久々にシーナワールド全開の長編小説だ。いつもながらの廃墟と化した世界、そこをサバイバルする一行の冒険が描かれる。わけのわからない生き物がうようよいる世界。『アドバード』や『水域』『武装島田倉庫』という傑作を連打していた頃のシーナさんに戻って、骨太な世界が描かれる。
ストーリーは取り止めがない。ラストのあっけなさは、お話を期待した読者を裏切ることであろう。だが、椎名さんが描きたかったのは終末の風景の中、生きる人の姿であって、物語の面白さではない。世界観の提示はするが、その先を示すのではない。大きな話を描くのではなく、小さな話を見せるのだ。逃亡したらくだを追って旅する男が遭遇する様々な出来事、そのひとつひとつが見せ場である。ひとつ目女な何者なのかなんてわからないままだが、それでいい。この世界の全体像すら見えないままだが、それがいいのだ。
この小説をつまらないと思う人はもっと別のSFを読めばいい。椎名さんの脳内宇宙が作り上げたおぞましくも魅惑的な世界を堪能したい人にとっては、これはたまらない一篇であろう。
ストーリーは取り止めがない。ラストのあっけなさは、お話を期待した読者を裏切ることであろう。だが、椎名さんが描きたかったのは終末の風景の中、生きる人の姿であって、物語の面白さではない。世界観の提示はするが、その先を示すのではない。大きな話を描くのではなく、小さな話を見せるのだ。逃亡したらくだを追って旅する男が遭遇する様々な出来事、そのひとつひとつが見せ場である。ひとつ目女な何者なのかなんてわからないままだが、それでいい。この世界の全体像すら見えないままだが、それがいいのだ。
この小説をつまらないと思う人はもっと別のSFを読めばいい。椎名さんの脳内宇宙が作り上げたおぞましくも魅惑的な世界を堪能したい人にとっては、これはたまらない一篇であろう。