夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

再生

2013-08-01 06:07:40 | 掛け軸
蒸し暑い日が続きますが、我慢のうえ職場には冷房をかけません・・。料理は工夫してくれていますが、さすがに夏バテか



痛みがひどかった作品がいくつか修復されてきましたので紹介します。修復はすぐには手を付けず、じっくり作品の真贋など改修に値する作品かを見極めたうえで取りかかります。あとで贋作と判明すると無駄なことになります。それでも後日、無駄な資金を使ってしまって地団駄を踏むことがあります。

田舎でも台所の大?改修工事に着手、皆が満足できるものとなればいいのですが・・。瓦屋根も雪害で修理工事、とかく出費がかさむこの頃です。

掛け軸の改修はまずは虎シリーズ?です。

最初は本ブログでもなじみ深い天龍道人の作品です。シミがあった作品です。昔はよく雨漏りなどしたもので、このような雨漏りが原因と考えられるシミのある作品は珍しくありません。表具の改装と同時に染み抜きが必要となり、染み抜きだけで数万円かかるのが通常ですので、費用のかさむ改修となります。

虎図 天龍道人筆
絹本着色軸装 軸先木製 合箱
全体サイズ:縦1488*横396 画サイズ:縦690*横281

「七十一翁岡郶天龍坐人画」と落款があり、諏訪の日本画家である天龍道人のことである。70才から「天龍道人」と号したという資料があり、それを裏付ける71歳とある希少な作品である。しかも「天龍座人」と号した貴重な例でもある。天龍道人の百五十年記念展の作品集の作品NO37「梅に文鳥図」(80歳作)の落款が酷似している。沈南蘋派に属し、熊斐を師とする資料からすると熊斐の描いた絵を参考にして描かれた可能性があり、長崎派の画風を持っている。

改装前



改装後



二作品目は長崎の唐絵目利である渡辺家の七代目にあたり、長崎鎮台鑑画職、長崎御用絵師を務めた渡辺秀詮の作品です。千葉市立美術館に同じような作品が所蔵されています。



虎図 渡辺秀詮筆紙本着色軸装 軸先木製
全体サイズ:縦1950*横717 画サイズ:縦1240*横581

「秀詮元瑜写」と落款が記されており、印章は白文朱方印「秀詮之印」朱文白方印「弌字元瑜」が押印され、遊印「」が押印されています。「渡辺秀詮者長崎之人也就沈南蘋学画殊能虎鳥取藩画師楊谷之師也 □井書屋蔵」と巻止めに記されています。

古い表具は表具布や紙がかたくなり、丸めることや扱いミスで折れがひどくなることがあります。このような場合は再表具が必要となります。表具にも機械表具なようなものがあり、化学糊を使用したりすると再表具が不可能となる場合がありますし、折れや破れは裏から直す必要があり、きちんとした表具をするところに依頼する必要があります。


改装前



改装後



古い傷もいい味?になりました。

渡辺秀詮:江戸後期の画家。秀彩の子。字は元瑜、号は自適斎。猛虎を能くした。文政7年(1824)歿、89才。唐絵目利派の祖として有名な渡辺秀石は元禄10年(1697年)にこの職に就いている。秀石は渡来僧逸然の高弟であり、北宗画風の中国絵画が公式に認められたことがわかる。以降の唐絵目利職は渡辺家・石崎家・広渡家・荒木家の四家の世襲となって幕末まで続いた。渡辺秀詮は唐絵目利である渡辺家の七代目にあたり、長崎鎮台鑑画職、長崎御用絵師を務めた。


虎の作品の三作品目は下記の作品です。

竹下岩上猛虎図 佐伯岸駒筆絹本水墨淡彩 軸先骨 合箱
全体サイズ:縦1850*横500 画サイズ:縦1008*横372

本ブログにも何度か投稿された佐伯岸駒の虎の作品です。どうしても折れシワがひどくなってくるとそこから剥がれてきて作品の損傷がひどくなるので、早めに改装することが必要です。

改装前



改装後





この手の岸駒の作品は真贋あいまって多数存在しますが、印章が真作と一致したので改修を決断しました。


欄間額であった作品も修繕されました。

舌切雀之図 平福穂庵筆絹本水墨淡彩額装
画サイズ:縦300*横250

古い欄間額は表面を保護するガラスなどなく、扱いミスで破いてしますことが多いし、囲炉裏などの墨で汚れてきます。



修復前




修復後




秋渓蕭散釧雲泉筆水墨金紙本 まくり
画サイズ:縦220*横370*2枚

襖などの使われたりする襖絵も痛んできます。子供や雨漏りなどでどんどんひどくなります。

修復前






修復後



本作品は裏打ちに金紙を使用して破けた跡を目立たないようにしてくれています。

何も残すことのできないより、このように修復して将来に残すことに意義を見出そうと思っています。改装、修復を担当してくれたのは広島の「泰平商事」の上河内さんです。


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