夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

地元に遺すべき作品 藁打する女 高橋萬年筆

2023-11-25 00:01:00 | 日本画
本日紹介する作品は、以前にも紹介したかもしれない作品ですが、実家に古くからあった作品です。男の隠れ家からは漆器や陶磁器以外に絵画の作品も出てきています。さすがに当方の整理も進んでいるので著名な画家の作品は出てきませんが、氏素性のわからぬ作品がいくつか出てきています。



本作品はその中で実家を整理した際に出てきた数多く出てきた作品のひとつですが、あまりにも大きいために東京に持ち帰られずに郷里の倉庫に収納したままにしていたのですが、今回保存するために東京に送って、神田の額装店「草土舎」に依頼して修復しました。

*下記の写真は発見当時のままの写真です。



発見当時は額にはガラスやアクリル板がなく、絵本体が晒されたままの状態でした。当然タトウもなく、絵本体にも痛みがありました。長らく飾られていたのでしょうか、ヤケもあり、これ以上の傷みは禁物の状態でした。



当方にて発見した当初はこの作品は作者がわからず、放置していた作品です。飾っていたものと推察され、日に焼けていますね。本紙に多少の破れがあるもの裏打ちし直すと費用が嵩むので最小限の費用にて保存処置を施すことにしました。



地元に遺すべき作品 藁打する女 高橋萬年筆
紙本着色額装 誂:タトウ+黄袋
全体サイズ:縦*横 画サイズ:縦*横



発見当時は写真のように額にはガラスやアクリル板がなく、絵本体が晒されたままの状態でした。当然タトウもなく、絵本体にも痛みがありました。長らく飾られていたのでしょうか、ヤケもあり、これ以上の傷みは禁物の状態でした。



額の裏面も痛んでおり、額が壊れかけていた状態でした。草土舎では裏面には補強に火打材を入れたり、金物で補強してあります。吊り紐は吊り材金具を補強してあります。

飾り紐は痛んで一部が欠損しており、新たにはこのような長い紐は正絹ではなかなかなく、当方のアイデアで銀座の刀剣柴田に立ち寄って、刀剣の保管用の袋に使う紐を誂えました。それでも長さが足りずに2か所に継いだ部分がありますが、継い部分は飾る際には裏面に隠れるようにしました。結びの部分は緩まないように接着剤にて固定されています。



草土舎と協議した結果、絵本体全体を裏打ちし直すとかなりの費用がかかるので、作品自体はそのままとし、周囲の表具材を直していただきました。



保管用に段ボールのタトウと黄袋を作りました。額の草土舎と協議の結果、低価格に抑えるためにいろいろと工夫していただき、なんとか飾れるようになりました。



描いた画家は郷里の画家で寺崎廣業に師事した高橋萬年です。画歴は下記のとおりです。

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高橋萬年:(1897-1956) 明治30年秋田市上川口生まれ。本名は計治。製材業・高橋為吉の二男。16歳で上京し、寺崎広業に師事した。萬年の号は広業の尊敬する上田万年博士の名をとったもので、広業の命名だった。

健康を損ねて1年半で帰郷するが、広業からは、画材の扱い方や線に対する厳しい態度を学んだ。



帰郷後も中国の古風俗考証を学ぶなどして独学で修業し、広業門下の天籟画塾展に出品、大正12年には「新月橋の雨」が日本美術院展初入選。昭和2年、故郷の友人たちの援助により再び上京、第14回院展で「永代橋」が5年ぶりに入選した。その後も都会のモダニズムを反映した作品を制作していたが、次第に田園風俗をテーマにした画風へと移り、昭和7年に発表した「田園の秋」以降、それが定着した。

参考作品   「雀小屋」



生来虚弱な体質だったため、上京と帰郷を繰り返していたが、昭和11年以降は秋田に定住し、その後も院展に出品を続けた。戦後は、日本画家協会秋田県支部理事長に就任、館岡栗山ら県内在住の日本画家たちと「有象社展」を開催するなど、地元画家の育成にも力を尽くした。昭和31年、59歳で死去した。

*舘岡栗山の作品もまた当方では幾つかの作品を本ブログにて紹介しています。

**2010年には秋田県近代美術館で展覧会が催されています。



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この作品は印章のみの作品でしたが、地元の骨董店で見てもらったところ高橋萬年の作に相違ないそうです。



作品には印章のみでしたが、おそらく高橋萬年の作ではないかと推定しておりました。



前述のように寺崎廣業の門下となる画家であり、驚異の実家ではほかにもいくつかの作品を所蔵していました。



ヤケがなければかなり鮮やかな出来であったろうと推測されます。着物の表現などもうまいし、田舎の農家の雰囲気もよく出ています。最低限のこの状態で遺そうかと思います。発見当初は痛みもひどく、修繕に費用も嵩むこともあり、何度か破棄しようかと考えた作品でした。



印章は下記の写真のとおりです。


本ブログでも紹介しているように寺崎廣業の絶筆となった「杜甫」という作品を高橋萬年が摸写した作品を当方では所蔵しています。

他の所蔵作品                   
杜甫 寺崎廣業作模作 高橋萬年筆
絹本着色軸装 軸先骨 合箱
全体サイズ:縦1880*横650 画サイズ:縦1150*横500

 

これもまたかなり貴重な作品だろうと思っています。他にもいくつか作品を所蔵していますが、本日紹介した作品とともに地元に遺しておこうと思っています。寺崎廣業の作品と共に地元に関連する作品を遺すことが当方の使命のようになってきました。











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