習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『青燕』

2010-04-27 21:12:56 | 映画
 2005年12月韓国で公開された超大作がようやく日本でもDVDスルーされた。映画としての出来とはまるで関係ない次元でボイコットされ興行的には惨敗したらしい。製作費100億ウォンもの大作なのに、50万人しか動員できなかったらしい。

 もちろん映画自体の出来もよくはない。だが、そんなことより、日本びいきの映画だと誤解されたことが大きかったようだ。映画を見れば必ずしもそういうものではないことは明白なのだが、見てない人にはわからない。まぁ、そんなものだろう。

 韓国人女性初の飛行機乗りとなったヒロインを主人公にした映画である。彼女が空に憧れて、自分の夢を叶えるため日本に渡り、幾多の困難をもろともせずに、夢を実現させていく姿が描かれる。それが感動的に描かれたなら、いいのだが。なんだか甘いし、映画は緩いし、見ていてイライラする。しかも、後半なんだか分からないうちに拷問シーンが続くし。日本に渡った朝鮮人の苦闘の歴史を描く映画、というわけではない。どちらかというと、前半はファンタジー色の濃い映画にしか見えなかったのに、どうしてこういう展開になるのだろうか。リアルを求めたにしてはバランスが悪すぎる。

 ただし空を飛ぶ場面は爽快で、悪くはない。主人公のキョンウォン(チャン・ジニョン)は、天真爛漫で彼女を見ているとなんでも許せそうになる。それだけに、これがたとえ実話をベースにした映画とはいえ、ラストまで能天気なタッチのままで見せてもよかったのではないか。中途半端なリアルさは不要だ。コメディーではないが、マンガのような軽さで、ノーテンキに爽やかに見せる方が、この映画の本来の意図を汲んだものとなるはずだ。

 金子修介あたりが撮ったなら、これはバランス感覚のいい映画に仕上がったのではないか。『プライド』のあのタッチがこの映画には必要なのだ。まぁ、あまり褒めるところのない映画なのだが、日本から参加した仲村トオルは相変わらずいい。

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