映画の後電車の時間までK君のビストロワインバーで過ごすことにした。店を始めてもう八年ほどになるらしい。最初の四年間はたまに行っていたが、後ろ半分は全く行ってなかった。つまり四年ぶりということになる。年々夜が億劫になるのだ。しかしK君の意欲は衰えてなかった。盛んに勧めるので頼んだものは、フロマージュドテットとブーダンノワールを合体させたような料理。フロマージュドテット(豚の頭というか顔の色々を使ったテリーヌ)とブーダンノワール(豚の血入りソーセージ)、どちらも人気があるとは言えないそんな二つを合体、マイナス欠けるマイナスでプラスとなるのか。実際のところ味はかなり食べやすくなっていて結構美味かった。ソテーしてあるので香ばしさが良いポイントとなっていた。しかし、まあ人気がないとK君は言っていた。そりゃそうだろう、と思った。
シャンタル.アケルマンという名前は聞いたことがあるが(男だと思っていた)、作品は見たことがなく見る機会もなく今に至っていたが、特集で上映するというので松本に行って来た。いくつかの作品で唯一「東から」というのが見るのが可能だった。全く予備知識なく(ドキュメンタリーということのみ)見たのだが、これがなかなか手ごわい作品だった。
まず全編どこで撮ったのかが分からない(ナレーション無し)。東欧方面らしいことは分かる。そこの町の風景、道路を行きかう人々の姿や駅らしき待合室の人々の姿やら突然のチェロコンサートの風景などが散発的に延々続く。場所は色々変わる。始めは東ドイツあたりかと想像したがその通りで、最後はウクライナあたりか(ロシア語だった)と思ったらそれも当たりだった。所謂分かるというのはそのくらいで、兎に角行きかう人々の暗い表情が印象的だ。雪原を歩く(何故かは分からない)家族なのか何かの仲間なのかの映像は、まるで「旅芸人の記録」のような神話的世界を彷彿とさせるし、映像には確かな力がある。ワイズマンと同じで何でもないような映像が違うのだ。しかしそれが二時間余りとなると流石に睡魔が襲ってくる(直前にビールを飲んでいたので三回ほど来た)。観客は八人ほどでそのうち一人は一時間ほどで脱落した。が、才能ある監督であることはよく分かった。
昨日の池で水生昆虫を観察してる時、足元でかさかさとわずかな音が聞こえて何かと思ったらヤゴが羽化するために上陸した音だった。時間は12時前と完全な真昼間。まずこんな時間に羽化するのかと驚いたが、ヤゴは気にかけることなく羽化するための木を目指し更に進んでいく。しかしまだまだ時間がかかりそうだったので(すでに観察で時間を費やしていた)ちょっと良さそうな木まで運ぶというずるをした。そこで全身を撮影したのが三枚目の写真。この形からエゾトンボの仲間ということが分かる。オオヤマトンボにしてはちょっと小さいしタカネトンボにしてはちょっと大きいし時期的にも違うしイマイチ判然としない。この後完全に羽化するには更に一時間はかかるのでここでお暇。