まるで大竹野が帰ってきて、ここで新作を作り上げたような。作、演出、大竹野正典、というこのクレジットに偽りはない。大竹野がもう一度『サラサーテの盤』を再演したなら、きっとこうなる。そんな芝居になった。まさに入魂の一作である。今回、この公演にあたって、敢えて別の演出家を立てず、大竹野本人に演出をまかせたのは正しい判断だった。
実際は、小寿枝さんが大竹野になりかわってこの芝居の演出を担当し、本人以 . . . 本文を読む
前作『ワタシ末試験《追試》』に続いて、さらにあのやり方をエスカレートさせた最新作である。どこまでが本当で、どこからが嘘なのかもわからない。嘘とか実とかとかいう境界線を軽々越えてしまって、ひとりの少女の内面の旅が描かれていく。見た目のカラフルさにだまされてはならない。
これはとても痛ましい話だ。つまらない男に貢いですべてを失ってしまう女の孤独が、これでもか、これでもか、と描かれる。あんな詰まら . . . 本文を読む
あのカバー写真の風景にたどりつくまでに、なんと710頁も読まなければならないなんて、ちょっと酷すぎる。あのカバーに心惹かれてこの小説を手に取ったのだが、それがこんなにも困難を伴うものになるなんて、思いもしなかった。この遠く果てしのないドラマは、4つのエピソードからなる連作というスタイルにもなってはいるが、実際は4章仕立ての大長編である。
最初は心霊写真の謎を解明する素人探偵の話、のように見せ . . . 本文を読む
とても丁寧に作ってあり共感できる映画になっていた。土井裕泰監督は、これまでも、ありきたりな話(『涙そうそう』)であろうと、荒唐無稽(『「いま、会いにゆきます』)であろうと、丹念な日常描写の積み重ねから、説得力のあるドラマを紡ぎ上げることに成功してきた。だから、今回のような単純な「恋愛もの」でも、きっと大丈夫だろうと思ったのだが、それにしてもよく健闘していて感心した。
ここまで通俗的な話で、今 . . . 本文を読む