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二時十五分前に「アテネフランセ」に入る。
年季の入った建物だ。
典型的な学校の雰囲気を漂わせている。
映画館とというか映写室は、四階にあり、他の教室く
らいの大きさで、収容数も百二三十といったところか。
こじんまりしていて、むしろ見やすいかもしれない。
但し、スクリーンは、空間の広さに比例して小さい。
そして、二時をちょっと過ぎたころ映画は始まった。
ストローブ=ユイレの新作「あの彼らの出会い」。
映画は、何も映ってない画面のベートーヴェン「弦楽
四重奏」から始まる。
そこに登場する農民のような男女が二人。
海を見下ろすところで二人の会話が、殆ど固定カメラ
で延々と続く。
会話というより、お互いに詩の朗読をしているような、
感情の交流は一切起きない演技というものが存在しな
い空間。
どうもギリシャ神話がベースらしい。
会話の内容はよく分からない。
十分ほど過ぎたところ、恐れていた眠気が襲ってきた。
今までいろんな映画を見てきたが、こんな映画は初め
てだ。
舞台だったら、ありそうな設定だが、なんでもない風
景のところに、普通の格好をした人間が出て、延々詩
の朗読、のような世界。
物語性は当然のことなく、なんら劇的な仕掛けもない。
一体これは映画か。
眠くならないわけがない。
もうこのまま寝ても良いかと、半ば覚悟して音(鳥の
さえずりとかせせらぎの音が強調されて、ずっと聞こ
える、これが唯一のBGM)に身を任せる。
ところが不思議なことに、五分も過ぎたところで眠気
がなくなった。
相変わらず画面は二人だけ。
全体は五章に分かれていて、それぞれ二人が登場して、
基本的には同じような会話が繰り返される。
場所は全部違うのだが、共通しているのは、普通の(地
元にも同じような場所がある)山の中にありそうな、
特別何があるわけではないといった代替可能な、ある
意味普遍的な場所(これが重要なのかもしれない)。
そんなことを見ながら思っていると、この退屈な映画
に、なにか不思議な魅力を感じ始めていた、ような気
がする。
そして最後に、初めて田舎の村の風景(人の気配がす
る)が画面に映り、その上方の山に垂直にカメラが移
動して唐突に終わる。
そして何もない画面にベートーヴェン「弦楽四重奏」
がかかってFin。
終わった瞬間、観てた人のなんとも形容しがたい余韻
が、これまた不思議な雰囲気を形成。
ため息すら出てこない。
面白いとも言えないが、つまらないとも言えない、こ
れが正直な感想だ。
こんな映画を見に来る人間は、どんな人間だろうと自
分のことは差し置いて見てみると、見覚えのある人が。
蓮実さんだ。
なるほどね。
しかし、一応有名人である蓮実さん(元東大の学長で
もあるのだから)だが、会ったと他人に言って、「お
おー」と、こちらの期待する反応がえられるような類
の人ではない。
残念。
尤も、有名人に会ったなどという話そのものが、「だか
ら何?」というものではあるのだが。
そして、そんな初の映画を観て次に向かったのは五反
田。
焼き鳥の店「たかはし」に行く予定になっているのだ。
ここの主人とはひょんなことから知り合いで、一度行っ
てみたいと思っていたのだ。
ここで他のメンバーと合流して、「ギタロー軍鶏」(林
義太郎さんが育てているのでギタロー軍鶏)を満喫。
高橋シェフとも久しぶりに会いいろんな話をして、帰
りはメンバーの車で中央高速でご帰還。
なんだか、ぎっしりの一日であった。
終わり。
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