■ 為替市場は巨大な鉄火場 ■
急激な円安進行でFXの取引をしている方の中には大きな損失を出された方のいらっしゃるのではないでしょうか?
私達庶民には馴染みの薄い為替市場ですが、その規模は一日の取引が5兆ドル(約500兆円)を越える巨大市場です。日本のGDPに匹敵する金額が毎日売り買いされています。
為替市場の取引は目的によって幾つかのグループに分類出来ます。
1) 実需 ・・ 貿易決済など
2) リアルマネー ・・ 年金や生保など。巨額の資金を長期的視野で動かす
3) 政府系ファンド ・・ 中東や中国などの政府系のファンドで投機的な動きもする
4) ヘッジファンド ・・ レバレッジを掛けて短期的に相場を動かす
5) 個人投資家 ・・ FXなど個人の為替取引
6) オプション ・・ 本来は為替変動リスクを軽減する取引だが、近年は投機的
これらの様々な目的に資金が、日々取引されているのが為替市場です。「取引」と言えば聞こえが良いのですが、投機的な取引は「通貨をネタにした丁半博打の世界」以外の何物でもありません。為替市場とは巨大な鉄火場なのです。
■ 個人はFX取引で勝てるのか ■
為替市場の動きを予測する事はプロでも難しく、投資のプロは決してFXなどには手を出さないと言われています。
例えば、日銀の為替介入などが良い例ですが、突然、数兆円規模の円売りが行われれば、短期的に円相場が1円や2円下落する事は容易です。例えば100円から102円に円安が進行したとします。レート的にはたかだか2%の変動に過ぎません。レートの変動幅だけ見ると、為替取引は個人には魅力の薄い取引です。
しかしFXでは最大50倍のレバレッジを掛けられます。自己資金の50倍の取引を信用取引で出来てしまうのです。2%の変動に50倍のレバレッジを掛ければ100%になります。一瞬にして資金が2倍になるのです。
但し、FX取引の怖いのは、負けた時には一気に損失が膨らむ事です。100万円の自己資金で50倍のレバレッジを掛けた場合、2%の相場変動で逆に相場が動いた場合は一瞬にして元手の100万円が消し飛びます。実際には証拠金維持率30%で強制的にロスカットされるので損失は出ないはずですが、実際の相場の変動が急激の場合は、損失が発生するのがFX取引の恐ろしい所です。
FX取引は基本的にリスクヘッジを掛けていない取引なので、借金をして丁半博打をしている取引です。為替市場の変動は、為替介入など予期せぬ急激な変動も起こるので、プロでも怖がる市場です。どんなに勉強して相場を先読みしても、一回の負けで全てを失うのです。
■ 相場の先読みはプロでも難しい ■
ところで為替の相場は先読み出来るものなのでしょうか?
為替を動かす原因として次の様なものが考えられます。
1) 通貨の量 ・・ 長期的には通貨間の量的な比率が相場に影響を与える
2) 予測 ・・ 日銀やFRBの量的緩和やその終了などを予測して相場が先行する
3) イベント ・・ アメリカの失業率や消費動向の数字などが短期的に相場に作用
4) 実需 ・・ 貿易の決済日など、実需が相場に影響を与える
5) 金利 ・・ キャリートレードなど金利差が相場に影響を与える
6) 危機 ・・ 戦争や経済不安などの危機が相場に影響を与える
この様に様々な要因が複雑に絡み合って動く為替市場で相場を先読みする事は意外に難しいものです。トレンドとしての円高や円安はある程度予測出来ますが、短期の変動、特に為替介入や突発的な有事を予測する事は不可能です。
日銀の為替介入や、ヘッジファンドの運用などを鑑みるに、短期的であれば数兆円の資金で相場は大きく変動します。特に、相場が一つの節目に達している時には、その影響も拡大します。
■ 今回の円安は日銀とFRBの将来的な通貨政策の違いに反応している ■
今回の急激な円安の原因は何でしょうか。
FRBはテーパリングを10月には終了し、来年度は利上げにチャレンジします。一方、日銀は消費税10%への引き上げを実現する為に追加緩和で景気を刺激する可能性があります。
このどちらも「予測」にしか過ぎませんが、市場は現実に先駆けて変動するので、基調として円安-ドル高のバイアスが掛かります。
「ゆうちょ」や「かんぽ」が米国債残高を増やしている事から、日本の半公的資金も円売りドル買的な取引を拡大しています。これは兆円単位の取引ですが、分散されているので、相場を一気に変動させるものではありませんが、バイアスとしての円安を演出している節があります。
日銀の黒田総裁の円安容認発言も市場は重視しているはずです。日銀が介入しないのであれば安心して円安に賭けられます。
そういった「円安のバイアス」が強まっている所に、スコットランドの独立選挙が絡んで来ました。スコットランドの独立が直接日本経済や円に影響を与える訳ではありませんが、ポンドが下落してドルが値上がりした事で、ドル高の影響がドル円相場にも相対的に表れたと考える事が出来ます。
要は、今回の円安-ドル高は、「将来予測」で「円安のバイアス」が掛かっている所に、スコットランドの独立問題という「イベント」が絡んで発生したものでは無いでしょうか。
短期的には相場は逆に振れますが、「円安-ドル高」というトレンドはしばらく続きそうです。今後、消費税10%の議論が高まる程、日銀の追加緩和期待で市場は円安方向に動き易くなります。
■ 非常に不健全な日本の株高 ■
日経平均がアベノミクス以来の最高値を更新しましたが、円安を反映した値動きです。アベノミクスが始まった昨年と非常に似た市場の状況が発生しています。
1) 円安のバイアスが高まっている
2) 日銀の追加緩和への期待が高まっている
ヘッジファンドなどは、昨年も日銀の異次元緩和前に円売り、日本株買いを仕掛けています。
ただ、前回はアベノミクスによる景気回復という「健全な期待」が存在しましたが、今回は単純に市場の思惑で相場が変動している事には注意が必要です。非常に不健全な相場の上昇です。
■ 日本の景気の長期低迷を予測した円安バイアス ■
円安はどの程度まで進行するのか、プロの方も色々と予測をしています。110円を基準にした相場に移るのではないかというのが大方の予測でしょう。
アメリカが利上げに踏み切れば円キャリートレードの歯車が回り出しますので、将来的には120円というリーマンショック前の相場が復活するかも知れません。
■ 悪い円安 ■
一方、日本の経済力は確実に低下しています。貿易赤字が常態化し、経常赤字も予測される中で、円は長期的には弱くなります。この影響が強く出るのは、アメリカの利上げ以降だと思われますが、アメリカ経済でアクシデントが起こらない限り、120円を超えて円安が進行する可能性は高いのでは無いでしょうか。
こうなると、輸出企業の業績回復よりも、輸入物価の上昇が日本の経済を締め付け始めます。既に、消費税増税の便乗値上げで実質所得が低下し始めた日本の庶民にとって、さらなる値上げは消費を確実に減衰させます。
■ アメリカの思い通りに行くのだろうか? ■
アメリカが利上げに成功し、一方日本が消費税10%を強行した場合、日本からアメリカに資金が流出するので、日本経済は日銀の量的緩和にも関わらず低迷する可能性が高くなります。それが金利差を拡大して、一層、日本からアメリカへの資金流出を加速させます。
この様な状況で日経平均が現在の水準を保つもと思えませんので、どこかで一度、大きく値崩れすると私は妄想しています。日経平均が暴落して8000円を割った所で、外資が思い切り日本株を買い漁るのではないでしょうか・・・。
アベノミクスの筋書きを書いているのは金融資本家達ですが、はたして彼らの思惑通りに事が運ぶのか・・・。
アメリカの利上げがスムーズに達成できるかどうかが最大の関門です。低金利の資金供給の減少は間違いなく市場に影響を与えます。そして、一番弱い所から影響が出てきます。米国内ではサブプライム層の自動車ローンと、ジャンク債市場が注目されます。
ただ、バーナンキショックの時も真先に影響が出たのは新興国市場でした。中国の不動産市場は相当ヤバイ状況ですが、中国市場から外資が一斉に引き上げる状況になれば、世界経済にも大きなストレスが掛かります。
・・・陰謀論的には、世界経済の歪が解消するとは思えないので、アメリカの利上げが切っ掛けになって、中国のバブル崩壊。そして東アジアの緊張の高まりから、尖閣紛争・・・。
そんなこんなで、世界経済も一気に崩壊モードに突入して、親の総取りで、現在の金融相場が終焉を迎えるのではないかと妄想しています。
まあ、当たらない事で有名な人力予測なので・・・・投資をされる方はご注意を。