■ 「シェールガス革命」でアメリカの景気が回復!?
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アメリカ経済の復活の切り札に「シェールガス革命」を挙げる人が増えています。
私も先日、自分の勉強の為に記事をまとめてみました。
エネルギー大国アメリカ・・・シェールガス革命
ロイターの記事によれば、アメリカは2017年には、
ロシアを抜いて、世界最大のガス生産国になるそうです。
■ 生産量も多いが、消費量も多いアメリカ ■
では、どのくらいの生産量になるのか生産量推移のグラフを探してみました。
1)シェールガスの生産量は飛躍的に拡大する
2)在来ガスの生産量は、資源の枯渇から減少する
3)アメリカのガス生産量は緩やかに拡大する
ここで問題になるのが、現在でもアメリカは天然ガスの輸入国であるという事。
アメリカはカナダからパイプラインで安価な天然ガスを輸入しています。
「シェールガス革命」によりアメリカは「ガス輸出大国」になる様なイメージがありますが、
アメリカ国内のガスの消費量が多いので、
実際に輸出される量はそれ程多くないのではないでしょうか?
http://www.fukoku-life.co.jp/economic-information/report/download/analyst_VOL231.pdf
アメリカが天然ガス輸出国に転換するのは2020年頃の予定です。
■ コストが高く、採算性が問題となるシェールガス ■
シェールガスが在来ガス田よりも製造コストが掛かります。
アメリカでシェールガス開発に拍車が掛かったのは、
リーマンショック前の天然ガス価格の高騰が追い風でした。
ところが、リーマンショックで世界的に需要が減少したので、
天然ガスの価格は暴落しました。
現在では緩やかに価格は回復していますが、
在来ガスより精算コストの掛かるシェールガスで利益を上げる為には
現在のガスの価格では、安過ぎます。
■ 天然ガスの価格は、原油価格とリンクする ■
天然ガスの価格は原油価格と同様の値動きをします。
中東情勢は原油価格に影響を与え、間接的に天然ガス価格にも影響を与えます。
アメリカで「シェールガス」に過剰な期待が掛かると、
潜在的に中東有事を期待する圧力が生じます。
■ 中東有事は両刃の剣 ■
アメリカは自動車大国です。
アメリカ国民は、ガソリンへの出費が多く、
ガソリン価格に国民は敏感です。
中東で有事が発生すると、ガソリン価格が高騰するので、
国民の不満が高まります。
さらに、原油価格の高騰は、「悪いインフレ」の原因となり、
経済の回復を阻害します。
ですから、アメリカは「シェールガス」の為に中東有事を仕掛けるとは思えません。
もし、中東有事を仕掛けるならば、国内経済の破綻が免れ得ない場合や、
財政破綻が不可避になった時に、世界を道連れにする為手段とするはずです。
■ そうだ、日本に高く売りつけよう!! ■
現在の天然ガス価格では、シェールガスビジネスは儲かりません。
今後、参入業者が増えてきて、生産量が増大すれば、
ガスの価格が下落圧力が生じます。
そこで、ガスを高値で買ってくれる客を探すと・・・・
オー、太平洋の向こうに、原発を稼動出来ずに困っている国があります。
日本です。
そこで、アミテージやナイを日本に派遣して、セールスに励む事にしました。
但し、原子力開発にも協力するとリップサービスもしておきます。
■ 埋蔵量が多いが、開発には問題点も多い ■
アメリカ経済の救世主の様に言われているシェールガスですが、
環境破壊という新たな問題が指摘されています。
シェールガスは地下2000m程度の頁岩層を高圧の水で破砕して生産されます。
この時、当然、縦坑という垂直な穴を掘ります。
地上までのガスの通り道です。
地下で発生する高圧に押し込められていたガスは、
この縦坑の周囲を伝わって、地表付近に漏出してきます。
この漏出ガスが地下水や井戸水に溶け込む事例が発生しています。
水道の蛇口にマッチを近付けたら、勢い良く燃え出した家もあります。
メタンガスは川や湖にも溶け出しています。
シェールガスの中には、有毒なベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素や、
硫化水素、二硫化炭素が混入していて、環境や飲料水を汚染します。
ですから、シェールガスの開発は、近くに民家のある場所や、
環境汚染が問題となる場所では、制約を受ける事になります。
■ 地震の原因となる岩盤の破砕 ■
アメリカでは最近地震が増えてきていると言われています。
本来、岩盤の安定している北米大陸は地震の少ない地域ですが、
シェールガスの採掘地の近くで地震が発生しているという指摘があります。
岩盤は破砕して、高圧の水を注入するという製造方法により、
地震が発生する危険が指摘されています。
■ 既に雇用を生み出しているシェールガス ■
オバマのグリーン・ニューディール政策は大した雇用も生み出さず、
太陽電池産業は、安価な中国産の太陽電池パネルに席捲されてしまいました。
補助金で潤ったのは、中国という皮肉な結果を生み出しました。
一方、シェールガス事業は、中小の開発業者が多いのですが、
確実に雇用を生み出しつつあります。
2010年、米国ではシェールガスにより60万人の雇用が創出されたといいます。
さらにこの数字は、2015年には87万人、
2035年には160万人に達すると予想されています。
シェールガスから化学工業の原料となるエチレンを製造する技術も実用化されています。
アメリカにおいてシェールガスビジネスは、
省エネビジネスより有望である事は確かな様です。
しかし、これらの試算の前提になるのは、
シェールガスが既存のエネルギーや原油に対して価格競争力を維持した場合です。
例えば、世界各国でシェールガスの生産が活発化して、
ガス自体の供給が過剰になった場合、
アメリカはコスト高の自国産シェールガスよりも、
輸入ガスを選択する可能性もあります。
さらに雇用の規模も勘案する必要があります。
オバマ政権下で新規に創出された新規雇用者数は500万人、
2300万人が失業中ないしは不完全就業(半失業)の状態です。
60万人とか、85万人の雇用は、
2300万人の失業者に比べると、いささか小さい様に思われます。
「シェールガス革命による雇用創出」には、
「希望」というバイアスが掛かっている様にも思われます。
■ 過大な期待は持てないが、原油価格の高騰がカギ ■
シェールガスに過大な期待を寄せるアメリカですが、
これにより、アメリカ経済が急激に回復する様な起爆剤になるとは思えません。
しかし、中東有事が発生した場合は、
エネルギーの安全保障の上で、シェールガスやシェールオイルという
自前のエネルギーの存在感と大きくなるでしょう。
原油価格やガス価格の高騰も追い風になります。
但し、現在のアメリカの経済状況で、
原油価格の高等は経済の息の根を止めそうですから、
中東有事はやはり最後の切り札となるのでしょう。
準備だけは、怠り無いようですが・・・。