これはたった33分の短編映画なのだが、この豊饒さ。とうとう横田さんはこういう境地に達したのだ。そう思うと、なんだか嬉しくなる。ここにはほとんどお話らしいお話はない。それは尺が短いから描けなかったということではなく、この映画は、最初からそういうものを棄てているからだ。欲しかったのは物語ではなく、主人公の寂寥だ。
妻を失った老人が、たったひとりになって、過ごす時間である。それを極端な長回しも含め . . . 本文を読む
ついに『光圀伝』を読み終えた。750ページの大作だが、なかなか先に進まない難物だった。読むのに結構てこずった。それが沖方丁の仕掛けた罠だ。最後の最期まで先が読めない小説である。まさか大願とは大政奉還だったなんて、夢にも思わなかった。しかもそれを光圀が望んだのではなく、彼に私淑した紋太夫だ。彼が義のためそんな狂気に至る。光圀のずっと先を行く。だが、時代はまだそこまで追いつかない。歴史を知る僕たちは . . . 本文を読む