この辺りは、昔から昆虫食の習慣がある。イナゴ、蜂の子などがその代表で、それらは今でも罰ゲームとしてちょくちょくテレビに登場するので広く知られてはいる。その他では、蚕の蛹、ゲンゴロウも昔は食べたらしい。ゲンゴロウ(ナミゲンゴロウ)など今や絶滅危惧種なのだが、昔はそこらに普通にいたのだ。聞いたところでは、夜、屋根に飛んできたものを捕まえたらしい。後は、伊那谷で食べられるザザムシと言われる、トビケラ、カワゲラの幼虫が代表的なところだ。
今は、昆虫食=ゲテモノという認識が一般的だが、そういうものを食習慣としている所ではそれらは食材であり決してゲテモノではない。それが食文化というもので、ゲテかそうではないかの違いは食文化の違いによるものである。唯、その食文化も常に変化しているので、例えば昆虫も忌み嫌うものという見方が強くなればその習慣も徐々になくなるし、収集の対象、観察の対象、飼う対象となっても同じように食材という見方は弱まる。更に、見た目という点でも、他の洗練された料理を食べる機会が多くなればなるほど昆虫料理は不利である。
そしてもう一つ重要なことは、その味である。つまり、美味いのかということ。この昆虫でしか味わえない魅惑的な風味があるかどうかだなのだが、蜂の子にはそれを感じるひともいるらしいが、個人的には、他の昆虫含め甘辛い甘露煮のような状態のものが多く、どれも似たような味に感じられてわざわざ食べる気にはならない。いずれにしろそういう見方をする人がが多くなれば、その食文化も自然と変わる。食糧危機が訪れればそんなことも言ってられないだろうが(その時の備え食べられるようにするのは重要かもしれない)、それがなければこの先昆虫食は消えていく運命にあると思う。昆虫だけで、キャアーと騒ぐ母親が多い昨今、その運命は決まったようなものだ。これは、鯨にも共通したことである。