この3月、旗揚げ公演をなんとHEPホールで行い、700名以上の動員を記録したという新鋭劇団。早くも第2作の登場である。若い集団で元気のある人たちが、自分たちを信じて「好き勝手する」って、いいなぁ、と思う。若いから何でも許されるわけでもないし、若いということは未熟で、お金もない(はずなのに、HEP)し、傲慢(かも)。でも、何をも怖れることなく攻撃的なその姿勢が羨ましいほどだ。ただ、今回のテーマはなんだぁ、と思う。いきなり懐古的なお話かぁ、と。
劇団解散を巡るお話である。1年前、主演男優の失踪で解散した劇団をもう一度復活させたいと思う若手が、かってのメンバーを集めて、再結成を促す、なんていうお話にはのけ反る。「それはないやろ、」と思う。自分たちの青春を懐古するのはあまりに早すぎる。だいたい1年前に解散したけど、1年で何が変わるのか。みんなちゃんと就職したり家族を持ったり、落ちぶれたり、それってせめて10年後くらいにして欲しい設定だ。1年前を懐かしむ、はずもない。(もしかしたら、僕は間違えてるか? たしか1年後、と言っていたような気がするけど、これは10年後なのか?)
でも、たった1年を懐古する、というバカバカしい設定は別の意味で凄いし、そのへんを狙ったのか。
死んだ男がみんなを集めるという発想はまぁ、わからないでもないけど、彼の失踪の原因が失恋とは、あんまりだし、7回踏切を無茶な横断して、7回目で電車に轢かれたとか、ないわぁ、と思う。そうなんです。失踪した看板役者は死んでいたのだ。
こんなそんなの、あれもこれもが、実は確信犯行為で、これは究極のバカバカしさを狙った作品なのだと、言われたら、結構納得するのだけど、それにしては、お話の展開があまりにシリアスで、ふざけていないのは、なぜ? 突っ込みどころは満載でどこをどう言えばいいのか、と悩むくらいだ。
このお話自体も凄いけど、後半の怒濤の説明大会にも驚く。過剰な説明は不要なのだが、ちゃんとすべてを説明しないではいられないようだ。だいたい基本設定自体がありえないし。終電の車内でいつも芝居の稽古をしていた劇団って、そんなのありえない。いろんな意味で驚きの連続だったのだが、これは何なのだろうか。
さらには、あの舞台美術。ありえないほど、凄い。コの字型に客席を作るのだが、舞台が電車の車両の中になっていて、それを横位置で作るのではなく、縦位置。両サイドに電車の客席を作って、そこがなんと2列目から以降は観客席になっているのだ。客席だけど、この部分は完全に電車の客席仕様にした。だから、舞台装置としての最前列の客席と同じ客席を観客用に作った、という手の凝り方。センターの客席はふつうの客席仕様で、ここからなら芝居は見やすい。ということは、両サイドは見辛いのではないか。でも、なんだか、あの両サイドの電車の車内のシート(2列目からは客席だけど)に心魅かれた。(終わってからあそこに座りにいけばよかった)
いろんな意味で冒険をしている。その意図はあまり上手く伝わらないけど。でも、そんなことも若手劇団の魅力か。そんなこんなで、なんだか、それなりに楽しめる。