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資本主義は自壊する?・・・危険な格差拡大

2012-11-11 09:00:00 | 時事/金融危機
 


■ 資本主義の限界 ■

ソ連の崩壊によって、資本主義は共産主義に勝利しました。

資本効率を追求するシステムは、
生産性を極限まで高める事で、物質的豊さを多くの人達に与えました。

工場はオートメーション化され、少ない労働力で最大の生産力を発揮しました。
さらに、資本効率を高める為に、より労働力の安い地域に工場は移転しました。

こうして、世界は巨大な供給力を積み上げたのです。

■ 物質的従属は、資金を「投資」へと向わせる ■

一昔前の中央銀行に役割は「インフレファイター」でした。
需要に対して、供給力が不足していたので、
景気が活性化すると、インフレ率が不用意に高まってしまいました。
ですから、中央銀行は金利操作でインフレ率を絶えず調整していました。

ところが、供給力が需要を十分満たす様になると、
インフレ率は低下し、資金需要も低下してきます。

現在の通貨システムは資金需要が存在する事を前提に成り立っています。
そこで、新たな資金需要を社会は求める様になります。

それが「投資」です。
日本では「投資」の対象は不動産でした。
「不動産投資すれば必ず儲かる」という間違った認識の元、
旺盛な資金需要が生まれ、逆に大量の負債を積み上げて行きます。

日銀の利上げのタイミングが遅れた為に、
過剰が負債が摘みあがり、利上げによって一気に「バブル」は崩壊します。

■ 債権金融に負債を積み上げた欧米 ■

アメリカでも同じ様にして「住宅バブル」が拡大します。

そしてアメリカはさらに「債権金融システム」でそのバブルを「再拡大」します。
「債権金融システム」は、「借金が借金を生み出す」システムです。

他人の借金を、さらなる借金によって引き受けるこのシステムは初めから破綻していますが、
金融工学による粉飾によってリスクを過小に評価する様に仕込まれています。


バブルは「弾ける」からバブルと呼ばれます。
弾けないバブルは無いのです。

アメリカの「住宅バブル」も「サブプライムローンの破綻」で弾けます。
すると、「債権金融バブル」も「リーマンショック」で弾けてしまいました。

■ 膨大な資金供給で債権金融システムを復活させた欧米 ■

「債権金融バブル」の崩壊は、多くの不良債権を生み出しました。
その代表的な例が「MBS」と呼ばれる住宅担保証券です。

「MBS」は住宅ローンが破綻すると毀損します。
4%までの破綻は折込済みでしたが、
4%を超える破綻が発生したので、MBSの多くは損失を出す商品となってしまいました。

MBS自体が全く無価値に成ったのでは無いのですが
MBSは市場で売買されます。
初めから損失が約束されている商品には値が付きません。
結局、MBSを時価評価すると、膨大な負債を金融機関が負う事になったのです。

そこで、FRBはMBSを大量に買い取る事にしました。
金融機関は「不良債権」をFRBに売って、ドルを手にします。

こして金融機関に供給された大量のドルが、
再び、債権金融システムのエンジンを回し始めたのです。
リーマンショックで一時価値を失っていた社債やMBSも値段を回復しました。

こうして、中央銀行の供給する膨大なドルは、
債権金融市場や株式市場をグルグルと回り続けています。

■ いつまで経っても、実体経済が回復しない・・・ ■

ところが、いつまで経っても実体経済が回復しません。
新たな雇用が生まれない為に、住宅市場も回復しません。

供給されたドルは、資本効率の高い債権金融市場に停滞して、
リスクの高い、不動産融資に向う事はありませんでした。

アメリカ人は、不動産価格の値上がりによって発生する新た価値を担保にして、
自動車を買ったり、消費を拡大していました。

不動産価格が低迷したままでは、アメリカに新たな需要は生まれません。

■ QE3でMBSを無期限に買上げ、強引に住宅市場を拡大する戦略 ■

FRBばQE3でMBSを市場から無期限で買上げると発表しました。

1) 銀行は住宅ローンの希望者にローンを貸し出す
2) ローンはMBSに加工され、証券化される
3) MBSをFRBが買い上げれば、銀行からローンのリスクが消える
4) 銀行は、MBSを売却した資金を新たな住宅ローンに貸し出す

リーマンショック以前はMBSの購入者は民間の市場でした。
ところが、今回はFRBがMBSの購入者です。
この異常さを皆さんは理解出来るでしょうか?

銀行に代わって、中央銀行が住宅市場のリスクを全て肩代わりしているのです。
これは、信用力の低い債権者に、FRBが直接融資しているのと代わりありません。


アメリカはそうまでしなければ、実体経済を回復させる事が出来ないのです。

■ 財政拡大を伴わない巨大公共事業が行われている ■

不景気で民間の資金需要が低い時には、政府が借金をして公共事業を行います。
これで景気が回復するというシナリオが、ケインズ経済学の基本です。

ところが、「財政赤字を膨らめる事は悪」だとされています。
財政赤字が、国債や通貨の信用を損なうからです。

アメリカも国債発行残高に上限を儲け、
この上限に達すると、議会が協議して上限を引き揚げてきました。
こうして、ある程度の制約を設ける事で、ドルと米国債の信用を保っているのです。

アメリカは既に財政赤字が充分に膨らんでいるので、
これ以上、無節操に財政拡大を行う事は、共和党が許しません。

だから「量的緩和」という呼び名で、
FRBが直接住宅市場に資金を注入しているのです。

これは明らかなモラルハザードですが、
世界はドルの崩壊の方が悪影響が大きいので、この事実に目をつぶっています。


■ ドルは「政府通貨」化している ■

現在の信用通貨制度の建前は、政府は独立して通貨を印刷出来ません。
政府が税収以上の財源を確保する為には、
国債を発行して市場から資金を調達する必要があります。

中央銀行は直接国債を政府から引き受ける事は禁じられています。
政府の国債発行に、市場原理を介在させる事で、
国債金利のコントロールが働き、
政府が返済が不可能な程の国債を発行する事を防いでいるのです。

中央銀行は市場を通じて、国債を買い入れ間接的に政府をファイナンスしますが、
国債価格が暴落すれば、中央銀行のバランスシートが悪化するので、
中央銀行も無尽蔵に市場から国債を購入する事は出来ません。

ところが、FRBはQE2で直接米国債を買い入れています。
これは明らかなモラルハザードですが、世界はこれに目をつぶっていました。
そうしなければ、米国債がデフォルトするか、
米国政府が財政破綻したかもしれないからです。



現在の通貨制度は、政府が国債発行無しに通貨を調達する事を禁じています。
QE2は政府の資金調達で、辛うじて国債を発行していますから、
もしかすると、ギリギリセーフなのでしょう。

ところが、QE3は国債発行無しにFRBが直接市場に資金を供給しています。
これでは、政府が国債発行無しに通貨を発行する「政府通貨」と代わりありません。

アメリカはQE3で、こんな禁じられた領域に踏み込んでいるのです。
QE1は緊急回避的に許されましたが、QE3は単なるドルの延命策です。

アメリカ経済がこんなに危機的な状況にあるにも関わらず、
マスコミもアナリストも、QE3によって住宅市場は回復すると報じています。

■ 実質失業率が23%のアメリカで住宅需要はあるのか? ■

アメリカでは2週間以上、求職活動をしない人は、統計的に労働市場から退場します。
失業率の分子から外されてしまうのです。

大統領戦直前の統計で、アメリカの失業率は8%を切り、
労働市場が改善していると報道されました。

しかし、求職活動を諦めた人を含めたアメリカの失業率は23%に達します。
フードスタンの受給者(生活保護の一種)も4000万人を超えています。


こういう統計的なイカサマや、研修制度などの制度的なイカサマをを無くすと、
日本の失業率も10%を越えているでしょう。

アメリカのサブプライムローンは、ほとんど収入の無い人に
銀行が強引にローンを組ませて、それが破綻しました。

はたして、QE3で銀行はどの様な人達にローンを組ませるのでしょうか?

住宅市場が復活すれば、アメリカの経済は復活する。
呪文の様に、こう言われ続けています。

しかし、住宅市場の復活は、経済の復活の上に成り立つのであって、
住宅市場に過剰な資金を流入させた上の経済の回復は、
第二のアブプライムローン問題を生むだけです。
アメリカは目先の景気回復の為に、自ら毒を煽っているのです。


■ 世界は米経済のリスクから、目を背けられなくなる ■

アメリカは「財政の崖」に直面しています。
しかし、民主党と共和党の妥協によって「財政の段差」で収束するでしょう。

その時、ユーロ圏はギリシャ救済で又揉めているはずです。
ユーロよりもドルの方が、まだマシだという雰囲気になるはずです。

ドルの危機が深まっているにも関わらず、
世界の資金はドルと米国債に集まって来るでしょう。

そして、しばらくすると、ユーロは財政統合へ、また一歩前進し、
ドルから徐々にユーロへの資金還流が発生するはずです。

この段階で、米国の景気が回復していなければ、
米国債市場からも資金流出が起こり、
米国債金利が上昇するはずです。

これを乗り切る為に、アメリカは新たな世界の危機を演出するかも知れません。
それが、中東の緊張なのか、日中の軍事対立なのかは予想は付きません。

ただ、そうやって、決定的な崩壊を先延ばししながら、
世界は徐々に本当の崖に、一歩、一歩近づいてゆくはずです。

■ アメリカ国民がいつまで耐えられるかに、世界の運命が掛かっている ■

問題はアメリカの雇用が回復するかどうかに掛かっています。

アメリカ国民の目は、2期目のオバマには冷たいはずです。
経済運営が上手く行かなければ、国内の不満は高まります。

エラそうにしている白人のロムニーでは、
黒人もヒスパニックも、大人しくはしていないでしょう。
黒人大統領のオバマだからこそ、彼らはオバマを支えようとしています。

しかし、我慢にも限界はあります。
オバマ主任以来、経済は回復せず、雇用は失われ続けている事に誰もが気付いた時、
アメリカで、きっと暴動が発生します。

そのキッカケは、ガソリンスタンドを襲った黒人にティーンエイジャーを警官が射殺したり、
あるいは、韓国人商店を、黒人の暴徒が襲って略奪する様な些細な事かも知れません。

人々は政治的な大きな変化よりも、
身近な事件に過剰に反応します。

そして、社会の不満が充分高まっている時、それは暴動へと発展するのです。



結局、資本主義の最大の敵は、ドルのモラルハザードの様な概念的危機では無く、
資本効率を追求するあまりに拡大する「貧富の差」が生み出す
「暴動」などの「直接的暴力」なのかも知れません。

歴史を振り替えてみると、国家を崩壊させるのは、いつも「民衆の暴力」でした。

しかし、「暴動」が偶発的でない事も「歴史が隠す事実」である事に注意が必要です。

ジャコバン派や、コミッテルンの裏で誰が糸を引いていたのか・・・ゲフン・ゲフン