■ エヴァンゲリオンは好きですか? ■
あなたはエヴァンゲリオンがお好きでしょうか?
実は私は、初めて見たとき、あまり好感が持てませんでした。
内容は刺激的で、演出もキリキリとエッジが立っていて、
ショックを受けましたが、
一方、シリアスなドラマと、オタク的キャラクターの対比が気になって
のめり込む事が出来ませんでした。
宇宙戦艦ヤマトや、ガンダム世代は、
エヴァ世代にとって最早オールドタイプだったのでしょう。
所謂、「萌え」の感覚を持ち得なかったのです。
しかし、最近インターネットでオリジナル版を見返して、
改めてエヴァの凄さに身の震える思いがしました。
当時は気になったキャラクターのクセも、
エヴァ以降ではそれがスタンダードになってしまったので、
物語や演出の妨げとは感じなくなりました。
■ 30分を無限に感じさせる密度 ■
TV版エヴァの魅力は何と言っても密度の高さにあります。
30分を1時間にも2時間にも感じさせる圧倒的な情報量。
何の前触れも、説明も無く繰り出される「言葉」「謎」「事象」。
そして、第一話に見るような、大胆なカットアップ手法。
巨大ロボットの中身が実は生物だったという驚き。
ATフィールドという、何でもありの力の「極大の魅力」
未解決のまま放り投げられる「謎」。
「人類補完計画」なるコトバ。
まさに圧縮され、断片化され、再構成された物語がそこにありました。
■ 絶望を凌駕した「萌え」 ■
そしてエヴァの最大の特徴は、
あくまでも視聴者の期待に応えなかった事。
シンジやアスカやレイは、結局孤独のまま。
一時の相互理解や依存は、次の瞬間にさらなる拒絶に変わり、
それでも求め合う心は、さらなる斥力を生み出します。
庵野監督はそこに視聴者(オタク)の姿を投影しましたが、
何とオタク達は、その絶望を「萌え」という感性によって凌駕してしまいました。
綾波の包帯萌え・・不機嫌なアスカ萌え・・・って具合に。
そこで製作者はTV版のラストをトンデモない演出で締めくくります。
・・夢落ち・・・ハッピーエンド。
萌えの対象を反転する事で、視聴者を現実に突き落とそうとしています。
劇場版の実写パートも同じ効果を得る為の手段です。
そろそろ物語りの世界を出て、孤独な現実と向き合おうよ・・というメッセージ。
賛否両論ありますが、私はTV版のラストは好きです。
作者が物語りを放棄する「潔さ」がたまりません。
劇場版で帳尻は合わせていますが、
TV版のエンドがあってこその劇場版だと思います。
■ 最新劇場版「破」はビジネス ■
先日、最新劇場版エヴァンゲリオン「破」を見ました。
ショックです。
こんなの、いくら絵が美しくても、
アクションがスピーディーでも、
こんなんの、全然エヴァではありません。
エヴァシリーズに不可欠な、突き放したような緊張感が皆無です。
各キャラクターも大事に扱われていて、
痛みを麻酔で和らげたような煮え切らなさを感じます。
今時の子供達でも共感出来るようにする為か、
長い歳月の間に「神格化」したキャラクターを
残酷にいたぶる事を躊躇したのか・・・・。
これ本当に庵野監督が演出してるの?
若いスタッフがリメークを楽しんでいるだけじゃないの?
明らかに、ビジネスとか営業という言葉が浮かんでしまいます。
新劇場版エヴァンゲリオン「破」を見るくらいなら、
TSUTAYAでTV版をじっくり見直すべきです。
新しい物語を作ろうというエネルギーの凄さを全身で感じ取るべきです。