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予想を裏切らない「坂道のアポロン」、予想を裏切る「謎の彼女X」

2012-04-21 02:43:00 | アニメ
 





■ あまりにも眩し過ぎる「坂道のアポロン」 ■


ここ何年か、本屋に行く度に思わず買いそうになるのが、
「小玉ユキ」原作の「坂道のアポロン」。

「坂道のアポロン」という昭和チックなネーミングもさることながら、
表紙に登場する少年少女達の雰囲気も、昭和チック。
強烈にノスタルジーをかき立てながら、それでいて現代的にも見える・・・。

好奇心ををビンビンに刺激して止まないのに、何故か買えなかったこの作品、
なぜかと言えば、それは「ネジレていない」から。
表紙に登場する少年少女達の視線は、あくまでも真っ直ぐで、
日頃、「陰謀論」などをブログに書き付ける中年オヤジには、
あまりに眩しすぎるのです。

■ カーボーイ・ビバップのコンビが贈る青春JAZZストーリー ■

「カーボーイ・ビーバップ」と言えば、一世を風靡したアニメですが、
その監督、渡辺信一郎と、音楽を担当した菅野よう子のコンビが、
「坂道のアポロン」のアニメ化で再現するという。
これが、面白く無いはずが無い。

という事で、「期待」に胸躍らせながら見てみました。

期待通りの出来です!!

■ 高校生・不良・秀才・JAZZ ■

ここからネタバレ

1966年、夏。

横須賀の高校から佐世保の高校に転校してきた「西見 薫」(にしみ かおる)は
秀才ながら、黒縁めがねの青びょうたんで、直ぐにイジメに合います。
彼は唯一自分と取り戻せる場所、屋上に向かいますが、
屋上のドアの前に誰か寝ている・・・
それが、札付きの不良と恐れられる「川渕 千太郎」(かわぶち せんたろう)

千太郎はあろう事か、薫の同級生。
そして、何故か千太郎は薫に興味がある様子。
上級生も一目恐れる不良の千太郎に振り回されるうちに、
薫はいつしか、他人の目が気にならなくなっている自分に気付きます。

千太郎には、迎 律子(むかえ りつこ)という幼馴染の同級生がいます。
髪を二つに結わえた、真面目な学級委員の律子は、
何かと千太郎の世話を焼き、新入生の薫の面倒も見てくれます。
律子は、無邪気に薫の事を褒めますが、薫はそんな律子に淡い恋心を抱き始めます。

クラシックピアノを弾く薫が、レコード店として連れていかれたのは律子の家。
その地下室には、立派な防音設備を備えたスタジオがあります。
そして、そこで一人、ドラムを叩いているのは、何と不良の千太郎。
それなりの腕前です。

お坊ちゃんの薫にJAZZなど弾けまいと、わざと薫に突っかかる千太郎。
ピアノでJAZZの一節をシングルトーンで弾いてみせます。
この曲なら弾けると、コード交えて弾いてみせた薫に千太郎はこう言い放ちます。

「ボンの弾いたのはジャズじゃない。スイングしとらん」

1Fのレコード店に戻った薫が買ったのは、「アートブレーキーのモーニン」
先程、千太郎が弾いた曲です。
・・そして、それは、モダンジャズの名曲中の名曲。

それから薫は千太郎への対抗意識から、モーニンを練習します。

「濁った和音、JAZZ独特のシンコペーション。」
「頭では分かっているけれど、再現するのが難しい・・・」

さて、薫はJAZZの世界に引き込まれてゆくのか、
薫と千太郎と律子の関係はどうなるのか、
家内と娘と一緒にワクワクしながら次回を待っています。

物語は2話目で千太郎の過去を少し匂わせます・・・。
これから、千太郎の秘密が明らかになるのでしょう。

■ まさに王道ラブストーリー ■

三角関係、不良、秀才、学級委員・・・そして1960年代の佐世保とJAZZ。
まさに昭和の「王道」です!!


オタクアニメや漫画が溢れる中で、
少女マンガは「オーソドックス」のスタイルを守っている保守的なジャンルです。

「ちはやふる」や「のだめカンタービレ」の様な意欲作も生まれますが、
かつての「竹宮恵子」や「萩尾望都」を生み出した時代のエネルギーは失われています。

そんな「少し古臭い少女マンガ」というジャンルの表現手法を逆手に取って
思い切り「ノスタルジー」を搔き立てる設定と絵柄で、
往年の漫画や日活映画の王道ストーリーに真正面から挑戦する「坂道のアポロン」。

意図的に「古い土俵の上」で勝負する事を選んだこの作品が、
どの様に現代的な飛躍を見せるのか、目が離せません。

まさに期待通りの「坂道のアポロン」でした。


ところで、2話を見る限り、菅野よう子は今回実に控えめです。
時代背景的にもJAZZは往年のフォービート、ハードバップの時代です。
バンドサウンドの演奏を引き立てる為に本編では音楽は控えめです。
喧嘩のシーンで、活きの良いJAZZが花を添えますが、
それ以外は、むしろピアノの短い曲が、シーンの転換に用いられる程度。

「その程度」と言っても、そこは菅野よう子。
ハード・バップ風の曲も凡そJAZZらしくないメロディーから導入して見せたり、
ピアノ小品風の短い曲を良く聞くと、とてもマニアックな事をしていたりします。
ここら辺はやはり、凡百の作曲家と一線を画する所。

ただ、カーボーイ・ビーバップの様に、
サウンドトラックがストーリーを引っ張る様な展開を期待すると肩透かしを喰います。

これは批判では無く、ドラマがじっくりと造りこまれている事への賛辞です。
音楽が表に出るにのは、あくまでも「JAZZの演奏シーン」と決め手いる様です。



■ 期待を裏切り続ける展開に唖然・・・「謎の彼女X」 ■



書店で爽やかさを振りまく「坂道のアポロン」の近くに平積みされて、
「異臭」を漂わせる作品があります。
「謎の彼女X」です。

こちらも、何度も手を伸ばしながらも、結局は買えないでいました。
「これを読んだら人生終わりだよ」的な危険な臭いが何故だか漂う作品です。
だから、何度もレジに持って行こうとして、本能的に売り場に戻してしまう・・・。

その「謎の彼女X」が何とアニメになるという。

「見ていいのだろうか・・・・」そう思いながら、娘と第一話をチェック!!
(てか、娘と見るなーーーとお叱りを受けそう・・・・)


期待を裏切る面白さ!!   最高です!!

■ 全く先の読めない展開・・・期待は全て裏切られる ■

椿明(つばき あきら)は、普通の高校2年男子。
性に対する興味も、健康な男子たるもの、あるのが当たり前。

そんな明のクラスに転入生が入ってきます。
前髪で目を隠した、暗い雰囲気を漂わすその女子の名前は卜部美琴(うらべ みこと)。

「宜しく」と一言、低い声でクールに挨拶したその転校生は、
休み時間は、「即寝」。
女子が「ウ~ラベさん。一緒にお弁当食べない?」と誘っても、
「ゴメン、わたし今、とても眠いの。」で瞬殺。

おまけに授業中にイスから転げ落ちる程の、一人大爆笑!!
「すみません、今、個人的にとても面白い事があって、
 でも、個人的だから言葉で言い表すことは出来ないのですが・・・。
 以後、気をつけます。・・・ウ・・プププ・・・」

完全にイカレテます。この転校生女子。

■ 「ヨダレを舐める」 ■

そんな誰もがやんわりと敬遠する卜部が、放課後の誰も居ない教室で眠り続けています。

忘れ物を取りに戻った明が彼女を揺り起すと・・・
・・・その口元にはヨダレがツーーと糸を引きます。

明は初めて見る卜部の素顔に一瞬ドッキとしますが、
さすがにヨダレに気付いて、醒めてしまいます。

卜部が去った教室の、彼女の机の上には、彼女のヨダレが溜まっています。

それをしばらく眺めた明は、おもむろに指で掬って・・・・

エーーー、あろう事か、卜部のヨダレを舐めてしまいます!!

「甘い」

直後、自分の行動に気付いて、慌てて教室を去ります。

■ アニメ・漫画暦40年で初めての衝撃!! ■

エー!!アニメを40年見続けてていますが、
ヨダレを舐めた主人公は初めてだ。
これは衝撃です。

ところが、明はその後、発熱してしばらく学校を休みます。

そんな明の部屋を、唐突に卜部が訪れます。

無防備に明のベットに座った卜部は・・

「あなた、舐めたでしょう」

エーエーエー、この女、いきなり何言い出すんだ!!!

と、次の瞬間、彼女の人差し指は目にも止まらぬ勢いで、明のマスクを下げています。

そしてもう片方の指を自分でチュバっと加えると、

ネットリとしたヨダレを指にからめて・・・・

「椿君、口を空けて」と言った途端・・・

エーエーエーエー、ユダレだらけの指を明の口につ込んだよ、この女!!

「椿君、舐めて」

・・・・終わった・・・私の40年のアニメ人生が終わった・・・・。
こんな作品を、よりによって娘と見てしまった・・・・

でも、何だろう、この、とてつもない面白さは?!
「エイリアン」と「プレデター」と「サルトビえっちゃん」に
同時に出会ってしまった様な衝撃は・・。



「椿君の熱は、私のヨダレの禁断症状よ」

明は卜部のユダレにウィルスか化学的中毒性があるのかと聞きます

「椿君の病気は、恋の病よ。じゅあ、また明日」

って、オイオイ。なんなんだこの女。


■ さらなる衝撃を脳天を直撃!! ■

翌日から放課後に卜部が自分のヨダレを明に舐めさせるのが日課になります。
高台の道に別れ際、「舐めて」といって差しださえっれるヨダレまみれの指を
パクッって咥えて、
「じゃあ、明日も、あさってもね」と爽やかに分かれる高校生男女。

って!!どこが爽やかなんだよ。ヨダレ舐めてるじゃん!!

こんな事を毎日やっていて、
さらに卜部は結構カワイイのだから、
健全な高校生男子が恋に落ちないわけが無い。(って、相手はヨダレ女だよ!!)

意を決した明の告白に、

卜部は突然口元を押さえ、

指の間から、何やら液体が漏れ出し・・・

っと、突然、ゲロを吐くかの様に、大量のヨダレを嘔吐した!!!!

「私、嬉しい事があると、大量のヨダレが出る体質なの。」

きっぱり言い放つ卜部。

エーエーエーエー、そんな体質って!!
それを、喜びの表現だって、男子に言い放ったぞコイツ!!

おいおい、そこの男子、このシチュエーションで喜ぶのってオカシクないか!!

そんなこんなで、爽やかな高校生カップルの未来はいかに!!。


・・・すみません。
あまりの衝撃に、今日の人力は少し壊れています・・・・。

■ 誰もが抱えるフェティシズムをこんな表現で見せられるとは・・・ ■

人は往々にしてフェティシズム的感覚を持っています。
女の子のシャンプーの臭いに、そそられたり、
「うなじ」や「足首」や「指先」などのパーツに妙にエロチックさを感じたりする人が居ます。

「謎の彼女X」で作者が提示したのは、「ヨダレ・フェチ」。

まあ「フェチ」にも色々あって、「男の汗臭さ」に感じる女子もいる位ですから、
決して「ヨダレ」に興奮を覚える男子が居てもおかしくは無いのですが、
それを映像で見せられると、結構引いてしまします。


しかし、自身のフェチだけで、一本の映画を撮ってしまった監督が居ます。
フランの巨匠、エリック・ロメールです。



フランスの避暑地で出会った美人姉妹の、
よりによって末っ子の、まだ年端もゆかない少女の
ヒザに触りたくて触りたくてどうしようもない映画監督の話です。

ドキメントタッチで避暑地での少女達との交流が描かれたラスト、
脚立の上ったクレールの膝を目の前にして、男の取った行動とは・・・
あれ、ラストを忘れてるぞ・・・・。
だって、私は膝なんてどうでも良いと思っている人間ですから。

この時代のエリック・ロメールの最高傑作は「緑の光線」でしょう。
「人と何か違う」と思い込んでいる、もう若くもない女性が、
夏の終わりに、心を通わす事の出来る男性に出会って、
二人で、日没直後に水平線に現れるという緑の光線を見るというお話。
実は、これも「緑の光線」フェチだけで成り立つ映画とも言えますが、
わざわざロメールは「緑の光線」が見えるといわれるカナリア諸島でそれをカメラに収めますが
実際に劇場のスクリーンで見ると、緑なのかどうなのか、
今ひとつ分からない映像がラストを飾ります。
この、なんだかトホホ感も、フェチシズムには付き物なのでしょう。

でも、ヨダレはね、ちょっとね・・・・。

■ 期待を裏切る面白さ ■

「謎の彼女X」の面白さは、「期待を裏切る」面白さです。

普通、性的背景を匂わせた映像で、高校生男女がする事と言えば、
キスとか、○○とか、○△■とかでしょう。

それが、さんざん思わせぶりをした挙句に、ヨダレをパクリ。
これはAの次にBが来たら、次はCだと思わせておいて、実はXだったという
予定調和に対する裏切りです。

これが、ほんのちょっとのズレだと、「がっかり」という感情を生み出します。
ところが、「あまりに予想外」の展開だと、人間の脳は「パニック」します。
パニックして、間違って「快感物質」を放出してしまうのでは無いでしょうか?

だから、「謎の彼女X」を見終わると、妙に清清しい気分になる。
「坂道のアポロン」を見終わった時よりも、スッキリした気分の自分の気付きます。

はっきり断言します。  今期のマストは、「謎の彼女X」です。


■ 今期は良作が多すぎる ■

さて、今期のアニメも出揃ったので、注目作をいくつか紹介します。(極私的な判断ですが)
はっきり言って、今期は良作が多すぎます。





先ずは「ヨルムンガンド」。漫画原作の作品です。

若き女性武器商人、ココ・ヘクマティアルと彼女の傭兵部隊の物語。
どうやらココは戦争を防ぐ為に武器を売っている様です。

戦争とは、パワーバランスが崩れた所で発生します。
だから平時でも、敵対国が武装を強化したら、
それに見合った武器を相手国に売り込んで、バランスを取る。

同業他社が、それに乗じて過剰な武器を提供しようとすれば、
その命を非情に排除する。

ココと個性的な彼女の部下達は、かつて戦場で多くの血の犠牲に上に生き延びて来た様ですが、
現在、彼らが流す血は、平和の為の代償という事の様です。

内容的には青年誌で、ガッチリと描く事も出来る社会派ですが、
それをキャラ立ち良く、テンポ良く見せるあたりは原作漫画の魅力なのでしょう。
男性が空きそうな内容ですが、
「犠牲の上の平和」という日本のメディアが隠蔽する現実を知る上でも、
是非とも、女性の方にもお勧めしたい作品です。




「宇宙兄弟」は説明は要らないでしょう。
宇宙飛行士の実際を知る上でも、最高の作品であり、
エンタテーメントとしても最高の出来栄えです。



「アクセルワールド」はラノベ原作のバーチャル・バトル物。
1話目、2話目の映像を見るだけでも鳥肌物です。
話の内容も緊張感に溢れています。
最近のサンライズはロボット物意外で良作をバンバン出して来ます。
頭でっかちのIGを尻目に、一皮も二皮も剥けた感じがします。

バーチャル世界とリアル世界のSF的ギミックも素晴らしく、
これならお子様と楽しみながら見る事が出来ます。




ダークホースを一作品。
「さんかれあ」。これも漫画原作です。

ゾンビしか興味の無い男子高校生が出会ったお嬢様は、
どうやら訳あってゾンビになってしまう様です。

今時なオタクアニメのテイストとキャラで、新鮮味には欠けますが、
異形の恋愛の展開には興味が沸きます。



・・・以上、本日は今期アニメの「極私的注目作」の紹介でした。

でも、もちろんダントツトップは「モーレツ宇宙海賊」には変わりありませんが・・・・。
「輪廻のラグランジェ」が2期連続であったら、「モーパイ」の首位は危なかったかも・・・。