このところフランス映画を三本観たのだが、そのどれもが歴史上のある事件をテーマ或いは背景にしたもの。その事件というのは、第二次大戦下、ナチスに実質支配されたパリで起こったもの。1942年、ナチスの命令で、フランス警察がユダヤ人13000人(子供も含め)ほどを競輪場に強制収容したという事件なのだが、これはヴェルディブ事件と言われるフランスが触れられたくない事件だった。その理由は、ユダヤ人迫害にフランスも加担したものだったから。シラク大統領(当時)が正式に謝罪して公式に認められたという経緯があって、それを題材にした映画が立て続けに作られたのだろう。
それらの映画というのは「パティニョールおじさん」「サラの鍵」「黄色い星の子供たち」の三本。「黄色い星の子供たち」が一番事実に近い形で当時の事件を再現しているように感じるが(実際はどうなのかは知らないが)、どの映画も、捕まった子供、或いは逃げた子供の脱出劇を上手く絡ませている。一時的に競輪場(ここの環境がこれまた劣悪)に集められたユダヤ人は、その後格収容所に送られ、その殆んどは生きて帰ることはなかった。その中での子供の脱出劇となると、観てる方は分かってはいるがどうにか成功してほしいという気持ちで物語の展開を追う。その点で一番基本的なお話となっているのは「パティニョールおじさん」。教養は無いが人のいい肉屋のおじさんが、行きがかり上子供たちをスイスに脱出させなくてはならないという羽目に陥るといった、ある種の人情劇だ。定型話として楽しめる。
「サラの鍵」は、ちょっと話は凝っていて、偶然新しく部屋を借りることになった現在のジャーナリストが、その部屋が当時の事件の舞台であったことを知り、その真相を探っていくという構成をとっている。サラという生き延びたであろう子供を追ってくうちに、鍵の持つ意味も徐々に明らかになるという、なかなか上手いお話となっている。
「黄色い星の子供たち」は、事件そのものを題材にし、そこで働く看護師の目を通して当時の状況を描いていく。その看護師役はメラニー.ロラン。彼女のかいがいしく働く姿を観るだけでもこの映画の価値はある、とメラニーファンであれば言いそうだ(確かに魅力的)。
というわけで、どの映画もそれなりに楽しめる。オリンピックにうんざりした暑苦しい夜に、静かにフランスの歴史的事件に触れるのも悪くは無い、かもね。