■ 年率1.2%の物価上昇? ■
超次元緩和を続ける日銀ですが、一番恐れているのは物価上昇。日銀は緩和目標を「物価上昇が2%を安定して達成するまで」としていますが、超少子高齢化が進行する日本で、国内的な景気回復でこの目標を達成する事は難しい。どんなに頑張っても、成長率は0%前後かと・・・。
ところが、直近の物価動向によれば、物価上昇率の年率換算が1.2%になる可能性が有り、ジリジリと物価が上昇してきている。
■ 景気回復? ■
「物価上昇」と聞くと、「景気が回復している」と錯覚しがちです。7-9月期のGDP速報値が7か月連続でプラスになったと報道され、経済に詳しく無い方達は「お、安倍ちゃん頑張ってるね」などと錯覚してしまいそうですが・・・。
報道によれば、今回のGDPのプラス数値を支えたのは外需で、国内の景気動向を反映する内需はマイナスとなっています。
■ 円安と原油価格上昇による効果に過ぎない ■
上のグラフはドル/円の推移ですが、直近で113円とジリジリと上昇しています。
上は原油価格の推移ですが、一時期40ドル/バレルを割り込んでいましたが、ジリジリと上昇しています。これは中東での危機を具体的に織り込んだという訳では無く、下がり過ぎた相場が正常化していると考えられます。
円安と原油価格の上昇の影響は国内での石油製品の値上がりとして観測されますが、分かり易いのがガソリン価格です。多少のタイムラグは有りますが、原油価格上昇には敏感です。
上のグラフは国内のガソリン価格の推移ですが、かなりのペースで上昇しています。ガソリンに限らず火力発電の燃料用の重油や、天然ガス、その他の資源、輸入物価など、円安と原油高の影響を受けますので、国内物価には上昇の圧力が掛かります。
■ 外需の拡大は、海外の景気と円安の効果 ■
GDPの上昇をけん引した外需は、円安と海外の景気に後押しされています。現在、米経済は踊り場で、消費がそれ程強い訳ではありませんが、新興国の消費は堅調です。さらにスマホ用の半導体やパーツ需要が拡大しており、外需は拡大しています。
これに円安効果が重なるので、日本の輸出は拡大しています。
■ 異次元緩和直後の物価上昇と類似 ■
7か月連続のGDPの上昇と言っても、異次元緩和直後の状況と同様に、円安と原油価格の上昇の相乗効果の影響が大きく、国内景気が回復している訳では在りません。当然所得も横這い。
その結果、実質所得が低下するので国内消費は減少し、内需の減少としてGDP統計にはっきりと表れています。
■ 「アベノミクスでGDPは50兆円も拡大した」という嘘 ■
安倍首相は衆議院選挙で、「アベノミクスで日本のGDPは50兆円も拡大しました」と宣伝しましたが、この内の30兆円以上がGDPの集計方法の変更によるものです。
従来は経費としていた研究開発費をGDPに含めた事で、従来の統計数字よりもかなり水増しされています。
20兆円程度のGDPの回復は有りましたが、これは民主党政権当時、リーマンショックの余波で超円高だった事と、世界の景気が低迷していた状況と比較しているに過ぎません。
実際の所、現在のGDPは「リーマンショック前に戻った」だけであり、日本の経済成長率は中長期的には0%近傍に張り付いています。超少子高齢化の進行に鑑みれば、ゼロ%でも上出来ですが。
■ 海外発の危機が無ければオリンピックまでは安定 ■
世界的な金融危機や、中国経済の大失速や、中東での大規模な戦争など、外的な大きなマイナス要因が無ければ、日本経済はオリンピックに向けて緩やかに拡大するでしょう。これには、新興国の需要拡大が大きく貢献するハズです。
■ 金融緩和バブルがいつまで持つのかがカギ ■
最も警戒すべきは、海外の金融緩和バブルがいつまで継続可能かという点です。
トランプラリー以降、単調に上昇していたダウも日経平均も、先週辺りから調整が入っています。利確による売りが出ている為ですが、ここから相場が力強く上昇する様ならば、それはバブルが弾ける兆候として、むしろ警戒が必要でしょう。
多分、株式市場は薄商いの中でボラティリティーが増大する展開がしばらく続くと思われますが、不感症相場が終了し、FRBの金利政策などに敏感に反応し始めるはずです。
ここで問題になるのが日銀の資金供給の動向です。FRBは既に利上げと資産売却に入り、ECBも緩和を緩やかに縮小する見込みです。
日銀はイールドカーブコントロールと称して「ステルス・テーパリング」に入っていますが、米の利上げが順調に進めば、円安が進行して日本の国内物価を2%近くまで押し上げる可能性が有ります。
こうなると、市場参加者は「金融緩和の時代の終焉」を意識せざるを得ず、何かのきっかけで一気に今の相場が崩れる事になります。
毎度の事ながら「何かの切っ掛け」が分かれば大金持ちになれますが・・・・私は中東危機では無いかと妄想しています。