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映画・演劇のレビュー

『歓喜の歌』

2008-02-24 08:59:42 | 映画
 日本アカデミー賞を軒並み掻っ攫った『東京タワー、オカンとボクと、時々オトン』の松岡錠司監督の新作。アカデミー賞で(もちろん日本の、だけど)助演男優賞を取った小林薫主演。(それにしても、あの賞でなぜ、オダギリ・ジョーだけが選ばれなかったのだろう?わざと外したとしか思えない。ただの嫌がらせか?オダギリの見事さ、は誰の目でも明らかなのに、なぜ吉岡秀隆?あれをTVで見ながら、ありえない!と日本中の人たちが思ったことだろう。ほんとに日本アカデミー賞はいつも笑わせてくれる。)

 さて、本題である。この新作を見ながら、なんだかやりきれなくなった。初めて松岡錠司を見て、腰が引けた。今回はシチュエーション・コメディー仕様のほのぼのした作品なのだが。

 大晦日の日にダブル・ブッキングしてしまった2つのコーラス・グループ。それぞれこの日に向けて一生懸命練習してきた。なのに、市民会館の館長(小林薫)が、いいかげんな受付をしてしまい、あげくは、各団体から連絡を貰い直前になって自体に気付く。そこで、なんとか上手く丸め込もうとして右往左往するのだが、当然上手くは行かない。

 こういうお話をドタバタで笑わせて見せようと言うのではない。きちんと人間ドラマとして描こうとするのは、松岡監督としては当然のアプローチであろう。でも、設定が設定だけに、取敢えずは喜劇になっていく。それも狙い通り。軽めの映画で、適度に笑わせながら、気持ちよく終わらせる。そうなったなら、よかった。しかし、現実派そんなふうに上手く行かない。

 なんだか、乱暴な映画に見えるのだ。市長お気に入りの金魚を投げ捨てて殺したり、たった一夜のイベントのために勝手に会館の改築工事までしてしまうなんて、大丈夫なのか、と思う。一職員の判断でこんなことをしていいのか?しかも、この工事のためにハワイ旅行に行こうとしていた工務店の人たちを、足止めしてしまうのだ。当日キャンセルなら、旅費は返ってこないはずだ。「映画の中の話だからいいじゃん」なんて言うのなら、そんな映画、ボクは信じない。

 たくさんの人にこれだけの迷惑をかけて、合同コンサートは成功してよかったなんて。それをノーテンキには喜べないだろう。だいたい、ラストの筒井道隆とのやりとりなんか、全くリアルではない。着物の仕立て直しを小林薫がやるなんて、そんなバカなストーリーで笑わせるつもりなのか。バカバカしくてやりきれない。しかも、妻の浅田美代子がやって来て代わりにする、なんて。その後2人は市民会館の行き、小林のためのアンコールを聴きにいく、このラスト無理有り過ぎ。時間的に不可能だ。舞台上でコーラスの人たちは待ってるのか。それって、あまりに間延びしすぎだろう。だいたい仕立て屋のおかみさんが、さっつさと仕立て直ししてから、コンサートに戻っても間に合ったのではないか。

 安田成美と小林薫が市長室の金魚を盗み出すシーンも、あんないいかげんなシチュエーションってない。あれで笑えるなんて、おかしい。喜劇だからこの程度の作り方でOKだと思ったわけではないだろうが、なんだか、あまりの安っぽさについていけない。

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