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蒐集途中の大日本魚類図集の作品ですが、蒐集途中において状態のよくない作品が何点かあリます。状態の良い作品を入手できるタイミングがあったなら極力入手できるように心がけています。今回は「フナ」の作品でそのような機会があり、状態の良い作品に額荷入れ替えています。
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上記の右の写真のように版画は非常に陽に焼けやすいものです。このようになると商品的な価値はほとんどなくなりますが、戦前、戦時中に配賦された大日本魚類図集の作品は完全な保存状態の作品が少なく、その刷り、彫りの難度さから復刻版は一切な区、さらに300部から500部限定であり、その希少価値は年々高くなっています。
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ところでこのシリーズは摺師が同じ作品でも変わる場合があります。この作品もそのような作品で落款の位置、印章が違う同一構図の2作品です。このようなことの理由は詳細は不明ですが、同じシリーズの他の作品にもこのようなことがあります。あまりにも手間のかかることから分業していた可能性があるのかもしれません。
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今回入手した作品の状態なほぼ完璧です。
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この作品の入手に当たってはコレクターであった方から下記の頒布時の「大日本魚類図集 月報」をご厚意によりいただきました。実はマニアックな観点からは、大日本魚類図集の蒐集は作品とともに「銘入りのマット」、「谷崎潤一郎か徳富蘇峰の筆よる題付きタトウ」、「説明資料」、そしてこの「大日本魚類図集の月報」が揃って
初めて完璧な蒐集となりますが、そこまで揃った蒐集は当時の頒布時以外にはないように思います。
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さて本題の本日の作品紹介です。
葛飾北斎の肉筆画にはよくできた贋作(模倣作品)があるようです。本作品もそのひとつかもしれませんね。本日の作品はそのような作品の2作品目の紹介となります。
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江戸風景図 伝葛飾北斎筆 その2
絹本水墨淡彩 合箱
全体サイズ:縦2095*横645 画サイズ:縦1117*横498
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葛飾北斎はいろんなところで詳細な記事がありますので、ここでは経歴などの詳細は省略させていただきますが、本作品は良く描けています。
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北斎漫画にありそうな人物を描いた作品はよく模倣されている作品があるようです。
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この作品は実にうまい・・・。
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顔の表情と手足・指の描きが上手ですね。
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真贋はともかくこのような作品を愉しむゆとりが欲しい。
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愛煙家の小生には実になごむ・・・。
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夕刻に一服か・・。
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落款は「前北斎為一筆」とあります。印章は「富士形」の方印で、この印は永田某氏によって、大・中・小の3種があることが明らかになっていますが、印影はその一つと一致しますし、落款の書体にも違和感はありません。ただし、「前北斎為一筆」の落款と「富士形」の方印の組み合わせの時期などの照合は調査中です。
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さ~、楽しんでいただけたら幸い、と言ったところの作品ですね。