前の記事の補足として・・・
■ 「低すぎる物価上昇率」はグローバル化の当然の帰結 ■
中東危機(戦争)が破壊するものは、現在の債権市場(国債市場)です。
リーマンショック後、世界は「低成長」に悩まされています。中央銀行の狂った様な金融緩和にも関わらず、先進国の物価は上昇しません。
この原因はグローバル化によるものです。
1) 企業のグローバル化で同一労働同一賃金化が世界規模で進行
2) 特に製造業で先進国の賃金は途上国に引っ張られる形で抑制される
3) 労働市場の開放や、大量の移民が先進国の賃金の低下を後押しする
4) 新興国の過剰生産性が先進国の物価上昇を抑制している
5) 原油安が世界的に物価上昇を抑制している
6) 発達し過ぎた金融市場が、金融緩和マネーを市場から吸い上げる
7) 成長力の高い国(金利の高い国)で資金は運用される
8) 相対的に先進国での投資機会は低すぎる金利ゆえに抑制される
この様に先進国で思う様に物価が上昇しない理由は、グローバル化によって世界がフラット化する事によって起きています。
従来の様に、資金が国境に阻まれていたならば、先進国の金融緩和の影響は、先進国の資産市場のバブルを一気に加速させ崩壊するはずです。しかし、金融市場を通じて資金は先進国から金利の高い新興国や途上国に流れるので、先進国のバブルは抑制されて来ました。
■ 金融市場自体が資金の巨大なプールになっている ■
一方、巨大な金融市場は、「金融商品を高値で買う」という行為の繰り返しによって、超緩和マネーの大きなプールになっています。
新興国においてさえ、極端なバブルが抑制されている背景には、金融市場自体が過剰資金の大きなプールになっている事が挙げられます。
このプールは貪欲で、どんどん資金を溜め込む事で維持されています。底には大きな割れ目があるので、資金流入が減ると、途端に水位(市場価格)が低下し始めます。このプールにお金を入れる事を生業にしている人達は、水位の低下を恐れて、盲目的にジャブジャブと資金をバケツで注ぎ込んでいます。
こうして、リーマンショック後に供給された巨大な緩和マネーは、世界の経済を大して成長させる事も無く、又、極端なバブル崩壊を起こす事も無く、巨大な市場にプールされ続けています。
■ 債権市場のプールは危険水位を超えている ■
多少調整は入っていますが、「ダウや日経平均株価がバブルでは無い」と主張する投資家は未だに多い。「日本株は出遅れたので割安だ」と言う海外の投資家も多い。
その彼らにして「債権市場は既にバブルだ」と言われています。現在の株高は債権市場からの資金逃避によって起きていいるとも言えます。米国債金利もジリジリと上層しています。
■ 物価上昇に弱い低すぎる金利の債権市場 ■
金利の下がり過ぎた債権市場が最も恐れるのが金利の上昇です。
これはゼロ金利にペッグされた日本国債を例に取れば分かり易いのですが、物価上昇が本格的に始まって、物価上昇率が年率3%になったら、日本国債は多分破綻します。多くの金融機関が金利の見劣りする低金利の国債を保有したままでは債務超過に陥るからです。
同様に、多くの社債やジャンク債、国債において、本格的な金利上昇が発生すると、その市場は崩壊します。
■ 世界の物価は原油価格の変動に敏感 ■
「世界的に物価上昇は緩やかで、むしろインフレ率が低すぎる事の方が問題だ」という意見は当然ですが、物価上昇を抑制しているのは世界的な原油安と、新興国の過剰生産性です。
日本の異次元緩和の初期に物価が緩やかに上昇しましたが、この主要因は円安による原油価格の実質的な上昇でした。その後、原油価格が低位で安定したので、インフレ率も下がってしまいました。
「原油価格は今でも十分に安いでは無いか」とのご指摘もありますが、将来的にこの環境が保たれるとか限りません。仮に中東でサウジアラビアとイランの間で緊張が高まれば、原油価格は100ドル/1バレルの水準になるかも知れません。
■ 低金利の条件が一気に瓦解する ■
こうなると物価がポンと跳ね上がり、FRBの金利の引き上げペースも早まるハズです。ECBや日銀の資金供給量も絞られるはずですから、市場に流入していた緩和マネーが本格的な減少に転じます。
こうなって初めて、市場関係者は顔面蒼白になります。
一気に資金の流れが反転し、信用収縮が加速し、債券金利がグングンと上層します。
こうして、リーマンショック以降続いていたプラスの循環がマイナスになり、世界は未曽有の金融危機に突入するはずです。
当然、国債市場も混乱し、各国通貨の信用が揺らぎます。
・・・・ここで中東戦争が勃発する・・・・という事で前の記事に繋がります。