『超高速！ 参勤交代』

「このミッション、インポッシブルなんです」だなんていう時代劇にあるまじきコピーが宣伝に使われていた。どんだけアホか、と嘲笑う。こういう安っぽい映画は一瞬で消えてしまうに違いない、と思った僕の予想を覆して、なんと大ヒットを記録した。

　公開からもう既に1カ月が過ぎたが、まだちゃんと上映されている。安いコピーをものともせず快進撃を繰り広げた映画をようやく見たのは、つい先日だ。ごめんなさい。予想に反して実に面白い。こんな映画だとは夢にも思わなかった。佐々木蔵之介主演映画だなんて地味すぎる、と思ったが、そんなことも問題なく、（というか、佐々木蔵之介がとてもいい！）映画は大ヒットだ。アイデア優先の映画で、底が浅いのでは、という杞憂も全く受け付けない。というか、僕が知らなかっただけで、これは城戸賞（映画界の芥川賞ね）を受賞した時代劇で、実によく出来た台本なのだ。

　このばかばかしい内容の映画が、実はとても面白くて、気がつけば映画の王道を行くようなストーリー展開を見せてくれる。見ていて楽しいし、なんだか幸せな気分にさせられる。そんなバカな、という展開なのに、そういうことがあればいいなぁ、なんて思わせる。監督は本木克英。彼の代表作となる一作になった。

呑気そうに見えて、実はとても強い剣の達人でもあるお殿様と、気が強くて目茶苦茶な女郎に身を落とした貧しい女が、なんと恋に落ちる話なのだ。しかもまさかのハッピーエンド。悪代官然とした（老中だ！）陣内孝則の陰謀によって、帰ったところなのに、再び参勤交代を命じられた殿さまが、しかもたった５日間で江戸まで行く。その間さまざまな妨害にも合う。主人公は佐々木蔵之介。彼が出会う女が深田恭子。ラブストーリーという味付けが実に効果的で、スケールの大きな映画ではないのに、だからこそ、実にピリッとした小品として、ほんとうによく出来た佳作なのだ。思いがけないシンデレラ・ストーリーというのが、隠し味。うまい！