新人作家のデビュー作。30代後半の決して若くない作家が書いた作品である。よくあるお仕事小説とは一線を画す。家事代行サービスという仕事。一流商社で億という金を動かす仕事をしていた彼女が体を壊して退職して、リハビリを兼ねて軽い気持ちでやり始めた。だが、舐めてかかっていた仕事が、実はかなり大変さを伴うことを知る。
ある家族との関わりを通して見えてきたもの。妻を亡くして残された5人もの子どもたちを抱えてシングルファーザーをする織野家。家事って何なのかを改めて理解する。
津麦は家事代行を通して大切なものを知る。崩壊寸前の家族を救うのではなく、彼らに自分が救われる。中2から2歳児まで。父親はハードな仕事をこなした上で、家事のすべてをする。子どもたちにはさせない。自分がまる抱えして心身ともにボロボロになっている。目の下にはいつもクマを作っている。きっとやがて死ぬ。だけど、彼は死ぬまで諦めない。だけど死んだら子どもたちはどうなる? これはある種の自殺行為だ。無意識のうちの妻の後追いである。
津麦はこの家庭を助ける。結果的に。彼女はこの家に派遣されて何をどうすればいいか、わからない。自信喪失する。だから、しっかり見守ることから始める。会社の相談員である安富さんに助けられる。何が必要なのか、何ができるのかを見極めることからスタートしてゆっくり、しっかり彼らの生活に溶け込んでいく。無理せず、諦めず、粘り強く。
昨日読んでいた『ゴミの王国』と同じように、これもまた、壊れかけていた人たちの再生のドラマだ。自分にできることを考えてする。そんな当たり前がこんなにも新鮮だ。