故郷の母親から届く小包。重いその段ボールにはどうでもいいようなものが山盛り入っている。こんなのは東京で買った方が安いのに、というものも入る。わざわざ買ってそれを送ってくれる。米やら野菜やら畑で作ったものに紛れて。困ったな、と思う。おかん、やめてよ、とも。でもそこに込められた母の想いは確かに伝わる。
これはそんな想いを描く6つの短編連作だ。いろんな事情がそこにはある。ひとりひとりおかれた状況はさまざまだ。
死んだ母親から届くみかん箱一杯の野菜や米、風邪薬まで。最後の一編がいちばん心に痛い。たったひとりの身よりである母親が再婚して、捨てられたような想いに駆られていた。だから、再婚相手の男性を受け入れられなかった。母親よりずっと年上でもう老人としかいいようのない男との再婚なんて体のいい介護目当てではないか、と。だけど、ただ寂しかっただけ。他人に母を取られてしまうと思ったのだ。いい年した大人の自立した女性のはず。だけど、ほんとうはそうではない。心はまだ幼い子供と同じだ。そんな乳離れできてない女性が母の死を受け入れるまでの小さな物語が心に痛い。
母の死から4か月、ようやく落ち着いてきた。でも、なんだか、まだ死んでしまったということが実感できない。実家に行けばそこに彼女はまだいるような気がする。でも、そんな実家も、もうすぐなくなる。誰も住まなくなった家の売却が成立して、取り壊しが決まったからだ。そんな個人的な出来事をこの小説を読みながら重ね合わせていた。とんでもなく困った母親だったけど、もう少し生きていて欲しかった。
軽いタッチで、母親と大人になって実家を出てとりあえずは独立した子供の関係を子供の目線から描く連作を読みながら、改めて母のことを想う。