■ 無理筋の獣医学部新設 ■
日本会議という怪しい団体が絡む森友学園問題は、面白いといえば面白いのですが・・・国家としてより問題が大きいのは加計学園の獣医学部新設問題です。
この問題は岩盤規制に穴を空ける為の「国家戦略特区」の力が、本来の目的の為では無く、首相のお友達の為の使われたのでは無いかという「特区運営の公平性」に疑問が持たれています。
加計学園の獣医学部新設に問題は無いと言われる多くの方が「四国で獣医が足りない」という愛媛県知事の主張を信じています。しかい、実際には獣医は足りないのでは無く過剰になりつつあります。
文科省は獣医学部を増やすのでは無く、減らす方向で調整して来ました。
1)獣医は足りているとして長年獣医学部の新設は認められていない
2)文科省は獣医師教育を国際水準に高める為に獣医宅部の統廃合を検討していた
3)獣医師の教育者の数が足りない為に、地域毎に獣医学部の合同カリキュラムを実施していた
先日、知人からこんな話を聞きました。知り合いの獣医師資格を持つ方の話だそうですが・・・
彼女は動物病院の獣医を目指しましたが、その職には就けず、仕方なく食品検査関係の公務員をされているとの事でした。本当は動物が好きなので、動物病院に勤務したいのだけれど、彼女の友人の獣医は、動物病院に自給800円でパートをしている・・・。今思えば、公務員の獣医で良かったと思うと語られてたそうです。
1)多くの獣医師が動物病院の開業を目指している
2)動物病院の分野は人材が過剰で、自給800円などというファーストフード以下の状況
3)公務員獣医は人気が無い
4)地方の公務員の産業動物獣医は、もっと人気が無い
「四国の獣医師不足解消の為に四国に獣医学部を新設したい」という愛媛県知事の訴えは尤らしく聞こえますが、実はこの解決策は簡単です。四国の公務員産業動物獣医の賃金を上げれば良いだけです。結局、四国の獣医不足の原因は、「労働市場の不一致」であり、「獣医の不足」では無いのです。むしろ獣医は過剰な状態で、平均収入も低下を続けています。
下記は「国家戦略特区 獣医学部の新設について」と題する、国家戦略特区の審議委員が加計学園疑惑に答える形で、新設獣医学部の必要性を説明した文書の冒頭です。
1、岩盤規制改革がようやく実現した
・ 獣医学部は、新設提案の内容の適否以前に、およそ新設は一切 認めないこととされており(告示)、52年間新設がなかった。
・ 一方、獣医師の偏在、公務員獣医師の不足、人獣共通感染症対 策、先端ライフサイエンスへの対応などの課題は認識されており、 獣医学部新設は、民主党政権時代も含め、長年の懸案だった。
・ 獣医学部新設が実現できずにきたのは、他分野の多くの岩盤規 制と同様、既得権者が新規参入を阻んできたためである。既得権 者が守り続けた分野では、結局、競争力を失われる。 この分野で、ようやく岩盤規制改革が実現したことは評価すべき である。
既得権者とは開業獣医を指すと思われますが、この分野は充分に獣医が過剰の状況で6年生の獣医学部を卒業して自給800円とか、平均年収600万円とか・・・これ以上は競争力云々と言うよりは、死活問題です。
文科省は既に既存獣医学部の教育改革に着手していましたから、「人獣共通感染症対 策、先端ライフサイエンスへの対応などの課題」への対策は実践段階にありました。ワザワザ「Fランク獣医学部」を新設する必要など一つの有りません。
「獣医師の偏在、公務員獣医師の不足」の問題は労働市場の不一致ですから給料を上げるというのが正解で、解決への最速の対策です。
「国家戦略特区のよる岩盤規制の突破」というのは、「権力による常識の破壊」と言い直した方が良いのでは無いか・・・・。
あるいは「既得権益による参入障壁を破壊してやるから、俺たちにも甘い汁を吸わせろ」と素直に言った方が国民も納得するのでは。