先週の3連休には家族皆で、東京美術倶楽部の特別展に行ってきました。入場料が当日券で5000円、館内での昼食が一人6600円(小学生の息子も同じ)というのには驚きました。知らずに行った当方も悪いのでしょうが、ま~美術館や博物館とは違って実物を実際に触って見られる授業料といったところでしょうか?
本日紹介する作品は備前焼の人間国保の陶芸家の藤原雄の作品です。まるで牡丹餅の満月にススキのような線彫がデザインされた大きな皿です。
備前六角板皿 藤原雄作 その4
共箱
最大幅450*奥行415*高さ45
当方において藤原雄の作品は一輪挿以外に茶碗を2点所蔵していますが、主に茶碗や壺、花入などの作品が多い陶工であり、特に壺の制作に焦点を絞り、「百壺展」を開くなどどっしりした豪放な壺で新境地を開拓した陶工とされます。
父の人間国宝藤原啓に師事し、人間国宝藤原陶陽、藤原啓が啓いた茶陶という認識から出発した藤原雄は、備前の土味を生かして、穏やかで明快な器形に削ぎや透かし、箆目、線彫で作家の作為性を加味した作風を確立しました。
*藤原啓や金重陶陽の作品については、当方の所蔵作品が幾つか本ブログにて紹介されています。
**なお板皿のような皿は作品数が少ない。
1965年 棟方志功と共にアメリカ・ダートマス大学の客員教授を務め、後にメトロポリタン美術館や大英博物館にも作品が収蔵されています。また1988年、日本人として初めて韓国国立現代美術館にて「備前一千年、そして今、藤原雄の世界展」を開催するなど、備前焼の発展と普及に大いに貢献しています。
右目は0.03、左目は全く見えないというハンディの持ち主であり、そのハンディを乗り越えた作陶は目を見張るものがあります。そのハンディの影響で細かな技法は用いず、おおらかな作風が特徴です。
小山富士夫に備前焼を勧められ父に師事し技法を学びはじめたそうです。
備前焼の伝統を重んじながらも、新しい感性に溢れた作品作りを追求しました。1985年紺綬褒章受章。1996年、重要無形文化財「備前焼」保持者に認定され、父子2代に亘っての人間国宝となっています。2001年、69歳で逝去しました。
目のハンディという点から考えるとその作風は納得できるものです。ただ潮流に乗った最盛時には多作であった上に、かなりの高額での販売であったため、現在ではその値段はかなり安くなっています。これは現代の柿右衛門の作品にも共通していますね。
この作品は藤原雄としては珍しい板皿の上に、5キロを超える大きな皿です。
もともと備前焼は皿として向いている点が多く、その点ではかなり重宝しそうです。月見の際の盛り付けには似合いそうですね。
作品中の刻銘は下記のとおりです。
共箱となっており、箱書は下記の写真のとおりです。
箱書に違和感はありませんし、印章や刻銘にも違和感はありません。
当方の誂えは下記に写真のとおりです。
さて本作品の真贋なのですが、気になる作品があります。下記の写真の作品が「なんでも鑑定団」に出品され、贋作とのことです。
参考作品 なんでも鑑定団:2023年12月5日放送
贋作 備前丸皿 藤原雄作
評:(評価金額300円)ひどい偽物。皿の上に、備前でいう「牡丹餅」という団子を乗せて、その上に藁を乗せて火襷を作ろうとしているが藤原雄の作品にそのような技法はない。一番ひどいのは裏の銘。マークの点が高台にひっかかっている。このような彫り方はしていない。全て違う。
写真からはかなり下手の稚拙な出来のようですが、ここで気になるのは「牡丹餅という団子を乗せて、その上に藁を乗せて火襷を作ろうとしているが藤原雄の作品にそのような技法はない。」という記述です。本日紹介した作品が火襷らしき技法を用いている点ですね。されど、本日紹介した作品は「牡丹餅という団子を乗せて、その上に藁を乗せて火襷」という明快な技法ではないようなので、この点は該当しないように思われます。このような技法が藤原雄にない?というのは評が正しいかどうかちょっとひっかかりますね。
ともかく美術品の蒐集は美術館や博物館で観てもあまり参考にならないようです。実際に見て触って入手してみないと・・・・。ただし東京美術倶楽部の特別展のようなお値段は当方のような資金では手が届かない。