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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

昭和元禄落語心中・・・素晴らし過ぎる大人のアニメ

2016-02-15 05:12:00 | アニメ
 


与太郎

■ 初回1時間は何十回でも見れる ■

今季はアニメがつまらない・・・いや、『昭和元禄落語心中』『僕だけがいない街』という2作品が突出していて、他の作品を観る気が起きないのだ。

両作品ともに原作マンガは十分な評価を受けてきました。満を持してのアニメ化ですが、当然読者の期待のハードルは相当高かったはずです。それを予想を上回るレベルで軽々と飛び越えて見せた・・・それもアニメファンでは無く、アニメなど見た事が無い大人達を十分い未了する内容で。

特に、1時間スペシャルで放送された『昭和元禄落語心中』の第一話は、もう何回、繰り返して観たか分かりません。凡百のアニメを観る時間を、すべてこの1話の為に費やしても構わない・・。

■ 大人のアニメ ■


チンピラの強次は出所して早々に八代目有楽亭八雲の門戸を叩きます。と言っても寄席を出て来た八雲の前に土下座して弟子入りをお願いするのですが。弟子は取らない主義の八雲ですが、何の気まぐれか強次を「与太郎」と言って可愛がります。

与太郎が八雲に弟子入りしたのは、刑務所で観た八雲の落語に心底惚れたから。演目は『死神』。死神が見える男が、金儲けの為に死神を騙した所、自分の余命を削ってしまうという有名な古典落語ですが、刑務所で演じるには少々皮肉な内容です。八雲の落語は服役者達の肝を冷やしますが、強次は何故かそんんあ八雲の落語にぞっこんになります。

八雲の身の回りの世話から徐々に前座へとなった強次は「与太郎」という名で高座に上がる様になります。そんな彼の元にチンピラ時代の兄貴分が訪ねて来ます。「もう一度オレとひと稼ぎしよう」と誘う彼に八雲がこう言います。「彼の落語を見てもらえませんか」と。

兄貴を笑わせて今の自分を認めてもらいたい一心で与太郎が選んだ演目は『出来心』。貧乏長屋に忍び込んだ盗人が「ほんの出来心で」と開き直る話ですが・・練習では咬んでばかりいた与太郎ですが、口座の出来は思いの外に良く、これには兄貴分もクスっと笑ってしまった。

そんなこんなで落語の世界に足を踏み入れた与太郎ですが、八雲の家には小夏という若い同居人が居ます。与太郎が「あねさん」と慕う小夏は、実は二代目有楽亭助六という噺家の娘。助六と八雲は兄弟弟子として研鑽を重ねた様ですが、小夏は八雲が助六を殺したと恨んでいます。

与太郎は小夏が聴かせるくれた助六のレコードの虜になります。師匠の八雲はそれを面白く思わず、わだかまりが高じて与太郎は破門を言い渡されますが・・・

泣いてすがる与太郎に、八雲は「死ぬときも一緒ならば」と破門を解きます。八雲は与太郎に助六の姿を重ねていたのです・・・こうして、時代は遡り、助六と八雲の話が始まります。


思わず、1話のストーリーを書いてしまいましたが、この作品の面白さはここからが本物です。幼い頃から兄弟弟子として育つ助六と八雲の話をじっくりと描いて行きます。

■ 噺家と声優 ■

落語家も声優も声を売り物にした商売です。「声のプロ」の声優達が「話のプロ」の落語家に挑む様は興奮します。

特にこのアニメ、古典落語の1話丸ごとをじっくりと聴かせます。その為の初回1時間という長尺。まず、この決断に拍手喝采を送りたい。やはりダイジェストでは落語の面白さは伝わらない。

特に八雲師匠の青年時代と老年を演じる石田彰の声と演技の幅には惚れ惚れします。妖艶な艶っぽい声。江戸言葉・・聞き入ってしまいます。

「中の人が居ないというのが本来のアニメの御約束、声優は黒子であってこそ役が引き立つ」というのいが私の持論ですが、今回ばかりはwikipediaで声優陣をチェックしてしまいました。



八雲(青年時代・菊比古きくひこ)


助六

■ 将来は実写や俳優を駆逐するかも知れないアニメ ■

昭和という時代を彩るのはJAZZ。落語とJAZZはミスマッチかと思いきや、昭和のノスタルジーを掻き立てるのにJAZZはベストマッチの様です。ちょっと『坂道のアポロン』を想起させるものがあります。

普段は「オタク文化」として若者相手に製作されているアニメですが、大人をターゲットにしても十分に魅力的な作品は作れます。

この作品などはゴールデンタイムに放映して欲しいのですが・・・ハリウッドやカンヌがアニメを別枠とした様に、現実の俳優達がアニメを脅威に感じる時代が始まりそうな予感がします。