。松平不昧の書付のある外箱、流れるような筆。内箱が有栖川宮織仁親王。外の張り紙に「九条家傳来」と書かれている。伝来、次第、造作が完璧に揃って、江戸時代の武家の茶というものを今に伝えている。」ということですが・・・。どうもこの評価には賛同しかねるものがあります。また間違えた評価しているようです。

下記の写真は当方のブログで紹介した作品。李朝中期、江戸時代後期における19世紀に作られた新御本・・。作品数がかなりありますね。



さて本ブログではいくつかの呉器茶碗と思われる作品を紹介していますが、本日は綺麗な御本手風の茶碗の紹介です。普段使いには良さそうな作品です。箱には「半使」と記されています。



紅葉半使(呉器)茶碗
合箱
最大口径132*高さ86*高台径



聞き慣れない「半使」に分類される茶碗については下記の通りです。

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半使茶碗(はんすちゃわん) :高麗茶碗の一種で、判司・判事、判洲などとも書かれます。

半使の名前は、判司(朝鮮の役官、あるいは通辞という)に宛てた字で、判司が日本に来た時この手の茶碗を持参したことに由来するといわれています。

形は、呉器風が多く、薄く、やや堅く、半透明の白釉がかかり、焼き上がりが概して青みがかっていいます。作風、形姿によって、呉器系の他に、「半使井戸」、「半使三島」、「半使堅手」、「遊撃半使」などの名称があります。釉に赤い斑が美しく出ているものは「紅葉(もみじ)半使」といいます。

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本作品が作られた年代はよく分かりません。



補足:高麗茶碗の一種。判事・判司・半洲などさまざまな字を当てます。

『万宝全書』に「半使とは高麗より来朝せし使の名なり則茶碗の名に用ゆ形は色色あるようで、柿にはたそり、地柿に青かはり、ほり三島、出的三島等也、又半洲共書楸、薬景色色替わり有」とあります。

『釜山窯卜対州窯』によれば「判事は朝鮮の訳官の尊称にして徳川将軍家よりの見本により朝鮮にて訳官の監督の下に作りしものなり、此茶碗には種類様様あるようで、焼き方は全く朝鮮式にして重ね焼の目あるもの多し、宗家の蔵にありしものの中には伊羅保、渋紙手向きのもの多し、見本により何の作意なく造りしところに強さもあり朝鮮の味もあり」と記されているようです。

『高麗窯茶器』には判司の茶碗には時代の新古さまざまにて古きは三百年以上新しきは極めて近代のものあるようで、いずれも通じて半使釉と称せらるる一種特徴ある釉を被る、即ち鼠色に微しく黄色みがかれる色合にてその中に所所ぼつぼつと赤く円き斑現はる、この斑の染みはその地土の中に含みたる塩分の火加減によりて現はれしものなり、その土質は赤みを帯びたる白土なり」と記されています。



さらに調べると諸書にみえる半使茶碗の種目は次のような種類があるとか。

半使井戸・半使呉器・端反半使・半使柿の手・半使青替わり・遊撃半使・半使三島・半使堅手・紅葉判事・真判事・御本手判事・杉形判事・茂三半使・常の朝鮮判事など。

一般に数が多ければ貴重さは薄れるもの。半凄茶碗が数多く渡来したことは、丹下宗閑の記述に「一半ス始ハ至て重宝し井戸熊川二つづき用しを後半使一度二どっと渡り候故数多物二なり候」とあります。

半使青替わり:はんすあおがわり 半使茶碗のうち、焼が足らず釉の熔解が十分でないため青く上がったもの。(『高麗窯茶器』)

半使井戸: はんすいど 半使釉が器物の全面さらに高台をも包んで、土が見えないもの。(『高麗窯茶器』)



半使柿の手:はんすかきのて 半使茶碗のうち形と釉が独特なもので、すなわち形は腰のあたりから斜めに上に開いた格好で、釉は熟柿のように真っ赤に火変わりとなったもの。これは地土の中に多量の塩分を均一に含んでいる結果であるだろうといいます。(『高麗窯茶器』)

半使堅手:はんすかたで 土味・作振りは半使の手で、それに堅手の本手のような潤んだ淡青釉が掛かったもの。(『高麗茶碗と瀬戸の茶入』)

判使釉:はんすぐすり 判使茶碗の釉色をいいます。やや黄色味がかった鼠色の中に淡紅色の円い斑紋が不規則に点在する(概して下部に多い)。また胎土は赤味を帯びた白土で斑紋の中心に必ず針先程の小孔があります。



半使呉器:はんすごき 形は呉器で半使釉を掛けたものです。少し赤味があるようで、めぬりのない堅出来であります。高台は一般に小さく、自然な箆目があるようで、作りは薄手で大振りなものが多いようです。この種のものに餅子という茶碗の外に茶釉の円い文様のあるものがあります。時に青い釉変わりもあります。慶長(1596-1615)頃の渡来品であります。(『高麗窯茶器』『茶盆図彙』)

半使三島:はんすみしま 半使の手の釉立ちで、これに白の象嵌で暦手文を施したもの。(『高麗窯茶器』)



なんだか分かったような、分からないような・・・。いつもながら古陶磁器の分類は歴史があるが故か、複雑怪奇・・・。結局、本作品がどれほどの価値があるのかはよくわかりませんが・・???


それほど古い作品ではないと思われますが、「一筋の釉薬の流れが景色となり、鹿の子紋様が美しい作品」というのが当方の評価・・・。なんでも鑑定団はプロの評価で間違いは許せませんが、当方は全くの素人・・・。



いつもながらの茶碗の誂にて保管しておきます。



茶碗の箱を覆う風呂敷はいろんな紋様の、いろんなサイズを常に用意しております。



















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