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映画・演劇のレビュー

神原組プロデュース『わらわら草子』

2016-11-26 22:52:35 | 演劇
今年の神原組はなんと4話からなるオムニバス。神原組は神原さんのワンマン集団のはずなのに、どういう風の吹き回しなのか。4本とも神原さんが演出するのではなく、彼女は1本だけ。



それにしても、毎年3回。3月には浮狼舎として若手育成。夏にはハレンチキャラメルとして島上さんを座長にしてのエンタメ芝居。そして11月にはこの神原組としての自分本位の芝居を、毎年同じようにマイペースで公演していくそのバイタリティには頭が下がる。もちろん、それだけじゃないわよ、と彼女は言うはず。福井での芝居や、僕なんかが知らないところでも、精力的に公演をこなしているはず。でも、この3本柱は揺るがない。自分の中で、最低限の責務としている(ようだ)。エネルギッシュで、どんな過酷な状況にもめげない。



今回の4本の白眉は最初の1本だろう。南陽子の台本を島上亨演出で見せる『ラストダンス』。神原さんと島上さんによる二人芝居だ。今夜限りで引退するストリッパーと彼女のファン。公演が終わった後、公園のベンチで(今回の4本の芝居は、この「ベンチ」だけを使い芝居を作るというのが条件らしい)交わすふたりのやり取りを描く。ほぼリアルタイムだろう短い時間を通して、今までまともに話をしたこともないふたりの秘密が明かされていく。切ない大人のラブストーリーである。もう少し稽古期間があれば、もっとよくなったはずで、そこは惜しいけど、気持ちのいい作品だった。



これを皮切りにして、続く3本は、いずれもテンポのいい作品でバラエティに富んでいる。『楼上の老嬢』(ピーター・ヴォドキン作、押鐘絹一郎、演出)は軽くて楽しいし、そのあとの神原くみ子、作、演出の『おらおら草紙』も彼女らしい短編。最後に敢えて務川智正、作、演出作品『らくごもの』を持ってくる構成も悪くない。ふつうならこういうめちゃくちゃな作品(貶しているのではない!)は最後に出さないのがパターンなのに、作品全体をそういうパターンには納めない、というのが神原さんの心意気だろう。
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