人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

関税は過去の遺物か?

2009-08-24 05:30:00 | 時事/金融危機


■ 一つの世界という幻想 ■

皆さんはグローバリゼーションという言葉を
肯定的に捕らえるでしょうか?
それとも、否定的に捕らえるでしょうか?

例えば、金融危機後の世界で懸念されているのが、
保護主義の高まり。
関税や自国製品への税制的優遇などの非関税障壁を設ける事は、
第二次世界大戦の遠因ともなったと言われています。

しかし、金融危機後、市場原理主義にも陰りが見え始め、
市場原理主義が標榜するグローバリゼーションの弊害も顕著になっています。
「一つの世界」という美化された幻想の前で、
国力の優劣が無視されるグローバリゼーションは、
決して公平な競争とは言い難いものがあります。


■ 途上国の産業を破壊するIMF ■

途上国が経済危機に瀕すると、IMFから融資を受け
国家の再建に取り組む事になります。

IMFは再建の過程で、色々な注文を付けてきます。
例えば、その国の伝統的な産業や社会制度が不効率だから改善すべきである・・など。
結果、IMFによって再建された国家は、グローバリゼーションに組み込まれ、
先進国の市場として開放される事になります。

当然、競争に勝てない農業や国内産業は衰退し、
国家は貧困化して、先進国の支援を受ける立場に陥ります。
途上国がIMFに警戒感を抱いているのはこの為です。

■ 戦後破壊された日本の農業 ■

日本の食糧自給率が極端に低下した最大の理由は、
戦後GHQが行った農地改革と、学校給食により食の西洋化の推進です。

農地改革は一見すると、一部の富裕農家に集中していた農業資源を
多くの農民に還元する良策のようですが、
その結果、経営的には根本的に成り立たない農家を量産しました。

戦後、一時期、自民党は土地の再集約化の政策を模索しますが、
「沢山の農家」が「沢山の票」になる事で、
結局小規模零細農家は温存されてしまいます。

零細農家が兼業化で生活に基盤を安定化させたので、
土地の集約化は進まず、農業生産性は低い状態で安定してしまいます。
当然、米の生産コストは高止まりします。

そこに、さらに食の西洋化が襲い掛かります。
学校給食でパン食に慣らされた子供達には、
ご飯が嫌いな子供が多くなりました。
娘に聞くと、「皆、パンの方が好き」と言います。

食の西洋化は、米の需要を抑圧し、
価格維持の為に、減反政策が取られます。
そして、本来必要でない減反の為の補助金が支出されました。

■ 小麦は価格操作されえている ■

米に変わって需要が増大した小麦ですが、
国産と輸入では大きな価格差があります。
安価な輸入小麦が自由に輸入されると、国産小麦は淘汰されてしまいます。
そこで、小麦輸入は政府によって管理されており、
出荷時に、価格が上乗せされ、国産小麦並みの価格に調整されます。
私達は、あえて高い小麦を食べているわけです。

小麦の価格制度は、我々庶民の食卓を圧迫している様に思われます。
しかし、安価な輸入小麦が大量に出回れば、
国内の小麦生産だけでなく、米の生産も圧迫する事になります。

本来ならば、小麦に輸入関税を高めに掛けて調整すべき内容ですが、
保護主義と言われるので、流通段階で調整しています。

■ 自由競争が破壊する国内産業 ■

国が異なれば、当然気候風土も異なります。
穀類や農産物の生産効率も当然異なってきます。

グローバル化の名の元に、これらの差異を無視して、
農業生産物や工業生産物を公平な条件で売り買する事が求められています。

しかし、これでは、日本の様な生産性の低い農業は駆逐されてしまいます。
一方、日本の自動車をはじめ多くの工業生産物は、多くの国の産業を駆逐して来ました。
アメリカのビック3の衰退が、良い例です。

確かに、適地生産が一番効率的ではあります。
しかし、その為に貿易相手国の国内産業や雇用を壊しても良いのでしょうか?

日本とアメリカ、日本と中国の関係で考えれば、
痛み訳のように見えますが、
例えば、アメリカとアフリカ諸国の関係で考えると問題の本質が見えてきます。
農業生産性の低いアフリカに大量のアメリカの小麦やトウモロコシが輸入されれば、
アフリカの農業はひとたまりもありません。

実際、アメリカの穀物メジャーは、あまり気味のトウモロコシのはけ口として、
アフリカ諸国を利用しています。
アフリカの農業は衰退し、バイオエタノール・ブームに際しては、
トウモロコシの高騰がアフリカ諸国を苦しめました。

■ 関税は悪者か? ■

「自由貿易」や「関税の撤廃」は、あたかも正義の様に言われています。
消費者にしてみれば、安く物が買える事は良い事です。

しかし、安い輸入穀物の大量輸入で歪んだ食料受給を補う為、
大量の補助金が農家や農村につぎ込まれています。
この原資は、我々の税金です。
私達は安い食料を買って、高い税金を払っているのです。

本来、関税で調整していれば、
農家の競争力も、生産意欲も維持され、
さらに、関税が国庫を潤します。

■ 農家の所得保障はアヘン ■

民主党が政策として掲げる「農家の所得保障」はアヘンの様な政策です。
本来ならば、農家が企業努力で売り上げを確保しなければならないのに、
損失を政府が補填すれば、農家の自助努力が削がれてしまいます。

豊作による損失を補填し、凶作による損失を補填する。
一見、利に敵った政策の様ですが、
質の悪い作物を生産して売れ残っても国が所得を補填してくれます。
これは、アヘンの様な政策で、農家の生産活力を奪ってしまいます。
さらに、その原資は我々の税金です。

現代において零細農家はほぼ兼業化しています。
農業意外の現金収入が十分補償されています。
所得保障は、このような兼業農家には成されるべきではありません。
やる気のある、専業農家が、冷害や災害で困窮した時にこそ必要な政策です。

そもそも、農家は潜在的な資産家です。
所有する農地に、道路や商業施設が誘致されれば、
莫大な現金が転がりこんで来ます。
農地の転売が可能になれば、農地を売って離農する農家も多いはずです。
そのような、農家を税金で保護する必要はあまりありません。

■ 輸出企業の犠牲になった農業 ■

日本が自由貿易を推進しなければならない理由は、
日本の輸出企業が有利に輸出が出来るようになる為です。

「車は自由に輸出しておいて、農産物には関税を掛けます」とは言えません。
生産性の高い産業を優先した結果が、日本の現状と言えます。
日本の農業は、日本の輸出産業の犠牲になったと言えます。

その農業を税金で手厚く保護する事は、
私達自身が、日本の輸出産業を支えているという事も出来ます。

■ 自由貿易を謳歌出来なくなるアメリカ ■

今まで強いドルと、金融バブルによって、
アメリカは自由貿易の恩恵を謳歌してきました。
しかし、その結果、アメリカの製造業は衰退し、
農業以外の輸出競争力は削がれてしまいました。

今後、多くのアメリカ人が貧乏になり、
ドルの価値が相対的に弱くなる過程において、
アメリカ人はかつての様な、輸入による生活の従属を謳歌出来なくなります。
それどころか、国内産業の衰退は、雇用の喪失に直結します。

遅かれ、早かれ、アメリカで保護主義的な気運は高まるでしょう。
一時的には、日本の輸出産業に影響も出るでしょう。

しかし、真の調和の取れた世界を考えた場合、
適正な関税によってコントロールされた世界は、
国内的にも国際的にも、悪くない世界かもしれません。

行き過ぎた市場主義を補正するのは、社会主義的大きな国家では無く、
関税という旧来からの人の知恵かもしれません。



大人の不在・・・ネバーランド化する世界

2009-08-22 10:41:00 | アニメ


■ 「けいおん」の大ブレーク ■

上の画像は今年前半に高校生の間で一大ブレークした
「けいおん」というアニメです。

普通の女子高生が、何となく軽音楽部に入部して、
ギターを練習して、友達と文化祭で演奏する・・・。
・・・それでオシマイ。

この、いたって普通の高校生ライフを描いた作品が、
高校生には大人気で、軽音楽部の入部者が激増し、
女の子の間にバンドブームが起こったとか・・。

■ 大人がいない・・・ ■

息子が楽しみにしていたこのアニメ、
見ていると、妙に居心地が悪い・・・。
何故だろうと考えてみると・・・
何と、大人が一人も出て来ない。

顧問の先生だけが唯一登場する大人ですが、
ほとんど生徒と友達状態で、大人とは言いがたい。

友人の家に遊びに行っても、
親はいつも外出。
さらに、親だけで海外旅行に行っていたりする強引な設定
そう、「けいおん」の中には大人がいないのです。

■ 意図的に排除された大人 ■

最近のアニメには、大人が登場しないものが多数あります。
その筆頭が「涼宮ハルヒ」でしょう。
これらのアニメからは、意図的に大人が排除された形跡があります。

何故でしょう・・。
息子を見ていて、その答えが分かりました。

高校1年の息子の世界には、どうやら私は存在しない様なのです。
私や妻や、祖父母の前での息子は、
スイッチの入らないロボットの様な、ドロンとした目をして、
無気力さ全開で、自分からは口もほとんどききません。

ところが、妹といる所をそっと観察すると、
楽しそうに話しています。
友達と一緒の時も同様です。

昔から高校生はそうだったと言えば、その通りですが、
私達の時代には、親に対する反発とか競争心が原動力だったように思います。

しかし、今の子供を見ていると、
自分の世界から大人を排斥しているようにしか見えません。
大人といる時は、自分のスイッチを切って、
自分の世界の中に閉じこもっている感じ。
親は居るけど、居ない。
大人の居る世界は、存在するけど、自分とは関係無い・・。

■ 大人の排斥が進むアニメ ■

アニメの世界でも大人の排斥は顕著です。
昔、サリーちゃんの両親は、魔法の国から離れられない為に長期不在でしたが、
今のアニメの両親は、子供達が遊びに来る時は、いつも不在です。
子供達が泊まりに来る時は、海外旅行に行かされてしまいます。

結局、今の子供達がアニメを楽しむ為の最大の障壁が、
両親であり、大人なのでしょう。
大人が出てくると、醒めてしまうから、大人は登場しない・・・。

■ しっかり大人と戦っていた子供達 ■

星飛雄馬の最大の敵は、星一徹でした。
アムロ・レイの最大の敵は、シャーでは無く、ブライト・ノアでした。
掟シンジの最大の敵も父親です。

かつてのアニメの主人公達は、
成長の過程でかならず身近な大人、
すなわち父親を乗り越える事を要求されました。
父親に反発する主人公に、子供達は自己を投影して共感していました。
反発される側の大人も、社会というさらに大きな的と戦っていました。

■ 現出するネバーランド ■

ネバーランドは大人の居ない世界です。
今の子供達の世界は、まさにネバーランドになろうとしています。

大人に反発するのではなく、
自分達の世界から、大人を排斥する事で、大人を無きものとしてしまう、
そんなネバーランドが現れようとしています。

それを助長するのは、携帯電話の子供だけの閉ざされたコミニュケーションでしょうか?
相手の家に電話をする時、相手の親が出るかもしれないという緊張感も無く、
「イマ、何してるーー?」
「ヒマーーー」
みたいな、相手との境界も無い様な、曖昧な世界・・・。

大人たちが気付かぬうちに、ネバーランドは確実に広がっているのです。




のりぴー事件

2009-08-21 11:59:00 | 時事/金融危機
■ ネットは面白いね ■

押尾学事件の直後のノリピー事件で、
世間では芸能界の麻薬汚染などと報道されているようですが、
ちょっと、マスコミが悪ノリし過ぎの感があります。
特にノリピー事件。

こういう時は何かを隠そうとしている場合が多いですね。
今回のキーマンはピーチジョンの女社長と、森元首相の様ですね。

まあ、あまスキャンダルを追うのは好きでは無いので、
興味のある人はネットで検索してみて下さい。
ゾロゾロと色々な情報が出てきます。

しかし、自民党は本当に退潮ですね。
こんなショボイ事件一つもみ消せなくなってきている。
ノリピーの事務所、サンミュージックの取締役は森田健作です。
押尾事件のもみ消しの為に、ノリピー事件が仕組まれたとしたら、
森田千葉県知事もなめられたもんですね。
尤も、なめられて然るべきキャラではありますが・・・・。

ネットが全て真実という訳ではありませんが、
少なくとも、今回の事件ではマスコミよりも真実味がありそうですね。
というか、マスコミ全体で真相を隠蔽しようとするから、
かえって不自然さが際立つ感じがします。

政権交代に向け、警視庁も検察も、マル暴関係も慌しくなっているのでしょう。
誰に恩を売って、誰を売るのか・・・。
庶民で良かったと、つくずく思う今日この頃です。

自由研究

2009-08-21 05:49:00 | トレッキング/旅行
自由研究、読書感想文・・・
かつて、あんなにも苦しかった夏休みの宿題ですが、
社会人になると、かえって懐かしいものでず。

特に私のように自宅で仕事をしていると、
宿題提出日前は、自分の仕事よりも子供の宿題の進み具合が気になります。

我が家では自由研究は家族を挙げての一大プロジェクトです。
今年も2005年からの継続研究である
「富士山における高山病と血中酸素飽和度と心拍の関係」というテーマで
研究をまとめるハズでした。

これには、彼女なりの戦略があって、
前段は兄の以前の研究を丸写しにすれば楽だ・・・。
理化の先生も、継続研究を楽しみにしているようですし、
彼女としては完璧な計画のハズでした。

しかし、富士山から帰って来て、
彼女のカメラの中身をチェックしてみて・・・・
研究テーマ変更です。

実は彼女は「クモ女」です。
珍しい雲、綺麗な雲が出ていると、家内のカメラや携帯で、
知らず知らずの内に、雲を写真に収める習性があります。

富士山で彼女が使っていたデジカメの写真をチェックしたら、
湧き上がる層積雲や、上昇気流にのって山肌を這い登る雲
上空にたなびく巻雲、夜明けの雲海の写真が沢山出てきました・・・。

・・・これはこのままにしておくのはモッタイナイ。
結局、自由研究のテーマは「富士山における雲の観察」に変更。













そもそも、高山病の研究は、前回に既に行き詰まっていました。
家内の病院のパルスオキシメーターを携帯して
血中酸素飽和度(SPO2)と脈拍を測りながら登山をするのですが、
脈拍は計測するタイミングによって高く出たり、低く出たり
とにかく安定しません。

今年はSPO2と脈拍を掛け合わせた数値を、酸素供給量と仮定し、
さらに個人のバラツキを補正する為に、
平地安静時のSPO2と脈拍を掛けた値を100とた場合の比で
個人データを比較する事にしました。

過去2回のデータにさかのぼり、
データを修正すると以前よりは比較しやすいグラフが得られましたが、
結局、脈拍の測定のバラツキはそのまま反映されてしまいます・・・。

・・・・この時点で、娘の目は点になっています。
・・・・「お父さん、何やってるか全然分からない・・・」
しまった!!科学の前に、数学で挫折した・・・・。
やはり、コイツは「クモ女」です・・・。
雲の写真が沢山あって、救われました・・・。

さて、高山病の方はというと、
やはり、赤血球量と最大酸素摂取量のデータが欲しい。
最大酸素摂取量は子供達に坂道ダッシュを10本ぐらいさせて、
脈拍を計測すれば、凡その検討は付きますが、
赤血球量はやはり血を抜かない事には・・・。
坂道ダッシュにしても、子供的にNGでしょう・・・。

しかし、子供の脈拍って意外と高いですね。
バスケで鍛えているので、平常時脈拍は60以下かと思っていましたが、
皆、70近くあります。
最初の計測値なんて、80近くありました。
パルスオキシメーターに指を突っ込んで計るもは
初めての経験なので、ドキドキしてしまうのでしょうか?

しかし、毎年富士登山で思い出すのが、スコットとアムンゼン。
人類初の南極点到達を目指したイギリスのスコット隊と、
ノルウェーのアムンゼン隊。

スコット隊は科学的データを計測しながら極点を目指しますが、
極点到達を優先したアムンゼン隊に先を越されてしまいます。
失意のスコット隊はそれでも計測を続け、最後は全員遭難してしまいます。

富士山での我が一行も、最初はスコット隊のごとく
しっかりデータを計測しながら登山します。
しかし、高山病の症状が出始める、夜明け前からデータが少なくなり、
知らず知らずの内に、「山頂ご来光」が全ての目的に優先してしまいます。
スコット隊が突如アムンゼン隊に豹変するのです。

さらには例年ですと、計測員が高山病に掛かりますので、
数字はミミズだし、行は間違えるし、
おまけに強風にデーターは吹き飛ばされるし・・・・。
今年は、山頂までのデータがきちんと揃っているは、奇跡的とも言えます。

尤も、今年も下りでアムンゼン隊に豹変しました。
なんせ、高山病8合目止まり組は、体力が有り余っていますから、
標高が下がれば元気一杯!!
下山ペースの速い事といったら・・・。
山頂組にも意地はありますから、それにつられて・・・・。

まあ、子供の自由研究なんて、こんなもんです・・・。


富士山へGO

2009-08-16 03:21:00 | トレッキング/旅行
■ 日本一の富士山に登ろう 2009 ■





今年も「富士登山」のシーズンがやってきました。
学生時代、ゼミの仲間とで登って以来ヤミツキになり、
7回目の富士登山となります。

富士山の魅力は、何と言っても気軽に3776mという高山に登れる事。
老若男女を問わず、毎年大勢の方が山頂のご来光を目指します。
高山病にさえ掛からなければ、地道に一歩一歩登って行けば、
眼下に雲海を見下ろす絶景を堪能できます。

中には走って登る人もいて・・・実は私も2度程チャレンジしました。
富士吉田の駅から距離にして20km程度。
標高差3000mを5時間程度で登り、
下りは、スバルライン口まで1時間30分程度です。
これなら、充分日帰り登山が出来ます。

■ 人の苦痛の記憶は2年しか持たない ■

我が家は娘が小学校1年生の時より、2年おきに「富士登山」を決行しています。
息子と妻は高山病の症状がひどく、妻は嘔吐しながら必至で登ります。
あまりの苦しみに、翌年に「富士登山」を企画しても、逃げられてしまします。
しかし、2年後には誰とも無く、「富士山に登ろう」と言い始めます。
多分、人の苦痛の記憶は2年でクリアーされるのでしょう。

前回は息子のバスケット部員3人も加わり、
大所帯での登山となりました。
さすがに中2ともなると体力が有り余っていて、
歌は歌うは、3000m以上の高所で走り回るは・・・。

あんなに高山病に苦しんだ息子も、中2ともなると平気なようで、
あるいは友人との対抗意識からか、ハイペースで山頂に到着していました。

■ 今年は娘たち4人をエスコート ■

今年の富士登山は娘が言い出しました。
「中一のバスケット部員と行きたい」と。

妻は休みが取れない事を理由に逃げ、
息子も部活を理由に不参加。
結局、私一人で4人の娘達をエスコートする事に。

しかし、いくら普段運動している娘達でも
必ず体質的に高山病に掛かる子がいるはずで、
私一人では荷が重い。
そこで今回はツアーに参加する事にしました。

googleで「富士登山 ツアー」で検索して
上位でヒットしたのが、「クラブゲッツ・富士山を歩こう」ツアー。
ガイド・温泉・ホテルのランチ付きで、\15,800のお手ごろ価格。
さらに、帰りのバスは隣の最寄の船橋駅まで送ってくれます。

■ 地震に台風・・・大丈夫か富士登山 ■

ところが、8月12日の登山前日未明・・静岡で地震発生!!
さらには台風まで接近して、
はたしてツアーが決行されるのか危ぶまれる状況に・・・。

しかし、娘達の日ごろに心掛けのおかげ?か、
当日は台風も通過し、晴天が広がっています。
朝6時に駅に集合し、いざ富士山へGO!!

ところで、バスケは過激なスポーツなのか・・・
一人は手の指を2本骨折してギブス。
娘はヒザの関節の炎症で、前日病院で治療を受けている状態。
・・・大丈夫なのか・・・今年の富士登山・・・・。

■ 2009年の富士山は天候不順 ■

さて、東京駅からバスに乗り、11時前には早くもスバルラインの5合目に到着。
昼飯を済ませ(カレーが800円とか、もう許せない価格)、
ガイドの説明が始まりました。

ガイドさん曰く、今年の富士山は天候不順で
毎日登山するガイドですら、ご来光は4回しか拝めていないとの事。
それどころか、悪天候で8合目から引き返す事の方が多いそうです。

しかし、12日、13日は奇跡的に晴天が予想され、
我々はかなりラッキーでした。

■ 絶妙なペース配分 ■

ガイドさんは慣れた方で、ペース配分が絶妙です。
長くゆっくり歩き続けて、しっかり休憩するのがコツだとか。
小学校3年、4年生と思しき子供達も元気に登って行きます。

娘達は手を繋いで、歌を歌って、すっかりピクニック気分。
私はいつもの事ながら、ただ普通に登ってもつまらないので、
無意味に水を持参して、30kg以上のザックでトレーニングを兼ねての登山です。
娘達のザックに納まりきらない荷物と一眼レフカメラを手に持った姿は少々異様です・・。

しばし、娘が撮影した富士山の雲のコレクションをお楽しみ下さい。









■ 7合目を過ぎると高山病が・・・ ■

順調に標高を上げてきた登山も、7合目を過ぎるとそろそろ高山病が出始めます。
小学生達、若い女性の何人かが、不調を訴え始めます。
我が女子バスケット部員も一人が頭痛で苦しみ始めました。

実は、自由研究を兼ねて例年、家内の病院のパルスオキシメーターを携帯しています。
血中酸素飽和度(SPO2・・赤血球の酸素との結合の割合)と脈拍を簡単に計れます。
赤外線を指に透過させて計測を行う小さな機械です。

SPO2と脈拍を掛け合わせれば、酸素供給量の目安となりますが
高山病の症状が出ると、計測エラーが増え始めます。
脈拍を検出し難くなるようです。
脈拍の数値自体は、大きな変化が見られませんので、
高山病の症状が出ると、脈拍が弱くなり、
結果的に酸素が供給不測になるのかも知れません。

■ 宿は劣悪な環境 ■

今回は8合目、標高3200mの白雲荘に宿泊します。
ご存知の方も多いでしょうが、富士山の山小屋の環境は劣悪です。
一つ布団を二人で共有し、隣を向けば、他人の顔が真近にあります。
女性も男性も区別無く、どんどん押入れの様な、2段の棚に押し込まれて行きます。

これで普通に寝れる人は、大物です。
大抵の人は、山小屋の不眠と、過密による酸欠で熟睡出来ません。
山小屋仮眠の後に、高山病を訴える人が多くなります。

今回は女子4人に囲まれて・・・
あっちからゴロン、こっちからゴロン・・・
いくら小学生とあまり変わらない中学1年とは言え、
私の方が気を使ってしまいます。

どうせ、寝れないので私は広間でビールを飲みながら出発の午前0時を待ちます。
広間には、やはり寝付けない人が集まっていて、
気の合う人同士、会話がはみます。
私は小学5年生の男の子とそのお父さんと仲良しになりました。

■ やはり高山病が娘たちを襲う ■

午前0時に宿を出発し、一路山頂のご来光を目指します。
しかし、娘達はやはり軽い高山病。
昨日から高山病の症状を訴えていた子は、結構きつそうなので、
私がザックを持ってあげて、身一つで登らせます。

8合目から上の登山道は、いわゆるアリジゴクと呼ばれるザラ場です。
一歩進む毎に、半歩ずり落ちる・・。
これが結構体力と精神力を奪って行きます。
娘達には深呼吸をさせて(息に圧力をかけて吹きだすと、肺の内圧が上がります)
励ましながらようやく本八合目の富士山ホテル2に到着です。
(とてもホテルとは言えない、掘っ立て小屋ですが・・・。)

ここで、もう一人の子が眠気と吐き気を訴えます。
顔面も蒼白で、例年の経験から、こうなるともうテコでも動きません。
我が子ならば、頭を叩いて登らせますが、
他所のお宅のお嬢さんでがそうも行きません。

富士山ホテル2は休憩所があるので、
高山病の症状が強い二人はここで登山を断念させて、
ここからご来光を見るように指示します。
6時にピックアップする約束をして、残りのメンバーで山頂にアタックです。

ツアー参加者33人のうち、8合目以上を目指したのが27人。
頂上を目指すのが23人。
その内、小学生男子が3人、中学生女子が2人。

やはり、富士山は過酷です。
2000mの五合目まで車でアプローチする現在の登山では
高度順応が出来ずに、1/3の方がリタイアします。

■ 大混雑の登山路を避けて ■

毎年、富士登山のピークはお盆前後です。
13日も登山路は大混雑。
これでは渋滞でご来光には間に合いそうにありません。

そこで、ガイドの賢明な判断で、下山路から山頂を目指す事に。
しかし、下山路は山頂まで「蟻地獄」の連続です。
山頂までの標高差250mを、崩れる足元と戦いながら一歩一歩登って行きます。

■ 雲間から流れるペルセウス座流星群 ■

8月13日未明は運良く、ペルセウス座流星群の出現日です。
生憎の曇り空ですが、ときおり現れる雲の切れ間を
5分に一個ぐらいでしょうか、流れ星が流れて行きます。

これには子供達も大感激です。
さらにはオリオン座大星雲も見えるし、
夏の第三角形もしっかり分るし、
プレアデスも、地上よりクッキリ見えます。

■ 「腐女子モード」全開!! ■

3500m以上は、高山病に掛からない人でも
息が上がってきつい難所です。

しかし、なぜか3500m以上で元気になる人達がいます。
我が家の娘も、小学校1年生の時からそうでした。
宿を出た後は、腹痛と眠気を訴えますが、
いわゆる胸突き八丁という岩場になると、
大人をガンガン追い越して楽しそうに登ります。

今回も娘の友人の少女Hが、ハイ状態に突入。
自称「腐女子モード」突入で、アニソンを次から次に歌い続け、
さらには、高速トークで「腐女子」の何たるかを熱く語り、
さらには弱音を吐く小学5年男子をビシ!と説教・・・。

これにはガイドもすっかり呆れ顔・・・。
だって、ガイドですら息が上がる3500m以上の高所ですよ・・・。
私の軽い頭痛の原因は、はたして低酸素なのか、それとも・・・・。

■ ハイペースで山頂到着 ■

下山道が空いていたので、午前4時には山頂に到着。
日の出が、4時50分くらいなので、余裕があるくらいです。
しかし、高山病の二人を置いてきて正解でした。
結構、ハイペースでしたので、連れてきたら途中から下山を余儀なくされたでしょう。

山頂は例年通りの大混雑で、
休息所で娘二人にラーメンご馳走します。
トッピングはワカメだけで900円はちょっといただけませんが、
これが何とも美味しいし、温まる。

■ 強風で体感温度は氷点下 ■



ご来光を見ようと、休憩所を出ると、
山頂は強風が吹き荒れていました。
風速10メートル以上、台風並みの風で、
子供は吹き飛ばされそうで、時折、四つんばで進みます。

荷物になるかと思いながらも持って越させた(運んだのは私ですが)
ベンチコートを着込ませても、寒さに震えています。
南極のブリザードを耐えるペンギンの様な状態で、ご来光を待ちます。

待つこと10分。
朱色に染まる雲の上に、太陽が現れます。
自然のダイナミックなショーに、疲れも忘れてしばし釘付けです。

・・・しかし寒い・・・。
太陽がすっかり姿を現しので、下山道入り口に移動します。
本日は強風の為、お鉢巡りは中止です。
山頂の滞在時間はたったの1時間30分で、急ぎ下山します。

■ 登り3、下り7 ■





高山病の二人もどうにかご来光を見たようで、
一人は元気を取り戻し、山頂に行けなかった事を悔しがります。
もう一人は、まだぐったりしていますが、
急ぎ防寒着を脱がせ、下りの支度をさせます。

脱がせた防寒着が、皆何故かザックに納まりません。
仕方がないので、もう不要のペットボトルの水を捨てて、
私のザックに・・・ん?収まり切らない。
仕方がないので小脇に抱えて、いよいよ下山です。

富士山では登りが3、下りが7と言われます。
足元からザラザラ崩れる下山道は転倒し易く、
かなりヒザに負担を掛けます。

後ろ向きで下る人もいるくらいで、
日ごろ運動していない人は、ここで足が攣るか、ヒザが笑います。
娘達はというと・・・・さすがバスケ部。
さっきまでの高山病がウソの様に、順調なペースで下って行きます。
途中何度も滑りながら、コケながら、ケタケタ笑いながら・・・。

標高が2700mを切れば、高山病の症状はウソのい様に無くなります。
こうなると、山頂を断念した子達は元気100倍です。

結局、目標の9時30分にスバルライン5合目に到着。
娘達は一目散に、お土産屋さんに飛び込んで行きます。
「ねえねえ、先輩達にお土産買わないとヤバイよね・・・」などと言いながら・・。

■ 温泉で生き返る ■

11:00にバスが出発します。
帰りに河口湖畔の寂れたホテルで温泉入浴。
これは生き返ります。ツアーでよかった。
同じホテルで、ランチを食べ、大満足で帰路に着きます。

バスの中は熟睡かと思いきや、
娘達は大はしゃぎ。
「変顔」の撮影会で盛り上がっています。

■ サプライズ ■

あっという間にバスは船橋駅に着き、
電車で一駅で津田沼に到着。

駅で同じバスケ部の2年生の先輩母娘に遭遇。
実は、彼女達も富士山にチャレンジしていました。
山頂で会う事を約束していましたが、
あの混雑ではそれも叶わず・・
尤も、先輩も高山病で8合目までの登山だったようです。

しかし、地元の駅でバッタリ出会うとは神様も粋な計らいをします。