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映画・演劇のレビュー

『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』

2021-10-12 15:39:35 | 映画

主人公はひとりの少年。彼とある有名俳優(ジョン・F・ドノヴァンだ)との文通を通して、自分らしく生きることの意味を問いかける。29歳の有名俳優が7歳の少年からのファンレターに返事を書く。彼らの文通はなんと100通に及ぶ。だが、その事実を隠さなくてはならなくなる。美談にしてもいい話なのに、それがゴシップにされてしまう。彼の性癖がその行為を異常な行為に変えてしまうのだ。もちろん彼に不純な想いはない。マスコミはいつでも芸能人をネタにして彼らを食い物にする。面白半分で記事にして犠牲になる。

グサヴィエ・ドランの新作は今までの作品とは違ってスターを起用した商業映画の体をなすが、いつもと変りなく、自分の描きたいことに対して妥協はない。今では大人になった少年による告白というスタイルだが、彼は今、かってのドノヴァンと同じようにスターになっている。ドノヴァンがかなえられなかった夢を叶える。それは同じようなスターになることではなく、自分の性癖を隠すことなく生きることだ。それをさりがなく提示されるラストシーンがいい。それは「おおごと」(大事)ではない。当たり前のことだ。自分が男性を好きであろうと女性が好きであるうとそんなことは自分の生き方や職業と関係はない。興味本位の中傷や偏見はいらない。

ドノヴァンは少年の純粋な想いに応えようとしただけだったのだろう。自分の境遇と重なるものがそこにあり真摯に少年の問いかけに答えただけだ。母親との確執。母のことを大事にしたいから、苦しむ。ふたりの生き方を通してドランはストレートに自分の信条を吐露する。そこからはわかりやすく真摯なメッセージがちゃんと伝わってくる。


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