■ 『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』の実写版の聖地は千葉県旭市飯岡 ■
『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』 アニメ版より
『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』のアニメ版では銚子電鉄の古い車両デハ801
が印象的に用いられていました。これだけで「聖地=銚子」だと分かります。そこで、銚子に聖地巡礼に自転車でGO!!
実は実写版とアニメ版はロケ地が違うってご存知でした?岩井俊二の実写版の聖地は千葉県朝日町飯岡。ここは銚子市の南隣の町で、九十九里浜の北端に当たります。今回の聖地巡礼は、先ずは思い入れの深い実写版の飯岡からスタートします。
銚子へのルートは成田街道をひた走り、多古町の先で東総広域農道で飯岡を目指します。多古町は「多古米」という美味しいお米の産地として有名ですが、多古町から旭市に掛けて、田園風景が広がっています。
■ 映画版の聖地 飯岡駅 ■
整地巡礼に先立って、実写映画を観ておこうとTSUTAYAに行きましたが、実写版はアニメ映画の影響か、いつ行っても、どこに行っても貸し出し中。仕方無いので、古い記憶と、ネットにアップされている情報を頼りに飯岡の街を回る事にします。
先ずは、ナズナと典道がプチ駆け落ちをする駅は飯岡駅からスタートです。
『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』 実写版より
残念な事に、駅舎は新しく建て替えられていて映画の面影はありません。待合室も駅舎同様に新しくなっていましたが、そこにアニメ版のポスターが大量に貼られていました。入場券を買ってホームに入ります。
『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』 実写版より
ホームは映画撮影当時の雰囲気を残しています。ところで、ナズナと典道は東京へ駆け落ちしようと話していますが、飯岡から東京に行くには、総武本線で千葉を経由します。ところが、映画の中で二人が居るのは銚子方面のホーム。
映画の記憶が曖昧だった私は、千葉方面のホームの写真を撮ってしまい、映画の舞台となったホームの写真がこれしか無い・・。
『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』 実写版より
ナズナが着替えをするトイレは既に取り壊されていまいた。残念。
■ 旭市立三川小学校 ■
次の聖地は、典道たちが通う「旭市立三川小学校」。
アニメ版では典道と祐介が水泳で競争するだけですが、実写版オリジナルでは、プチ駆け落ちを中止した二人は、夜の学校のプールに忍び込みます。
「ねえ、私達、泥棒みたいだね」
「何盗もうか、プールの水全部とか?」
もう、身震いする様なセリフですね。
『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』 実写版より
『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』 アニメ版より
実はこのプール、なかなか見つかりません。何故かと言うと・・・白い塀で囲まれているのと、校庭の一番端っこの民家の庭先に位置するので、白い塀の上から覗かないとプールの存在が分からないのです。
夏休みも終わり、プールは人影も無く、水は緑色に濁っていました。ただ、もし子供達がプールの授業をしていたら、塀の上から写真を撮っている私は完全に不審者ですから・・・むしろ無人で良かった・・・。
■ 円形校舎 ■
ところで、アニメ版の学校は坂の上に有り、さらに円形の特徴的な形をしています。アニメ版の舞台は銚子市の外川漁港周辺だと思われますが、そこに円形校舎の学校は有りません。・
『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』 アニメ版より
円形校舎を実際にご覧になった事が在る方は少ないと思いますが、建築家・坂本鹿名夫によって考案されてローコスト建築として、1950年代に全国で多くの円形の校舎が作られました。円形にする事で廊下や壁を少なくする事が出来、さらに省スペースで狭い敷地に建てられる。
上の写真は私の母校である習志野市立津田沼小学校の円形校舎です。アニメ版では2棟の校舎が並んでいますが、全国でも2棟1対の円形校舎は非常に珍しく、さらに、それぞれの校舎の階数や屋上の形状が同一の建築は、多分、津田沼小学校しか無かったのでは無いか(不確実ですが)。
残念ながら、津田沼小学校の校舎は保存運動の甲斐も空しく、10年程前に取り壊されてしまいました。実は習志野市には他にも習志野高校、習志野第二中学校に円形校舎が有りました。第二中学校は教室が螺旋状のスロープになっており、大学の大講堂の様に黒板側が低くなっている非常に珍しい構造の建物でした。消しごみが落とすとコロコロと教室の前に転がっていってしまうのが・・・。
ところで、経済的と言われた円形校舎ですが、南側の教室になると夏は暑く、北川の教室になると冬は1日中陽が入らず寒い。そんなこんなで、円形校舎は一時のブームの後は、建てられなくなります。
学校の他に病院でも円形の病棟は建てられました。看護師の導線が短く出来る等のメリットが在りますが、病室が扇型になるので、実際には使い難いのではないかと推測されます。
『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』 アニメ版より
アニメでは校舎の中も忠実に再現されていました。中心部に螺旋状の階段が有り、その周りに廊下が周り、外周部び扇形の教室が放射状に配列されます。もう、教室のシーンでは、懐かしさでスクリーンが涙で霞みました・・・。二度と見る事は無いと思った情景だったので。
■ 島田釣り具店は津波の後解体されたらしい・・・ ■
典道の家は「島田釣具店」ですが、この建物は現在は有りません。実は飯岡は311の地震の時、7.6mの津波に襲われました。防波堤を乗り越えた津波は、海沿いの家々を襲い、16人の方が命を失っています。
現在飯岡に行くと、海沿いの住宅地は空き地が多い。津波被害の後、家が取り壊されて、そのままになっているのです。
祐介の実家の「安曇医院」は建物は残っている様ですが、病院は閉じられているとの情報がネットに有りました。
『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』 アニメ版より
『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』 実写版より
アニメ版の舞台は外川だと思われますが、ナズナが母親に連れ戻されるシーンは実写版をトレースしていると思われるので、背景も含めて実写版と全く同じです。マニアはここも特定している様です。(私は見つけられませんでした)
■ 刑部岬と飯岡灯台 ■
飯岡の聖地巡礼のハイライトは「刑部岬」と「飯岡灯台」です。
刑部岬は九十九里浜の北端から始まる「屛風ヶ浦」の南端に当たります。飯岡漁港のすぐ北側から高さ65mの台地がせり上がっていて、そこに灯台が在ります。
『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』 実写版より
花火を横から見ようとした子供達は、学校の校庭から刑部岬を目指しますが、花火が終わってしまっても岬に着く事が出来ません。何故なら、三川小学校から岬までは5km弱の道のりだからです。子供の足では1時間以上掛かります。(ただ、5時に校庭に集合して、花火が終わるのが8時頃でしょうから・・・子供達は結構ダラダラと歩いていた事になりますが・・・)
『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』 実写版より
映画の冒頭、子供達が学校へ向けて高台の坂道を駆け下りるシーンが在りますが、場所は刑部岬です。背景に飯岡漁港が見えます。
『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』 実写版より
高さ65mの刑部岬には立派な展望台と、小さな灯台が在ります。子供達が花火を観たのは、この灯台の上です。
『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』 アニメ版より
アニメ版の灯台は、飯岡灯台よりもずっと大きい。多分、若干アレンジされた犬吠埼灯台だと思われます。
■ 風力発電 ■
アニメ映画の中では風力発電の風車が随所に出て来て印象的です。実は飯岡から銚子に続く台地の上に、実際に風車がズラリと並んでいて壮観です。
『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』 アニメ版より
実は屛風ヶ浦一帯は一年中強い風が吹いていて、風力発電に適しています。自転車で走る時は、北上する時も、南下する時も、何故か運悪くいつも向かい風に泣かされます。
実験的な施設だと思われますが、沖合の洋上にも2基の風車が設置されています。
実はアニメ映画の中で描かれている海辺の風車は、茨城県神栖市にある波崎ウインドファームの景色だとネットには書き込まれています。こちらは海辺に12基の風車が並びます。
『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』 アニメ版より
アニメ版では高圧鉄塔の印象的なシーンも在りますが、これはアニメオリジナル。しかしは岩井俊二監督の『リリィ・シュシュの全て』という映画でも高圧鉄塔が印象的に使われいて、上のシーンなどは、そのオマージュでは無いかと妄想しています。
次回は日本のドーバー岬と言われる屛風ヶ浦と、アニメ版の聖地「外川」をお送りします。