WOWOWによるTVシリーズを、TBS地上波で引き継ぎ、さらには今回の映画化に繋ぐ。こんなのは今までなかったパターンではないか。TVサイズのスケールではない作品を作るという試みがそういう過程を踏ませたか。それだけに「最後は劇場で、」という今までのワンパターンとは一線を画する作品をここに期待した。そこ試みは部分的には成功したが、大部分では、失敗している。
大長編であることのメリットが感じられない。本編のスペシャルではないけど、完結編としては、詰めが甘い。「日本犯罪史の闇『ダルマ』、ついに登場」という謳い文句を納得させるようなドラマがここにはない。娘の死、という個人的な問題が日本国を揺るがす闇の暴露に繋がるはずなのに、そうはならない。ビートたけし演じるダルマが圧倒的な存在感を見せない。いくら、たけしが頑張っても台本がそこを描いてない以上、空回りするしかない。あんな簡単に死んでしまうのなら、そこまでのすべてが無意味になるのではないか。
ミステリー仕立てのアクション映画というスタイルは悪くない。マニラロケの不穏な空気感が最高で、ドキドキさせてくれる。それだけにダルマとの戦いは明らかに模範にした『地獄の黙示録』のような緊張が必要だったはずなのだ。そこを、どれだけ丁寧に描くかが成否の分かれ目になる。あきらか、失敗だ。これなら、同じパターンを踏んだ『屍者の帝国』のほうが上手い。
西島秀俊演じる男が超人で、彼だけではなく、クレージな化け物たちが跋扈するのも、悪くない。みんなマンガのような超人を嬉々として演じている。特に、長谷川博己の狂い方は衝撃的。前半からお話をリードする松坂桃李も凄い。残酷なシーンも満載して破壊と殺戮をスケールの大きい描写で綴るのもいい。映像としての力は十分に感じさせられる。それだけに、それを裏付ける緻密な脚本が欲しいのだ。演出がどれだけ頑張っても、こんな杜撰な台本では緊張感を持続できない。