ヴィム・ヴェンダース監督が日本映画に挑んだ作品だ。昔撮った『東京画』はドキュメンタリーだったから劇映画としては初めてだろう。とってもいい映画だと思う。ヴェンダースは初期の『都会のアリス』の頃に戻ったように瑞々しい。スタンダードサイズの端正なスクリーンの中でドキュメンタリーのようにひとりの男の日常が綴られていく。主人公の平山(役所広司)はほとんど無口なまま。必要な部分ですら喋らない。もどかしいくらい . . . 本文を読む
冒頭の『虚無への供物』を知らない司書の青年が『去年の九月』と聞き間違えたというエピソードには笑ってしまった。楽しい。それくらいにいろんなものが過去になる。
さらに次のエッセイ『短歌から川柳へ』の冒頭で寺山修司が引用され、なんとそこで「マッチ擦るつかのま海に霧ふかし見捨つるほどの祖国はありや」と書かれているのを見た瞬間、凍りついてしまった。『見捨つる』って。本気か! 『身捨つる』ではな . . . 本文を読む
一度は引退したはずのカウリスマキが6年振りに新作を引っ提げてカムバックしてきた。とてもうれしい。まだまだ若いんだから彼には映画を撮ってもらいたい。僕は初めて彼の映画を見たときの驚きを忘れない。『真夜中の虹』である。今は亡き(無き、ですが)ミニシアター国名小劇だ。あの小さな映画館も忘れられない。たった75分のあっけない映画に震撼させられた。あの後、続々と過去作も含めて公開されることになった。もちろん . . . 本文を読む