
ちょっと痛みがあったのですが、その見事さからついつい入手してしまった作品です。それなりのお値段ですが、痛みのせいもあり、作品の出来のわりには廉価での入手です。
平櫛田中の数多くある恵比寿天尊像または大黒天尊像さらにはその対の作品群の中でもかなり大きく手の込んだ作品となっています。
極彩恵比寿天尊像・大黒天尊像対(大)平櫛田中作 昭和50年作
昭和50年(1975年)103歳 各々共箱
恵比寿天尊像 作品サイズ:高さ335*幅300*奥行250 11㎏
大黒天尊像 作品サイズ:高さ340*幅310*奥行230 10㎏

このような円形の造形、彩色の見事さは他に見たことがありません。

両方の対が各々の共箱に収めっています。離れて売られることが多いのにそのままの状態で遺ったのは運がいいのでしょう。

出来、箱書、刻銘から真作に相違ないでしょう。昭和50年の作ですのが、亡くなる4年前、104歳の作と思われます。


詳細の写真はまず大黒天から・・・。

重さはかなりずっしりきます。材質はちょっとわかりませんが、彩色に割れや剥離が生じ始めています。修理するというよりは、このままなんとか現状維持させるというメンテが必要でしょう。

彩色は平野富山かもしれません。

彫りと彩色のマッチングがいいですね。

打ち出の小槌のデザインもきれいです。





題の箱書は平櫛田中の晩年の書体に相違ありません。


箱書から昭和50年、平櫛田中が103歳の時の作と分かります。


次は恵比寿様・・。

恵比寿様のほうはほとんど痛みのなりいい状態です。








箱書と裏の刻銘は下記の写真の通りです。


印章は資料と一致します。


さて、これで平櫛田中の大黒天と恵比寿様の作品は蒐集終了かな? これ以上いい作品はもはやない・・???
本体からの収縮からの彩色の割れやひび、そして剥離は京都の専門人形店に依頼して修復中です。作品の出来が良いのでどうも膠を沁み込ませてこれ以上の進行を防ぐ手立てのようです。他の一体と合わせて3体で30万円弱の費用と1年ほどの日数を要するようです。展示室に飾るのはしばらく後になりそうです。
*前回修復依頼した大黒天尊像(平櫛田中作)と老子立像(加納鉄哉作)はきれいに修復されてきましたが、この両作品を人形の修復例の紹介記事に掲載させてほしいとの依頼がありました。