Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

王女とカエル王子

2006-07-08 | マスメディア批評
少々雨が降って幾らか涼しくなった。停電で冷蔵庫に保存してあるインドやインドネシアから輸入された冷凍のカエルの肉が解けてしまったと聞いた。

出かけた後に停電となったそうだ。明くる日も夜遅く帰って来て、何も気がつかなかった。干からびた体に生冷えの水気を補給して、疲れた体を横たえるとうとうととして眠り込んでしまった。

どれほど経ったのだろうか。とんとん、とんとんと誰かが叩く音がして我に戻った。戸口に人影はなさそうなので、夢うつつのままグラスに残る生緩い水を飲み干して、再び横になる。とんとんとまた音がするのだった。

一人暮らしの彼女は、もう一度戸口の気配をそっと窺って、戸締りを確認した。とんとんと、今度はあらぬ方から音がする。どうも厨房の方らしい。厨房には空中に突き出た窓しか無く、急に訝しくなった。耳を澄ませながら様子を窺うと、どうも冷凍室の内側をねっとりと擦るような叩くような篭った音がする。

そして、中から声がする、「最も若い王女様、開けてくださいな。井戸に居りました時に、私の大事な人になると言うなら、濁ったお水を綺麗にしてさし上げます、とお約束いたしましたよね。」。

恐る恐る冷凍庫のドアを開けると、中から緑色のカエルが飛び出して来るのだった。まさかこんな馬鹿なカエルめがと考えたのを思い出しながら、「ああ、私の大事なお方。カエルさん!」と約束を果たそうと彼女は叫ぶのであった。

こうして、彼女の寝床の足元に一晩、そしてまた膝元で一晩過ごすと、三度目の晩には彼女に「今晩が最後よ」と見限られて、枕元で一夜を過ごす。明くる朝に眼を覚ました彼女は、前へと進み出たカエルが驚く無かれ美しい王子へと変身するのを見届ける。

そのような話を考えた。

新聞には、先日ドイツチーム敗戦後にロッカーへと駆け寄った首相の姿が書かれている。同じ緑のジャケットに身を包んで健康保険行政改定への発言で連立与党間で揉めた矢先である。好い加減、王子と王女ごっこは止そうとある。四年に一度の総選挙を終えて今我々は井戸の中の蛙である。首相の政治理念のように、思う存分好きなように議論させるだけで、我々の自由は政治に征服されているとはなかなか気がつかない。

そして、我々は最後の二分間 ま で 戦ったチームと最後の二分間の た め に 戦ったチームの違いを観た。アンゲラ・メルケルは、十分に承知している。政治には終了の笛は吹かれない。彼女は「勝敗が決まらないことが、勝利なのだと、TV画面の隅の時計を見ている」だけだと文化欄は批判する。

グリム童話は、初版と完成版の出版の間に兄弟によってかなりの手が付け加えられている。こうした事を専門的研究されている向きもあるのだろう。議論の末の手直しは、それを大抵詰まらない教訓話にしてしまっているようである。


参照:
今後四年間の南国休暇 [ 生活 ] / 2006-07-05
蹴球愛国主義と文化水準 [ 雑感 ] / 2006-06-12
ドイツ鯉に説教すると [ 文学・思想 ] / 2005-03-14
お宝は流れ流れて [ 文学・思想 ] / 2005-03-15
冬の夕焼けは珍しいか? [ 文学・思想 ] / 2005-01-12
コメント (5)
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