劇場公開最終日、ようやく見た。梅田では、たった1回しか上映はない。しかも、夜の10時からのみ。まだ、公開から1カ月も経っていないのに、である。日本での興行は惨敗だったようだ。
僕はとても、期待していた。だってあの『クロニクル』のジョシュ・トランク監督作品なのだ。あの小さな映画を作った彼があの1本で認められて、この大作の監督に大抜擢されたのである。アメリカンドリームを実現した彼がどんな挑戦を見せてくれるのか、興味津々、心配半分、というところか。躍進続くマーベルコミックの映画化ラッシュの延長線上にあるこの作品で、彼は自分の持ち味を発揮できたか。
答えは、前半は、なんとか。でも、後半はもうどうしようもない、というところか。舵取りを任されたとはいえ、全権委任ではない。そんなことは最初からわかりきった話だ。妥協は仕方ない。でも、どこまで譲って、どこからは守るか。そのバランスだろう。若い彼には荷は重かったか。
子ども時代から話を立ち上げたのは正解だ。少年時代のエピソードがとてもいい。やがて、高校生になり、周囲から浮きまくり、違和感を感じながらも、孤高の道を行く、というよくある展開も、お約束ながら、いい。しかも、親友だけは助けてくれる。やがて、彼を認める大人が現れる。そして、夢の実現に向けて前進する。彼らが自分たちをパイロットにして物質転送装置を起動させるところまで、順調な滑り出しだ。
しかし、そこから先は残念ながら、ただのパターンに終息してしまう。ヒーロー誕生秘話でしかない。100分という上映時間も、これがお話としては中途半端なものにしか、ならないことの証明でしかない。ただ、彼は『クロニクル』をなんと84分で成功させた実績がある。彼にもっと自由を与えたなら、もしかしたら、これはすごいことになったのかもしれない。明らかに後半人間ドラマから、あるいは青春映画から、シフトダウンしている。ただのヒーローもの。しかも、しょぼい。作り手の熱意がそこには感じられないのだ。敵役の扱いもまるで意味を感じさえない。異次元空間に残された彼の孤独がどういう歪みを見せたか。そこを彼ら4人がどう感じたのか。もともと、5人のチームだったのだ。それが敵味方に分かれて戦うことになる、というワンパターンは構わない。でも、そこに納得のいくドラマが欲しい。
前回の映画化作品のような中途半端な映画にはしたくない、という意気込みがあったはずなのに、それは許されなかったようだ。残念。