初演はウイング・フィールドで見た。劇場に当てて書いた芝居なのだが、公演を行う劇場に合わせて芝居自体までが変化していく。今回もアトリエS-paceという新しい劇場空間の構造を自在に使った作品になっている。
かといって、作品自体が大幅に変わることはない。劇中劇になる2つの芝居はほとんど書き換えていないらしい。だけれども、ものの見事にこの劇中劇の内容を忘れていた。なんとなくこんな話だったなぁ、とい . . . 本文を読む
昨年のゴールデン・ウィークに上演され好評を博したテラヤマ博の第二弾が今年もスタートした。初日である2月23日。まず、2本を見る。佐藤香聲 による『レミング』と、大塚雅史さんによる『星の王子さま』だ。
2本ともとても刺激的な作品だった。今回も3グループに別れて、全く別々のアプローチでテラヤマ戯曲に取り組んでいる。劇作家としての寺山修司が忘れら去られていきつつある中で、もう一度彼にスポットをあて . . . 本文を読む
2本立一挙上演というスタイルを取る場合は、普通、完全入替制にして、もう少し時間の間隔をとる。あるいは、1本1本が短い作品を、ほぼ連続上演に近い形でするものだ。なのに、今回の清流劇場は、30分の休憩を挟んで、一挙上演である。しかも、それぞれ完全に独立した作品である。2本の間に関連性はない。どちらも上演時間が長い。
船戸香里さんによる実験的な1人芝居と、田中孝弥さんがドイツ留学中、見た芝居の中 . . . 本文を読む
山崎ナオコーラのすっとぼけた魅力の『カツラ美容室別室』以降の小説について、少しメモしておく。
ずいぶん久しぶりで谷村志穂を読んだ。最新刊『雪になる』は6つの雪を巡る愛の物語。あまりに痛々し過ぎて、ちょっとまいった。続いて同じように北海道出身の新人、桜井紫乃による『氷平線』。これも痛ましい話ばかりで、辛い。6つの短編がそれぞれどうしようもない哀しみを潜ませている。
さらに楊逸の『ワンち . . . 本文を読む
この語呂合わせのタイトルが、示すのは主人公であるアスペルガーの女性(池脇千鶴)のとてもシンプルな内面世界。昆布茶漬けが大好きで、音符の形をした街灯の写真を集めている。この2つに象徴されるものが今の彼女のすべてだ。
映画はそんな彼女が母を失いひとりぼっちになり、今まで会った事のない腹違いの妹(市川由衣)のもとを訪れることから始まる。
父と2人で平和に暮らしていた。父が旅行に行き、これ幸いと . . . 本文を読む
日本アカデミー賞を軒並み掻っ攫った『東京タワー、オカンとボクと、時々オトン』の松岡錠司監督の新作。アカデミー賞で(もちろん日本の、だけど)助演男優賞を取った小林薫主演。(それにしても、あの賞でなぜ、オダギリ・ジョーだけが選ばれなかったのだろう?わざと外したとしか思えない。ただの嫌がらせか?オダギリの見事さ、は誰の目でも明らかなのに、なぜ吉岡秀隆?あれをTVで見ながら、ありえない!と日本中の人たち . . . 本文を読む