
ビートルズマニアのS氏から貰った「いぬ」のDVDを観る。S氏に感想を聞くと、どうも気に入らなかったようで今一の反応だった。そもそもS氏はこの映画、友人に薦められて買ったのだった。その友人がこれは面白いからと言ったのでそれなりに期待したのだろうが、観方は人それぞれなので、他人に薦める場合は、相手の基準がどの辺りにあるのかを知らないと得てしてこんなことになるのである。
観てみると、S氏が今一と受け取った理由はよく分かった。フィルムノワールの第一人者ジャン=ピエール.メルビルの作品「いぬ」が、ハリウッド映画に慣らされた人間からすると、退屈、分かりにくい映画と評価されるだろうことは容易に想像がつくからだ(一般論として)。犯罪物だが、兎に角画面は暗い(フィルムノワールたる所以、独特な世界)、派手なアクションはない、会話が多い(しかも人間関係が分かりにくい)と三拍子そろっている。しかし、この点こそが逆にこの映画の魅力でもあるのだ。ハリウッド映画に慣らされるとこの魅力を理解することはできないのではないか。頭の中がディズニーになっているので単純な物語しか理解できないのではと想像する。S氏の場合は、映画そのものをあまり観てないのでまだこれからという段階なのかもしれない。
そんなハリウッドではアカデミー賞が発表された。殆ど興味はないのだが、監督賞の「ライフ.オブ.パイ」は見ていた。受賞する側からすれば多分名誉なのだろうが、どうもハリウッドの華やかな世界は憧れと言うより虚飾の世界としか見られない。そんなことはどうでもいいが、その「ライフ.オブ.パイ」という映画どうだったかというと、CGは本当よく出来ているという感想しかないのだ。トラと漂流する羽目になった少年(これがπという名)の物語なのだが、そのトラとの関わりの中に、宗教的な思索のようなものを盛り込み映画の厚みにしたいという意図は分かった。が、取って付けたようにしか感じられない(ハリウッド映画特有の)。映画としては間違いなく「いぬ」>>「ライフ.オブ.パイ」であった。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます