父親の転勤でオーストラリアに家族とともに移住した12歳の真人を主人公にしたシリーズの第3作。『Masato』『Matt』に続く3部作の最終章だ。
大学生になった彼は進路を演劇の道ではなく、就職に変更する。そんな時たまたま人形劇に誘われた。そして人形劇に心惹かれることになる。そこで大学のデザイン科でマリオネットを制作しているアビーと出会う。アルメニア人の彼女と日本人出ある真人。ふたりはこのオーストラリアという国で自らの出自に苦しめられてきた。
最終的にはお話は真人とアビーのラブストーリーになるのだが、なかなかそこに(安易に)至らないのがいい。ふたりのためらい、反目、共感がゆっくりじっくり描かれる。異郷で生きる困難。自分とは何なんだという想いがお互いに相手と向き合って見えてくる過程が丁寧に描かれていくのがいい。