これはある種の寓話なのだろう、と思って見ていた。こんなバカな、と思いつつも、だけど、このお話にはとても説得力がある。虐げられていた女性が男たちに反旗を翻す、なんていう話なのだが、お話に基本が女たちのディスカッション。延々とそれが続く。確かのこれは架空の村の話だが、原作はボリビアで実際に起きた事件を基にしているミリアム・トウズの小説の映画化、だと後で知り驚く。古臭い衣装や村の風景から18世紀とかそんな感じだとなんとなく思っていた。21世紀のほぼ現代。ありえない。2010年、自給自足で生活するキリスト教一派のとある村が舞台となる。平気で暴力を奮いレイプも日常という世界が、牧歌的な風景の中で描かれる。怖い。
ここで描かれることは基本『バービー』と同じなのだが、その切実さは違うから、2本を並べてみるのは無謀かもしれない。ただ女性はこんなにも虐げられてきたし、今もまた虐げられている。その現実が描かれる。この2本がいずれも女性監督の作品であるということも忘れてはならない。なんとこの映画をあのブラッド・ピットが製作を担当、フランシス・マクドーマンドがプロデュースしている。脚本、監督はサラ・ポーリーだ。
前半は小屋の中での女たちによる話し合いがずっと続き、見ていてだんだん少しだけど退屈する。ここに残るか、戦うか、出ていくかの選択から、まず最初にここに残るが除外される。当然だろう。そこであとのふたつのどちらを取るのかが議論の焦点となる。それなりには緊張感があるけど、あまりに単調で、このままずっと続いたら寝てしまいそうだった。ただ女たちの置かれた現状がだんだん明らかになっていく過程は面白いし、ドキドキする。さらにはさりげなく2010年という時代背景が明らかになるところでは衝撃を受けた。まさか、そんな時代だとは思いもしなかったからだ。男尊女卑世界。女性は読み書きすら出来ない。虐げられてきた女たちが、ここから出て行くまでの物語。この静かなドラマが、心にしみる。旅立ちのシーンも胸に痛い。子供たちの処遇をどうするか。男の子はどこまでを連れていくのか、議論は紛糾する。
今回取り上げた写真は深刻な顔をして話し合う姿ではなく、自分は女に生まれたけど女ではなく男だと思い、男として生きようとする彼女(彼)が、子供たちと過ごすワンシーン。息苦しい映画でこういう戸外のシーンが時折挿入されるのが息抜きになる。彼女の、この世界であえて男の性を選ぼうとする苦悩は敢えて描かれないけど、その存在はこの映画に深みを与える。
基本、男たちが一切出てこないのがいい。(記録係としてひとりだけ男性が出てくるが、彼は女たちの支援をする子供たちに優しい教師だ)描かないことでその悲惨さが伝わる。