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映画・演劇のレビュー

『マックイーン モードの反逆児』

2019-04-18 20:15:53 | 映画

ずっとインタビューのみで111分。当時の記録や生前の発言も挟まれるけど、基本は彼の周囲にいた人たちによる証言。こんなにもそっけない映画なのにそれがここまで心に響く。作り手の作為は一切感じられない。マックイーンという男の生きざまを受け止めるだけ。

40歳で死んだカリスマ・ファッションデザイナーのドキュメンタリー。彼のクレイジーな生きざまに圧倒される。僕は無知なのでこんな人がいたことすら知らなかった。そのむちゃくちゃな生き方に見ていて引き込まれる。

ファッションのことなんて全くわからないけど、むちゃくちゃだよ、ということはわかる。こんなことをしてもファッションデザイナーとして受け入れられるのか。時代が彼を拒絶しなかったのか。それとも彼が時代を作ったのか。自分を曲げずに自分を貫いたなら時代も彼に味方して、周囲を巻き込んでいく。とんでもないムーブメントが巻き起こる。

残されていたテープにある本人のことば。彼を見ていた人たち、支えたスタッフ。いくつもの証言は彼をほめたたえるのではない。あの時代、彼の存在がなんだったのかの検証だ。時代を追ってマックイーンという男の生きた時間をドキュメントしていく。

作り手の意見とか、感想とかはない。ナレーションも一切入れない。これは確かに映画なのに、彼らの声を聞いている(ひたすら字幕を読んでいる)だけ。ずっと声は途切れることなく。マイケル・ナイマンによる音楽はあるけど、気にならない。なのにこれは面白い。何でもないひとりの若者が自分を信じて生きていく。自分のしたいことをして、破滅しても構わないから走り抜ける。それだけ。

 


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